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2021/02/02

2021年1月の読書メーター

 コロナ禍ということで読み始めた角川版漱石全集。先月は三冊を読んで、欠巻と別巻を除いて全巻読んだ。まさかコロナ禍がこんなに続くとは想像だにしなかった。そうでもなければ、全巻読破なんて試みなかったろう。その分、読書は充実したが。先月は豪雪で孤軍奮闘の除雪。腰や腕を傷めてしまった。

1月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4782
ナイス数:8799



夏目漱石全集〈13〉 (1974年)夏目漱石全集〈13〉 (1974年)感想
「明暗」を読むのは、三度目か。吾輩は漱石の中で本書が一番好き…だった。最初から魅せられた。が、今回読み返して、若いころの自分が本書を読解できたのか疑問に感じた。が、同時に人間(主に夫婦や親族間)の心理をどんどん抉っていくその鋭さは夫婦の機微など知る由もない若造でも鬼気迫るものを感じたろうとは分からなくもない。重い胃の病に苦しみながら、漱石山房で弟子らと対峙し、書簡で率直極まる書簡を書き送り、講演会の場に立ち…と、その文学活動は目を瞠るものがある。
読了日:01月29日 著者:夏目 漱石


マチネの終わりに(文庫版) (コルク)マチネの終わりに(文庫版) (コルク)感想
質のいい、ハイソな娯楽小説という印象を受けた。少年の頃より天才の呼び名をほしいままにしたギタリストと多国語を操る才能ある美人。世界を股に活躍する二人。庶民には光のほんの一閃を垣間見るだけの世界を覗かせてくれる小説。アメリカ軍によるイラク侵略戦争でフセインが殺され、イラクを始め世界が混沌に陥る。そうした世界でジャーナリストとして活躍するなど、(傍から見ると)輝かしい活躍する女性という設定だが、作家が懸命に心身症風な苦しみを被っているなどと描くのだが、現実感が乏しい。
読了日:01月28日 著者:平野啓一郎


女工哀史 (岩波文庫 青 135-1)女工哀史 (岩波文庫 青 135-1)感想
内容案内によると:「「紡績業は日本の資本主義の発展にあずかった基幹産業の一つである。ヒューマニスト細井は、この産業を底辺で支えた女子労働者たちの苛酷きわまりない生活を自らの体験と調査に基づいて克明に記録した。本書をひもとく者は誰しも、近代資本主義の残した傷痕のいかに深く醜いかを思い知らされずにいない。」解説は、大河内一男
読了日:01月24日 著者:細井 和喜蔵


夏目漱石全集〈12〉 (1974年)夏目漱石全集〈12〉 (1974年)感想
本巻では、「道草」「硝子戸の中」「私の個人主義」などがメイン。いずれも漱石らしく楽しめた。特に「道草」は、漱石の自伝風な作品であり、出生時や幼いころの養子に絡む経緯が時に息苦しいほどに描かれていて、漱石理解には読まないではいられないだろう。さ、次は、第13巻へ。大好きな「明暗」である。
読了日:01月20日 著者:夏目 漱石


コケはなぜに美しい (NHK出版新書)コケはなぜに美しい (NHK出版新書)感想
コケ本は、ロビン・ウォール・キマラー著の『コケの自然誌』以来か。我が家の庭には方々にコケの群が散在していることもあって、コケには無関心でいられない。内容案内によると、「初期の陸上植物の面影を残す植物、コケ。花を咲かせず地味な存在と思われがちだが、その清楚でみずみずしい姿は「わび・さび」に代表される日本の美意識に深く関係し、生き方に目を凝らせば、環境に応じて変幻自在にスタイルを変える知恵が満載」とかある。
読了日:01月20日 著者:大石 善隆


詩人と女たち (河出文庫)詩人と女たち (河出文庫)感想
やんちゃで正直で優しい小父さんブコウスキーと目される人物の語り。あくまで虚構だが、事実の話なんだと思ってしまう。主人公である詩人は中年をも過ぎた、何も知らない人が見たらうらぶれたおっさん。が、知る人は知っている詩人。呼ばれて誌の朗読をやってカネをもらったりする。小説も書く。男性のファンもいるのだろうが、女性のファンが多い。彼なら自分を相手にする、自分を得心させてくれると思う若い女性が引きも切らずやってくる。
読了日:01月18日 著者:チャールズ ブコウスキー


