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2021/04/01

2021年3月の読書メーター

Aoki ← 庭先のアオキ? やや地味な小花が咲いている。


 三月は25年来の仕事の勤務体系が大変貌した。伴って生活パターンも変化。体が変化に馴染まず、読書も進んでいるようなそうでないような、もどかしい感が強い。
 この数ヵ月は、古本がメインの読書となっている。読み残した本との遭遇……これも善きかな。読んだ本の著者はというと、マリオ・バルガス=リョサ、フォークナー、ブコウスキー、レイン、シュレーディンガー、ル・クレジオ、中村桂子、ダワーなど。充実してる…。ん? 洋モノが多いかな。先月末には新刊本を物色に大型書店へ。バイクでのミニツーリングを兼ねて。古書店には、さすがに新刊本は見つけ難い。

3月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:5170
ナイス数:6318


闇の博物誌闇の博物誌感想
著者は戦後の混乱期などに貧困に喘ぎ、大人になっても自殺を図ったり、自身ダークな生き方をしてきた。アングラ風な芝居にも関わった。内容案内によると、「一塊の肉と化した屍体の群舞、阿片中毒者の阿鼻叫喚、残虐きわまる拷罰の歴史、(中略)大いなるアンビヴァレンスに魅入られた世界を、アンダーグラウンドの白眉が硬質の水晶体で透徹する、哄笑と哀惜の一大博物誌」といった本。  ダークサイドへ傾きがちな人間の性(さが)だろうか。この手の本への嗜好はいくら下世話で後ろめたかろうが、触手は隠せない。著者の世への忿懣炸裂の書か。
読了日:03月31日 著者:山口 椿


悪い娘の悪戯悪い娘の悪戯

バルガス=リョサは、ファンというわけでもないのだが、『密林の語り部』、『チボの狂宴』、『緑の家』など、何冊も読んできた。が、本書はノーマーク。古書店で偶然遭遇。ノーベル文学賞作家という大御所の作品で、敢えてゆっくりじっくり読んできた。 でも、段々、読む手が止まらなくなる。昨日そして今日で残りの150頁ほどを一気に読んでしまった。実に面白い。愛する女性に散々翻弄されつつ、愛することはやめられない。愛を捧げる性愛の描写も読み手を飽きさせない。上手いものだ。というより、どの場面も読み手を楽しませる技術に秀でている。それは言うまでもないこととして、日本人が日本を至上の文化や伝統、人間味のある世界とするように、ペルー人たる主人公(語り手)は、日本を含め世界を股にかけて活躍する。現地の料理や男女や言語、文化を語り尽くし味わい尽くす。感想は、読みながら随時書いてきた。贅言は避ける。さすがの作品であることは断言していい。
読了日:03月30日 著者:マリオ・バルガス=リョサ

 

植物はそこまで知っている: 感覚に満ちた世界に生きる植物たち (河出文庫)植物はそこまで知っている: 感覚に満ちた世界に生きる植物たち (河出文庫)感想
題名からして擬人化した表現を取っているが、昔年の「植物の神秘生活」風な素人騙しな本ではない。人間など動物の感覚との対比などを通して植物の感覚能力についての最新の成果を(かなり分かりやすく)伝える内容。読みやすく親しみやすい。昔、モーツァルトの曲を聴かせて育てると植物の生育がいいとか、ロックはダメだとか、あれこれ話題になったことがあるが、本書では科学的見地から検討されている。
読了日:03月27日 著者:ダニエル・チャモヴィッツ


精神と物質―意識と科学的世界像をめぐる考察精神と物質―意識と科学的世界像をめぐる考察感想
翻訳された中村量空氏の解説が良かった。同氏はシュレディンガーの伝記をも書いている。シュレーディンガーのウパニシャッド哲学などヴェーダンタ思想への関心は、物理学など専門科学の限界を覚えた碩学の晩年の余儀などではなかったことを教えられた。学生時代、プラトンやデモクリトスなどを読んできた。インド哲学にしても、若い頃に読んだショーペンハウエルの哲学を介して出会って以来の一貫した関心事だった。元々彼の関心は物理学にとどまるものではなく、物質と精神のそれぞれを交錯する、我々の感じ目にする世界全般だった。

読了日:03月25日 著者:エルヴィン シュレーディンガー


レインわが半生―精神医学への道 (岩波現代文庫―学術)レインわが半生―精神医学への道 (岩波現代文庫―学術)感想
学生時代、分裂病の実存研究『ひき裂かれた自己』に圧倒された。まさに自分のことを痛烈に抉っているようで、その精神の奈落から這い上がれないような危機感さえ覚えたものだった。精神医学も科学の一分野のはずである。科学的データと分析と、ロボトミー手術を典型とする外科的手法、そして薬物の投与、拘禁、医者を含めた他者との遮断。が、ことは心の問題のはず。精神の病(統合失調症)は神経など器質的な異常に終始するものなのか。
読了日:03月23日 著者:R.D.レイン


生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)感想
分子生物学は、1953年にワトソンとクリックが遺伝物質DNAの分子構造模型を提出したことが決定的な転機となり生まれた。本書はその十年前に出た。古い。が、それでも読む価値があるのは、あとがきの鎮目 恭夫氏の言葉を借りると、「量子力学の誕生以前に主にアインシュタインとプランクによって明示された自然界の量子的構造にもとづく原子や分子の構造の安定性が、生物の遺伝物質の高度の安定性を可能にしている決定的な要因であることを指摘することによって、本書の十年後に確立された分子遺伝学への基本路線を示した」からである。
読了日:03月22日 著者:シュレーディンガー


