2022年4月の読書メーター
義江明子の「女帝の古代史」は、古代における皇位継承の「双系」的歴史を学べた。マッカラーズの「心は孤独な狩人」は長く読み継がれるべき素晴らしい小説だった。廣瀬敬「地球の中身」は、冥王星よりも遥かに探査の叶わぬ地球のコアがあらゆる手立てを駆使して探究されていると教えられた。地球は生きた存在。篠田謙一「人類の起源」にて最新のゲノム解析などにより、表題通り人類の起源への展望を学んだ。青柳いづみこの音楽エッセイは、並の文芸評論家が真っ青の読み物だった。
板垣千佳子「ラドゥ・ルプーは語らない」は、ラドゥ・ルプーがいかに名うての演奏家らに畏敬の念で見られていたかを数多くの音楽関係者へのインタビューで。読了間もなくラドゥ・ルプーの訃報を聞くとは! ハスケル「木々は歌う」は、自然界の複雑で創造的なる生命のネットワークを熱くメッセージ。我が家の庭の植物や動物を観る目が変わった?!
他にも、遠藤周作「海と毒薬」など印象的な本があった。ただ、お陰さまで仕事が忙しくなり、思ったほどは読めなくなった。ま、そんな状況を鑑みると、善戦かな。これからドンドン読書量が減っていく?
4月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:4547
ナイス数:8400
女帝の古代王権史 (ちくま新書)の感想
本書の内容は、「卑弥呼、推古、持統…、古代の女性統治者/女帝はどのような存在だったのか。かつては「中つぎ」に過ぎないと考えられていたが、この四半世紀に研究が大きく進み、皇位継承は女系と男系の双方を含む「双系」的にものだったことがわかった。七世紀まで、天皇には女系の要素も組み込まれていたのだ。古代王権史の流れを一望し、日本人の女帝像、ひいては男系の万世一系という天皇像を完全に書き換える、第一人者による決定版」に尽きる。
読了日:04月29日 著者:義江 明子
しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)の感想
最先端の科学の知見を前提の日本版オリジナル短篇集。イーガン作品は、「白熱光」以来の二冊目。この短編集では、量子サッカーに絡む作品がある。
量子コンピュータもだが、テレボーテーションも実現されてしまった。サイエンスはまさに日進月歩。
読了日:04月29日 著者:グレッグ イーガン
心は孤独な狩人の感想
「フィッツジェラルドやサリンジャー(やチャンドラー、カポーティら)と並ぶ愛読書として、村上春樹が翻訳に際しとっておきにしていた古典的名作」だとか。遠い昔、読んだことがあるが、全く印象に残っていない自分が情けない。
今回改めて読んでその素晴らしさに圧倒された。若干23歳の女性が書いたとは思えない筆力表現力洞察力観察力。
読了日:04月25日 著者:カーソン マッカラーズ
都鄙問答 (中公文庫 い 136-1)の感想
内容案内には、「文字がなかった時代にも、天の道理があった。文字を知るのではなく「心」を知れ。商人出身の梅岩は、神道・仏道、孔孟老荘を独自に解釈し、倹約と倫理を重んじる商人道を説いた。その思想は制度や階層を超えて、やがては武士にも「心学」として受け入れられる。本書は問答形式をとっており、生産と流通の社会的役割を評価し、利益追求の正当性を説いた画期的な 思想を読み解くことができる」とある。
読了日:04月25日 著者:石田 梅岩
地球の中身 何があるのか、何が起きているのか (ブルーバックス)の感想
内容案内によると、「物理・化学・生物学を総動員し、地震波観測・理論的考察・高圧高温実験を組み合わせ、地球の中身とその歴史の謎を解く! ターゲットは地表から深さ6400キロの中心部まで、現代から46億年前の地球誕生まで。世界で初めてマントル最下部の主要鉱物(ポストペロフスカイト)を実験室でつくりだした著者が、地球科学の最前線へと誘う」というもの。
読了日:04月22日 著者:廣瀬 敬
女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)の感想
仕事の合間の楽しみに読んできた。もっとさくさく楽しんで読めるはずが、予想外に仕事が忙しくなったこと、合間に青柳いづみこ氏のエッセイを楽しんだこともあって、一週間を費やした。
その前に手にすること自体、躊躇ってきた。題名の「女のいない男たち」に、ギクッ俺のことかと書店で手にできないできた。
読了日:04月21日 著者:村上 春樹
人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」 (中公新書, 2683)の感想
