2020年12月の読書メーター
12月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:4699
ナイス数:8316
渡辺崋山の感想
なんと13年ぶりの再読だった。生き方も絵も素晴らしい。あたら実務的な能力が秀でていたばかりに藩の要職に。国を憂え海防を唱える。世に先んじての憂国の志だったが、生前は影響は与えなかったようだ。中心愛国のゆえに海防をと警世したが、本人は画に生きたかった。画への探求心は、同時代では類を見ない存在だと自負。牢の中でも絵筆を執る。画商が絵をせっせと売って回る。謹慎の身ではあってはならないこと。それが命取りとなった。絵が命。絵が命取り。いつか、崋山の絵を観に故地へ行きたいものだ。
読了日:12月30日 著者:ドナルド キーン
誘拐の感想
彼は、『エル・エスペクタドール』紙の記者の経験がある。カストロとの親交も長く続いたり、政治への関心も深かった。但し、「自身は「小説家の任務は優れた小説を書くこと」として、政治の舞台には一度も上がっていない」ようである。だが、本書ではコロンビア大統領を始め、政治家や役人、軍隊、警察、ジャーナリスト、文化人、一般庶民など、それぞれに生き生きと描かれている。
読了日:12月27日 著者:ガブリエル ガルシア=マルケス
夏目漱石全集〈9〉 (1974年)の感想
漱石は、「坊っちゃん」など印象的な作品はあるが、ストーリーテラーという印象は薄い。「彼岸過迄」は世評は低いか。修善寺の大患からの回復期で、期待に応えねばと漱石はかなりのプレッシャーがあったようだ。数編の短編を組み合わせて複合的に人物を描こうとする、そんな工夫を凝らしたり。その努力が実ったかどうか、危ういところだ。が、本巻を読んで感じたのは、併載されている講演集との(ある意味での)類似性。
読了日:12月25日 著者:夏目 漱石
ウィトゲンシュタインの愛人の感想
読了しての感想だが、なかなかまとまらない。まず、内容案内で示される語り手の設定だが、「地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト」とある。それがまず真に受けていいのか分からない。語り手は自分でも幾度となく、”正気“を失っている(out of mind)”と認めている。ウィトゲンシュタインの愛人。語り手は、同性愛の彼に愛人はいないと断言するが、同性愛だって(同性の)愛人が居たっておかしくない。あるいは、小学校の教師だったことのある彼は子供に性的な悪さはしなかったのかどうか。ま、本筋ではないのだが。
読了日:12月24日 著者:デイヴィッド・マークソン
アインシュタインのおもちゃ―重力と宇宙の不思議の旅の感想
28年前刊の本。つい先日、古書店で発見し即ゲット。初めから古いことは分かって入手。それでも買ったのは最近のサイエンス本でも本書が時に参照されることがあることもあるが、非常に分かりやすい記述に惹かれた。
読了日:12月22日 著者:A. ズィー
「宇宙の音楽」を聴く~指揮者の思考法~ (光文社新書)の感想
書店で「「宇宙の音楽」を聴く」という表題に目が奪われ、内容を確かめることなく手にした。古代ギリシャなど西欧の音楽に限らない歴史を辿る。「宇宙の音楽」はピタゴラスなど、近代に至るまで意識されていたが、やがて地上の音楽に偏していくことで、背景に退いていった。楽譜(記譜)の精緻化を通じ、音楽は科学に似た通俗化を得た。記譜されない音楽は廃れる一方、西欧(特にクラシック)中心の音楽が普遍化していった。
読了日:12月21日 著者:伊藤 玲阿奈
物の本質について (岩波文庫 青 605-1)の感想
デモクリトスや特にエピクロスの影響を受けた彼は、全ての根源に原子を想定し、一切を原子に基づく因果関係で捉え、彼なりの自然観を叙事詩の形で表現した。彼のスポンサーらしき人物への語りかけの形式をとりつつ、一般への啓蒙書として書かれたようだ。とはいっても、我輩の常識からしても、地震についても雷鳴、火山(噴火)、病気(疫病)、魂、精神と肉体など、自然現象や精神や肉体について荒唐無稽な説明が展開されて、理解は及ばなかった。
読了日:12月15日 著者:ルクレーティウス
死をポケットに入れて (河出文庫)の感想
ブコウスキーが亡くなったのは94年3月、73歳で。この日記風作品が書かれたのは、彼が70歳の頃か。日記の日付けは91年になっている。売れ出して貧乏生活から抜けたしたようだ。50歳を超えての売れっ子ぶりに戸惑い気味。人目を避けて、それとも頭を空っぽにするためにか、競馬に明け暮れる。出始めたパソコン(アップルか)との相性が良かったようでペンも進む(キーボードが快調)。
読了日:12月14日 著者:チャールズ・ブコウスキー
細胞とはなんだろう 「生命が宿る最小単位」のからくり (ブルーバックス)の感想
著者の「専門は、巨大ウイルス学、生物教育学、分子生物学、細胞進化学」。多数の著書があるが、『巨大ウイルスと第4のドメイン』や『生物はウイルスが進化させた』などを読んできた。巨大ウイルスが描く細胞像というのが、本書の特色だろう。本書は本年の9月末に書かれたという。まさにコロナ禍の真っただ中。
読了日:12月10日 著者:武村 政春
夏目漱石全集〈8〉 (1974年)の感想
「門」については、谷崎や田山らの評価と批判はあっても、当時としては群を抜いた作品だろう。
続いて「思い出す事など」を読んできた。漱石の闘病(病牀)日記……記録。何度も死の淵に。医者からも見放されたことも。端からは意識を失なって危篤状態と診なされ、医者が付き添う人にもう危ういと発言。なんと漱石は意識朦朧ではあったが、意識を失なってはおらず、医者の不用意な発言に内心憮然としていた。医者としては軽率だな。
読了日:12月08日 著者:夏目 漱石
ガイドツアー 複雑系の世界: サンタフェ研究所講義ノートからの感想
2011年に訳本が刊行。原書は2009年刊。やや古いか。本書が書かれたころには既に複雑系フィーバー(?)は終わっていたという声もある。観方を変えれば、研究が熟成の時代に入ったとも言えるか。
読了日:12月06日 著者:メラニー ミッチェル
拷問と刑罰の中世史の感想
「残虐きわまる拷問、戦慄が走る刑罰。足枷、水責め、緋文字、猿轡など、およそ考えつくかぎりの身体刑が席巻した暗黒の中世ヨーロッパと新大陸の世界を、多数のエピソードと社会的背景の考察に、近代の刑罰学との比較もまじえて照射する」というが、かなり手抜きした本に感じられる。著者紹介なし、訳者紹介なし。索引や解説もなし。訳書は1995年に出たが、あるいは他社で出された古い本の焼き直しかとすら邪推したくなる。我輩のような低俗下世話な奴向けの、興味本位の本なのか?
読了日:12月04日 著者:アリス・モース アール,エドワード・ペイソン エヴァンズ
大陸と海洋の起源 (ブルーバックス)の感想
自説である大陸移動説に自信を持ちつつも、反対もあって次第に追い詰められていく中、少しでも傍証を得ようと懸命な姿が垣間見られて感動というか、悲壮感すら感じた。
なんと彼が亡くなって半世紀ほど過ぎて、劇的な復活を遂げたのである。
読了日:12月02日 著者:アルフレッド・ウェゲナー
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