2021年6月の読書メーター
六月の後半は、自宅での読書はピンチョンの『重力の虹 Ⅰ』に掛かりっきりになった。そのため、頁数は平凡なものになった。けれど今月半ばまでは続くだろうピンチョン読書は一つの体験と云うべきものになるはず。その他、ドン・キホーテなど、いろいろ楽しめた。読書の中身は濃いわけである。
6月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:4290
ナイス数:6777
おのごろじまの感想
題名の「オノゴロ島とは、日本神話や記紀に登場する島。特にイザナギノミコト・イザナミノミコトによる国生み神話で知られ、神々がつくり出した最初の島となっている」(「Wikipedia」より)という。古事記などの古典を土台にした詩文。森羅万象に命それとも魂か神の宿りを感じる詩人ならではの創作か。何処かへ向かって物語が展開するのではなく、とりとめのない話の連鎖。読了してみて感じたのは、やはり特異な詩人の幻想譚という印象だった。詩の世界に入り込めないと、退屈になるかも。自分が詩人でないことを痛感させられた。
読了日:06月29日 著者:日和 聡子
夫が多すぎて (岩波文庫)の感想
戯曲作品。面白いが、ひねくれた現代からしたら、あるいは単調かもしれない。現代、舞台化するには、役者もだが、演出家の力量が問われるだろう。「人間の絆」の作家、モームの戯曲。モームは小説より戯曲に力を入れていたとか。小説「人間の絆」もストレス解消のために書いたとか。ある意味、2人の夫を振って新しい旦那を持つ妻がしたたかであり主役なのかもしれない。かなり人気の芝居だったらしい。だからか、日本でも、松たか子や大地真央主演で二度、舞台化されたことがある。
読了日:06月26日 著者:モーム
平面論―1880年代西欧 (Image Collection精神史発掘)の感想
窒息による絶命をほんの束の間でも先延ばしするには、どうするか。そう、中には性懲りもなく皮膚の底に潜り込もうとする奴がいる。ドアの向こうに何かが隠れているに違いない。皮膚を引き剥がしたなら、腹を引き裂いたなら、裂いた腹の中に手を突っ込んだなら、腸(はらわた)の捩れた肺腑に塗れたなら、そこに得も言えぬ至悦の園があるかのように、ドアをどこまでも開きつづける。決して終わることのない不毛な営為。
読了日:06月25日 著者:松浦 寿輝
完訳 グリム童話集〈1〉 (岩波文庫)の感想
グリム童話はいろんな形で読んできた。ホントは怖いグリム童話など。この訳は名訳の評があるが、訳者によると子供が読むことを意識しているようで、普通なら漢字表記なのが平仮名表記で、大人には逆にやや読み辛い。常識人が読むと残酷な場面もサラッと描かれ、こっちは置いてけぼりを喰らうことも。それもまた子供にはあるある的な場面なのだろう。なお、童話というと挿画が楽しみな吾輩は、やや淋しかった。早速、第二巻へ。
読了日:06月24日 著者:W. グリム,J. グリム
アメリカ・インディアン:奪われた大地 (「知の再発見」双書 (20))の感想
コロンブスを先兵とする南北アメリカ大陸の悲惨と栄光(?)の歴史関連は我が読書のテーマの一つ。文献を一つ読むたび暗澹たる思いになる。白人の所謂 民主主義が何を実態とするのか。アメリカは先住民を殲滅同然に追い込むことで北米の大半を更地にし連邦国家を作り上げた。同じことをイスラエルの建国で繰り返した。アメリカには気に食わない国の政権を顛覆してきた歴史がある。体質なのだろう。日本は戦後、アメリカに隷属する道を選んだ。政治的に更地にされた。アメリカと中国(などアジア)との戦いが始まっている。この戦いに妥協はない。
読了日:06月23日 著者:フィリップ・ジャカン
プルーストの記憶、セザンヌの眼―脳科学を先取りした芸術家たちの感想
著者は、ノーベル賞を受賞した神経科学者エリック・カンデルの主宰する研究所で実験助手として働いた経験があるサイエンスライター。「脳科学というまったく新しい視点から芸術を読み解き、科学と芸術という二つの文化の橋渡しをする明晰で刺激的な論考」といった本。ある意味、小生の読書の方針とも合致する。吾輩は、可能な限り、理系の本と文系の本は同時並行して読むようにしている。科学の最先端に自分の能力の範囲であろうと、接しようとしている。文学を含む文系の本も古今の書を読みたい。