内容案内にある「古人骨に残されたDNAを解読し、ゲノム(遺伝情報)を手がかりに人類の足跡を辿る古代DNA研究。近年、分析技術の向上によって飛躍的に進展を遂げている。30万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスは、どのように全世界に広がったのか。旧人であるネアンデルタール人やデニソワ人との血のつながりはあるのか。アジア集団の遺伝的多様性の理由とは――。」で、本書の性格は分かる。
読了日:04月17日 著者:篠田 謙一
六本指のゴルトベルク (中公文庫)の感想
まずは筆者の履歴が凄い。「青柳/いづみこ ピアニスト・文筆家。安川加壽子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。東京芸術大学大学院博士課程修了。1989年、論文「ドビュッシーと世紀末の美学」により、フランス音楽の分野で初の学術博士号を受ける」…まだまだ続く。音楽は元より文学などへの造詣も、そんじょそこらの書評家など足元にも及ばない。
読了日:04月14日 著者:青柳 いづみこ
Liquid 液体 : この素晴らしく、不思議で、危ないものの感想
書き手のマーク・ミーオドヴニクは、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の「材料と社会」学部教授で、英国王立協会マイケル・ファラデー賞を受賞という人物。専門性はもちろんだが、恐らくは一般向けの語りでも優れていると期待して手にした。
読了日:04月13日 著者:マーク・ミーオドヴニク
ラドゥ・ルプーは語らない。──沈黙のピアニストをたどる20の素描(デッサン)の感想
名うての演奏家や聴き手が、その演奏に接した瞬間、魅せられ忘れられなくなってしまうという至高のピアニスト。「伝説のピアニストとなったルプーの素顔を、彼を敬愛する20人の音楽家、関係者などの寄稿やインタビューで描きだす」というもの。演奏するルプーがそこにいる、音は今そこで鳴っている。が、誰も真似のできない世界が脈動する。
読了日:04月11日 著者:板垣千佳子[編]
新装版 海と毒薬 (講談社文庫)の感想
過日、石井部隊関連の本(青木 冨貴子著『731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』)を読んで、本書のことを知った。知ってはいたが、題名だけ。「九州大学附属病院で実際に起こった米軍舗虜に対する残虐行為」を巡る本とは知らなかった。本書が刊行されたのは、一九五八年。当時は日本人にはあまり知られていなかった陰惨な事件を世に知らしめた小説で、衝撃的だったようだ。
読了日:04月11日 著者:遠藤 周作
アンリ・ルソー 楽園の謎 (平凡社ライブラリー)の感想
本書は、古書店で発掘した。名前を目にした瞬間、手にしていた。画集で、あるいは展覧会で楽しめばいいのだが、どんな人生だったのか、興味が湧いてしまった。
好きな画家は内外を問わず少なからずいる。初めて好きになったのは、ゴッホだったかムンクだったか。やがてエゴン・シーレやルドン、クレー、清宮質文、ヴォルス、松本竣介と加わっていった。そのどれも異彩を放つし個性的だ。
読了日:04月07日 著者:岡谷公二
木々は歌う-植物・微生物・人の関係性で解く森の生態学の感想
本書の紹介文にある「1本の樹から微生物、鳥、ケモノ、森、人の暮らしへ、 歴史・政治・経済・環境・生態学・進化すべてが相互に関連している。失われつつある自然界の複雑で創造的な生命のネットワークを、時空を超えて、緻密で科学的な観察で描き出す」 という説明で尽きている。
読了日:04月06日 著者:D.G.ハスケル
音楽と文学の対位法 (中公文庫)の感想
(前略)「ショパン、シューマンはじめ、六人の大作曲家と同時代の文学との関わりに、モノ書きピアニストの切り口で光を当てた比較芸術論」とか。対位法の意味が文学もだが、音楽の素養も全く欠けている自分にはなんのことやら。「音楽で,独立性の強い複数の旋律を調和させて楽曲を構成する作曲技法」なんて説明を受けてもさっぱり。
読了日:04月04日 著者:青柳 いづみこ
破鞋(はあい)―雪門玄松の生涯の感想
古書店で発掘した本。元は、1986年、岩波書店から刊行され、90年に岩波の同時代ライブラリーとして改めて出されたもの。水上作品は主だったところは読んできた。同氏は、少年時代に禅寺の侍者を体験したこともあり、禅宗には関心が深いことは知られる。
読了日:04月01日 著者:水上 勉
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