チャーリーとの旅チャーリーとの旅感想
原書は1962年刊の本。スタインベックは1968に死去。58歳になって目的地のない旅を決断。本書を読んで感じるのは、フレンドリーでオープンな性格。旅先のあちこちで見ず知らずの人と出会い、コーヒーで語らい酒を酌み交わす。決して人間嫌いがゆえに当てのない長旅に出たのではない。あくまで天性の放浪癖。本書は、スタインベックファンなら楽しめるだろう。
読了日:01月16日 著者:ジョン スタインベック


人及び動物の表情について (岩波文庫)人及び動物の表情について (岩波文庫)感想
「「種の起原」の生物進化の法則を人間に適用した「人間の由来」に続いて1872年に発表された」。「さまざまな種類の動物や人間の表情について,解剖,宗教,言語,心理学など諸方面からの多数の観察例をもとに動物から人間までを進化論的に論じた著作」で、門外漢の吾輩からしても極めて野心的な試みと感じる。
読了日:01月13日 著者:ダーウィン


枝分かれ (自然が創り出す美しいパターン3)枝分かれ (自然が創り出す美しいパターン3)感想
「動植物の形態形成に迫る『かたち』、万物を構成する粒子の動きにフォーカスした『流れ』に続くシリーズ第3弾『枝分かれ』」は、「物や事象が成長するときの〝分岐〟の法則を追究する」もの。「エピローグでは自然が織りなすパターンの真理を一挙総括」する。結論部近くでボールは、「生命は秩序を用いてエントロピー生成を速める避雷針のようなものとして初期の地球に現れたのかもしれない」と語る。その言葉は暗示的である。秩序と無秩序の錯綜する自然の奥の不可思議が面白い。
読了日:01月09日 著者:フィリップ・ボール


夏目漱石全集〈10〉 (1974年)夏目漱石全集〈10〉 (1974年)感想
所収の「行人」 漱石も厄介な小説を書くものだ。秀才ならではの神経衰弱 精神的煩悶。兄の妻が弟に惚れているのではないか…あるいはそれ以上の関係が…。そこで兄は弟に嫁と二人だけで同宿することを求める。が、悪天候もあって一夜を共にすることに。嫂の怪しげな振る舞いに翻弄される弟。小説では曖昧な記述に終始している。狷介奇矯な精神破綻ギリギリの兄(夫)と連れ添ったなら、大概の女性は変になるだろう。あるいは奥さんへの不信が兄の神経を破綻寸前に追いやったのか。
読了日:01月07日 著者:夏目 漱石


水と原生林のはざまで (岩波文庫 青 812-3)水と原生林のはざまで (岩波文庫 青 812-3)感想
原著は1920年に書かれ、1921年に出版。つまり、奇しくも100年前の本。「アフガンで銃撃、中村哲医師が死亡」というニュースは今も鮮烈である。シュヴァイツェルは1913年37歳でフランス領アフリカへ。大学では神学と哲学を学んだ。音楽一家だったからか、さらにオルガンを学んだ。30歳の時、人間への奉仕に生涯を捧げるとして、医学を学びアフリカへ。
読了日:01月05日 著者:シュヴァイツェル


ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (同時代ライブラリー)ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (同時代ライブラリー)感想
ワトソンとクリックがDNA二重らせん構造を提唱したが、そのお膳立てをしたと言っていい生化学者、分子生物学者。だが、尋常じゃない素養の持ち主だった。十数か国語を操る。原典主義。原著者の表現表記をとことん尊重する。自負している業績ほどには評価されてないようだ。長く務めたコロンビア大学からも定年で普通にさよならされた。本人としてはもっと厚遇されてしかるべきと思っていたようだ。
読了日:01月01日 著者:E. シャルガフ

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