2022年5月の読書メーター
仕事が忙しくなって、読書量 激減。それでも、樋口一葉作品再読、難波田史男の日記、江戸漢詩、人体実験本、越中文学本と、多様な本は読めたかな。思えば江戸漢詩選に時間を大きく割いていることも、読書量に関係しているか。江戸の世界に遊ぶつもりで楽しみたい。
5月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:4292
ナイス数:6766
ビトナ ソウルの空の下での感想
ル・クレジオによる韓国の首都ソウルを舞台の小説。彼には韓国を舞台の小説は初めてではない。招きもあり、韓国の街を相当に歩き回ったとか。土地勘もあって、ただの旅行者の印象に留まるものではない。むしろ異邦人だからこそ、本国人(の特に若い人)が見失った土俗的で自然に霊を嗅ぎ取る文化、日常の中に輪廻転生を生きる文化を効果的に物語に取り込んでいる。
読了日:05月31日 著者:ル・クレジオ
イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)の感想
読むのがやや苦痛。比べるのも筋違いだろうが、ドストエフスキーの「死の家の記録」とは雲泥の差。こちらは少なくとも4回は読んだが、ソルジェニツィンのは通読も苦しいかも。ノーベル文学賞受賞は政治的な思惑なしとせずと揣摩憶測していて、反発もあって敬遠してきたのだった。偏見かも、という懸念を抱きつつ。あるいは判断に間違いはなかったのか。「収容所群島」を読んでから、最終判断すべきか。
読了日:05月29日 著者:ソルジェニーツィン
ピリカ チカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』の感想
出版社の内容案内によると、「「その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました」。一〇〇年前、一人のアイヌの少女がこの一文から始まる一冊の本を残した。一度は忘れ去られた知里幸恵はなぜ復活し、アイヌの魂の象徴的存在となったのか。『神謡集』ノートや日記など未公開や新資料をもとに、「生の限りを書かねばならぬ」との誓いに殉じたその生涯を描く」というもの。
読了日:05月27日 著者:石村 博子
江戸漢詩選 ((下)) (岩波文庫 黄 285-2)の感想
十日余りを費やして26日読了…。ただの通読かな。白文は読めないし。それでも少しは楽しんだ。本書については随時、メモ書きしてきた。
いきなり下巻からってのも変則的だが、恐らく上巻からでは上下二巻を読破する気力が萎えるからだったろう。 だが、下巻だけでも江戸時代の漢詩の世界の広がりと層の厚さをしることができた。巻末には、編訳の揖斐氏による解説があり、あるいはこちらを読んでから取り組んだほうがよかったか。
読了日:05月26日 編著者:揖斐高
名著12篇に学ぶ中国古典の人間学 (新潮文庫)の感想
ビジネスや政界官界で出世を志す方向けか。出世には無縁というか、考えたことのない我輩にはやや退屈な書。父の蔵書なので読んだ。父は篆刻の勉強のため、中国の古典に関心があったか。
読了日:05月24日 著者:守屋 洋
破蕾の感想
あの「天地明察」の作家。……にしては……。
読了日:05月23日 著者:冲方 丁
現代思想 2016年6月臨時増刊号 総特集◎微生物の世界 -発酵食・エコロジー・腸内細菌・・・- (青土社)の感想
6年ぶりの再読。この間に起きたことと云うと、なんといっても、一昨年からの新型コロナ騒動。こちらはウイルスだが、その前に微生物の世界も未解明の部分があまりに大きい。今般のコロナウイルスは、免疫に絡んで、自己・非自己の識別自体の問い直しをも迫っている。宇宙像の大変貌が劇的な渦中にある中、微細な生物・非生物の世界でも理解の大変貌が劇的に遂げられつつある。
読了日:05月21日 著者:小泉武夫,藤原辰史,藤田紘一郎,内澤旬子,長沼毅,山内一也,渡邉格,渡邉麻里子
にごりえ・たけくらべ (岩波文庫 緑25-1)の感想
読むたび、哀切痛切の念が深まる。結核での24歳での死。「生活に苦しみながら、『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』といった秀作を発表。文壇から絶賛され、わずか1年半でこれらの作品を送り出した後、24歳6ヶ月で肺結核により夭逝した。」
ガロアじゃないが、白鳥の歌にしても凄絶過ぎるな。感想なんて書けそうにない。
読了日:05月19日 著者:樋口一葉
終着駅は宇宙ステーションの感想
古書店で発掘した本。
「1974年、32才の若き画家は、海で逝った― 未公開の日記、スケッチブック等、50冊を超えるノートより、60~70年代を駈け抜け、2000点余の絵を描いて夭逝した芸術家の核心に迫る」というもの。 父は画家の難波田 龍起である。偉大な父を持つ才能ある若者のプレッシャーたるや!