春宵十話 (1972年)春宵十話 (1972年)感想
既にいろいろ書いてきた: http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2021/03/post-4228e9.html むしろ、本書については、「947夜『春宵十話』岡潔|松岡正剛の千夜千冊」がとても参考になる: https://1000ya.isis.ne.jp/0947.html 
読了日:03月21日 著者:岡 潔


数学する人生 (新潮文庫)数学する人生 (新潮文庫)感想
「春宵十話」は、高一の中間テスト後の解放感で読んだ。数学に憧れていたピークでもあった。これだけの天才となると、俗っ気が抜けて仙人の域。数学は、理系の極とされる。だが、数学は物理学などと並ぶものだろうか? 物理学者の中には最後まで進路の選択肢に数学があった方も少なからず。岡氏の発想や生き方などを観ると、宗教家とまでは言わないとしても、芸術家じゃないかと思えてしまう。美的センスの極みが数学の世界を切り拓くのだろう。付言すると、「春宵十話」はある意味 我輩に数学することを諦めさせた忘れがたき本なのである。
読了日:03月18日 著者:岡 潔


響きと怒り (講談社文芸文庫)響きと怒り (講談社文芸文庫)感想
感想じゃなく、敗戦の記。手強かった。読み出してすぐ思い出した。昔、読み出したが、訳が分からず数十頁で放棄。そのまま、書庫に収まっていたが、いつしか行方知れずに。先日、古書店で再発見。読めってことだなと、読み出したが、楽しめなかった。迷路に嵌ったような。通常、解説は最後に読むのだが、本書に限っては、訳者でもある高橋正雄氏の解説は読んでおいたほうがいいと後悔した。
読了日:03月17日 著者:ウィリアム・フォークナー


パルプ (ちくま文庫)パルプ (ちくま文庫)感想
本文 読了の際、これは傑作じゃないか! と思わずつぶやいた。ブコウスキー作品についての評としては相応しくないかもしれないが、彼の作品の中では一番纏まってるかも。ネタバレになるので書かないけど、結末がイメージされた瞬間 この作品が一気に成ったかも、などと感じた。探偵ものだが、知る限りこんな下卑て奇妙奇天烈、ハチャメチャな作品はないのではないか。宇宙人まで登場する。だが、小説を少しは読んできた吾輩の読む手を止めさせない。物語作りの秘訣を得ているのだ。訳者は柴田元幸氏。さすがに目がある方だ。
読了日:03月16日 著者:チャールズ ブコウスキー


転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か (NHK出版新書)転換期の日本へ 「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か (NHK出版新書)感想
本書については、読書メーターで何度か呟いてきた。「読めば読むほど改めて暗澹たる気持ちになる。日本国憲法より安保条約が上。沖縄などを米軍駐留地として提供した昭和天皇。アメリカの属国となることで、平和を享受した日本」など。本書で強調されている点は、サンフランシスコ体制の問題。アメリカによるアメリカのための体制。「第二次世界大戦におけるアメリカ合衆国をはじめとする連合国諸国と日本との間の戦争状態を終結させるために締結された平和条約」それが作りだした戦後日本やアジアの体制。
読了日:03月12日 著者:ジョン・W・ダワー,ガバン・マコーマック


ゲノムの見る夢―中村桂子対談集ゲノムの見る夢―中村桂子対談集感想
増補版が出ている。小生が読んだのは、古書店で見出した本で、1996年刊のもの。その違いは、さすがに青土社版は良心的で新版を出すにしても増補となっている。その違いを目次にも見て取ることが出来る。最後の茂木健一郎氏と鷲田清一氏との対談は増補されたもの。清版も読みたいが、当初版でも十分に楽しめた。
読了日:03月09日 著者:中村 桂子


衝突する宇宙 (1951年)衝突する宇宙 (1951年)感想
著者によると、「ひと連なりの宇宙災変が、今から三四世紀と二六世紀以前の歴史時代に、二回も起こって、(中略)平和の代わりに戦いが、太陽系を支配していたことを、示そうと努力した」のである。つまり紀元前1500年前と700年前に、何らかの太陽系レベルの異常が発生し、天変地異が起きた。その記録は世界各地に残っており、旧約聖書の記述もその一つなのだという。「われわれは、惑星が現在の軌道上を動いているのは、たった数千年にしかならない、と主張する」のである。
読了日:03月07日 著者:ヴェリコフスキー


海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語 (集英社文庫)海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語 (集英社文庫)感想
比較的若い時期の短編集。内容案内には、「子どもたちのいる風景をみずみずしい感性で描く素敵な物語」云々と。訳者によると、これ以上ないほど「言語は極めて平明」という。実際、「物質的恍惚」は別格としても、「調書」や「大洪水」のような込み入った表現は見当たらない。それは主人公が子供ということもあろう。子供の誰もが持つだろう好きな自然や社会の居場所は、大人が忘れ捨ててしまった澄明なで、肩書など無縁で意味をなさない世界なのであり、表現もそれに見合うものであるべきだというル・クレジオの主張もあるのか。
読了日:03月06日 著者:ル・クレジオ


小説のように (新潮クレスト・ブックス)小説のように (新潮クレスト・ブックス)感想
人によってはチェーホフの再来という評もあるようだが、ずっと老成した世界があわてず騒がず描かれている。この短編集の特徴の一つに、ロシアの女性数学者ソフィア・コワレフスカヤを扱った「あまりに幸せ」だろう。数学には門外漢ながら、この女性数学者の苦難の人生は関連書で折々目にしてきた。
読了日:03月04日 著者:アリス マンロー

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