読了日:06月21日 著者:ジョナ レーラー
夢窓疎石―日本庭園を極めた禅僧 (NHKブックス)の感想
ささやかながらも我が家には庭がある。が、庭作りは学んだことがない。「禅僧にして庭園デザイナーである著者が、禅師との共通体験をもとに、綿密な実地踏査により描き出す日本庭園観照記」という本。やや、レベルが高過ぎた。ま、夢窓疎石の関わった禅宗の境地のある種の極である庭を居ながらにして眺められただけでもよしとしないと。
読了日:06月19日 著者:枡野 俊明
ドン・キホーテ 前篇3 (岩波文庫)
読了日:06月18日 著者:セルバンテス
数学に魅せられて、科学を見失うの感想
フランクフルト高等研究所(FIAS、ドイツ)研究フェローである著者が世界の名立たる理論家らにインタビューしての記事。筆者は女性かな。「研究者たち自身の語りを通じて浮かび上がるのは、究極のフロンティアに進撃を続けるイメージとは異なり、空振り続きの実験結果に戸惑い、理論の足場の不確かさと苦闘する物理学の姿」が浮かび上がる。
読了日:06月13日 著者:ザビーネ・ホッセンフェルダー
ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)の感想
予想外に面白く楽しめている。人間にとっての物語の意味。狂気と正常の境の曖昧さ。その微妙な揺れる境を物語を語る…信じる人間の面白みがある。途中から劇中劇風な物語が織り込まれてあって、工夫が凝らされている。さっそく次の第3へ。それで前編は終わる。早めに後篇を用意しないと。
読了日:06月12日 著者:セルバンテス
図解・感覚器の進化―原始動物からヒトへ水中から陸上へ (ブルーバックス)の感想
個人的な事情もあって感覚(器)への関心は強い。書店で違う本を探してたのに、題名で手にしてしまった。図解だし、分かりやすいが、教科書風な記述。それでよしとするか、物足りないと感じるかは、読み手次第かな。
読了日:06月10日 著者:岩堀 修明
ドン・キホーテ 前篇1 (岩波文庫)の感想
予想外に面白い。訳もいい。騎士物語の読みすぎで吾こそは救世の騎士と思い込んでしまった挙げ句の狂気 という設定。本を読む。物語に没頭する。リアルな日常とは全く位相の違う世界が脳裏に渦巻き展開し、ついには虚構の世界がリアルを圧倒する。仮に狂気に至らなくとも人は(それを思い込み 偏見 色眼鏡……)何らかの思い入れ 思惑なしに生活することはできない。いや、物語を虚構して、いまここに居るのは仮の姿であり、本当は大金持ち 凄いタレントの持ち主 こんなぞんざいな扱いをされる謂れのない 格別な存在なのだ……
読了日:06月07日 著者:セルバンテス
オーランドーの感想
「オーランド―」は、1928年に出版されたヴァージニア・ウルフの小説。当時はどういう時代だったか。物理学では、アインシュタインやハイゼンベルク、ディラックらによる、量子力学の勃興期だった。光の粒子と波との二重性がようやく量子力学で一定の決着を見た時代だったわけだ。
読了日:06月03日 著者:ヴァージニア・ウルフ
禅とオートバイ修理技術〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)の感想
息子のクリスの行く末が気になる(と言いつつ我々は知っているのだが)。パイドロスなる謎の人物の正体は早々に説明されるが、不在の存在者パイドロスの本当の正体は、語り手も分からない。世話(メンテナンスの手間)の焼けるオートバイでの、掻き消された過去を求めての旅は続く。ちなみにオートバイ修理技術も物語を読み解く鍵になっている。
読了日:06月01日 著者:ロバート・M. パーシグ
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