読了日:05月16日 著者:難波田 史男
触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか (河出文庫)の感想
科学界随一のエンターテイナーという謳い文句…実績。確かに面白いが、平明とまでは言えない。あるいは自宅で読んだほうがよかったか。
注釈が詳細極まり、本文もだが、少なくとも邦訳されている注釈は見逃せない。
著者は神経科学者であり脳の研究者で、主に記憶のメカニズムの研究に取り組んでいる。だが、触覚の研究者ではない。一般向けの解説にも力を入れているとか。
読了日:05月15日 著者:デイヴィッド・J. リンデン
お世継ぎのつくりかた―大奥から長屋まで 江戸の性と統治システムの感想
古書店で発掘した本。容易に想像されるように、大奥にビビビと来ての疚しい(?)期待で手にした本。
が、内容は学術的とまでは言えないが、江戸時代の知見たっぷりの、江戸関連の著書を何冊も出されている、都市史研究家ならではの本。「性と子造りから読み解く徳川二百六十五年。多くの子どもを存分に活用した家康。大奥“お世継ぎ戦争”負の遺産。女系相続の「農工商」。お妾という習俗の本質…縁組と後継ぎから迫る江戸の統治システム」がこれでもかと示される。
読了日:05月11日 著者:鈴木 理生
人体実験の哲学――「卑しい体」がつくる医学、技術、権力の歴史の感想
内容は、出版社による、「18世紀から19世紀までのフランスにおける「生きた人体の医学的実験への供与システム」を政治思想史、医学史の両分野から描き出すと同時に、フーコーの時代の記憶を刻みながら、テクノロジーへの関心を通して哲学と医学史の新しい協働の可能性を示す。」に尽きる。
吾輩は書店で本書を見出し、軽率にも、人体実験の哲学の人体実験だけに惹かれて籠に入れた。自分の体で実験する…といった類の本と同列に見做し期待していた。興味本位で読む本ではない。
読了日:05月10日 著者:グレゴワール・シャマユー
田中冬二著作集の感想
「銀行員として働きつつ、郷愁をテーマに多くの詩作を行う。専ら旅を題材とした詩を作り、山国や北国の自然、日常生活を初々しい感覚で表現した叙情詩集「青い夜道」(昭和4年)を発刊。多作ではなくマイナーポエットとも評されるが、一貫して日本の自然や生活に根ざした詩を作り続け、吉行淳之介は象徴的に「青い夜道の詩人」と評している。詩作のほか散文や俳句も手がけている。堀口大學らと交友関係があった。」
読了日:05月06日 著者:田中冬二(黒部市立図書館)
越中文学の情景―富山の近・現代文学作品の感想
仕事の合間に読んでたが、中身の充実ぶりに、昨日から自宅で。日本の文学の深さを富山の文学事情から。惜しむらくは(装丁の質素さは置くとして)索引が、ないこと。内容からして必須(但し、目次が充実してる)。あと、有名無名な作家が多数。それはいいのだが、(我輩の素養のなさはさておいて)未知の作家の名前(漢字表記)が読めない! 一部地名も。
読了日:05月04日 著者:立野 幸雄
パロマー (岩波文庫)の感想
「世界を観察することに徹しようとする彼だが…」彼は観察者に徹することはできない。そもそもなにゆえ観察者たろうとするのか。それは現前するはずの現実世界をありのままに捉えたいという欲求から。これまでの自分は、観る主体と見られる客体とがどこまでも対峙するに留まっていた。対峙するどころか、波動関数の崩壊のように、一旦、客体を捉えたと思った瞬間、それは思いもよらない他人行儀な<実体>となり、ありのままの、そこにあったはずの現実とは懸け離れたものに成り果てる。
読了日:05月03日 著者:カルヴィーノ
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