2020年11月の読書メーター
相変わらず漱石全集を縦糸にした読書。彼の偉大さを今更ながら痛感してる。ボッカッチョの「デカメロン」読破は満足度大。
読んだ本の数などは少ないが、主に庭木の枝葉の伐採という庭仕事を休みの日にやりつつだから、頑張っていると自分を褒めてやりたい。
11月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:4484
ナイス数:7004
赤死病 (白水Uブックス)の感想
「野性の呼び声」や「白い牙」などで知られる冒険作家のロンドンだが、アラスカものや海洋もの、ボクシング小説群など多様な物語を書いている。異人種との接触譚が好きなようで、処女作がなんと「日本沿岸の台風」。社会主義関連の文明論的小説・講演・エッセイにも手を染めている。本書所収の「赤死病」やSF的な物語で細菌戦を描いた「比類なき侵略」、惑星の歴史、人類の歴史を妄想的に展望する「人間の漂流」は、このジャンル。晩年はカリフォルニア州に二人目の妻と居住し、農園経営しつつ田園小説なるジャンルに手を付けている。
読了日:11月28日 著者:ジャック・ロンドン
ある奴隷少女に起こった出来事の感想
「奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに」という話題の本。「人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遥かに凌ぐ〈格差〉の闇を打ち破った究極の魂の物語」ということで、長く読み継がれると思う。
読了日:11月26日 著者:ハリエット・アン・ジェイコブズ
神を待ちのぞむ (須賀敦子の本棚 池澤夏樹=監修)の感想
宗教哲学というより、宗教思想家の本はあれこれ読んできた。印象的な本も幾つとなく。ブレーズ・パスカルの『パンセ』、セーレン・キェルケゴールの『あれかこれか』や『不安の概念』『死に至る病』など、アウグスティヌスの『告白』、スピノザの『エチカ』、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』……。 ヴェイユの宗教的発想も極めて独自性が高い。正直、理解できたとは到底言えないし、まるでついていけない。ユダヤ人独得の神を前にしての徹底思考がひしひしと感じられる。主著とも見做される『重力と恩寵』は読まないと。
読了日:11月25日 著者:シモーヌ・ヴェイユ
角川書店版 夏目漱石全集〈7〉の感想
「それから」などの感想にもならない感想は随時書いてきた。本巻には、同時代人の批評ということで、何人かの同時代の作家たちの書評が載っているのだが、武者小路実篤の批評が群を抜いて優れている。機会があれば、ぜひ、武者小路実篤の「それから」評を読んでほしい。それはそれとして、美は細部にありじゃないが、小説に限らず、漱石の文章を日々(在宅の日は)せいぜい30から50頁ほどを読むだけにしている。ほとんどが初読ではないので、今回の漱石通読は漱石の謦咳に接するくらいの気持ちでゆっくりじっくり文章を味わっている。
読了日:11月22日 著者:夏目 漱石
古諏訪の祭祀と氏族 (日本原初考2)の感想
日本の古代史や考古学には長年関心を抱いていて、関連の本も読んできた。が、正直、ミシャグジや天白など、本書の内容は全くの初耳のものばかり。どの頁の記述も、正直あまりに吾輩の素養からは離れているので、もしかしたらとんでも本ではと思ったり。内容についての感想は書かない。守備範囲をはるかに超えているので、今回は興味深いけど頭の中では整理できなかった。捲土重来を期すのみ。諏訪は凄い。縄文時代以来の文化や伝統、祭祀、古墳の数に圧倒されるばかり。探求されていないことが多い。本書は1975年の本。以後の展開はあるのか。
読了日:11月21日 著者:伊藤富雄,今井野菊,北村皆雄,田中 基,野本三吉,宮坂清通,宮坂光昭
デカメロン 下 (河出文庫)の感想
本作には、艶笑小説とか宮廷小説とか、いろんなレッテルが貼られてきたという。そういう面は確かにある。王様や貴族、お姫様が登場する。14世紀という時代に、女性らが時に自由闊達に振る舞い、夫には夫らしい扱いを要求する。夜の義務を果たせないなら、妻は勝手に楽しむわよ。ボッカッチョの宗教家、僧の欺瞞に対する怒りが随所に炸裂するのも面白い。ペストが大流行する中、宗教者も王様も為す術もないのだ。肝心な時に無力無能な奴らの権威が一気に崩れる。社会の基盤が根底から崩れ、あるいはルネサンスの胎動へもつながったのだろうか。
読了日:11月17日 著者:ジョヴァンニ ボッカッチョ
美の進化ー性選択は人間と動物をどう変えたかの感想
本書は実質二部構成。前半は、鳥類に観る審美的進化の話。著者らの実証的研究成果を踏まえた記述。後半は、類人猿……人間の美的進化の話。本書での著者の主張は後半にあるようだ。本書では、主に鳥類の観察に基づき、欲望と誇示が共進化するダンスの結果、(鳥の羽や嘴などの)美がもたらされたと定義することによって、人文科学における美の概念を自然科学に当てはめてきた。これが主に前半。後半では、共進化的に捉えた美の概念が人文科学、特に芸術にあてはまるかどうかを確かめている。
読了日:11月14日 著者:リチャード・O・プラム
奇妙で美しい 石の世界 (ちくま新書 1263)の感想
石を趣味にする人は少なからずいる。庭石だったり、宝石だったり。鉱石自体に魅力を感じる人もいる。宝石だと原石を削ったり磨いたりして宝石に仕立てる。本書で扱うのは、石を綺麗に割って、その中から現れ出る模様に美を見出すもの。模様が風景に見えるパエジナについては、過日、同氏著の『風景の石 パエジナ 不思議で奇麗な石の本』を読んだ際に紹介した。そのほか、花などの植物だったり抽象芸術を先取りしたような鮮烈なアートだったり。見事としか言いようがない。読むのもいいが、豊富な画像を楽しめるのがいい。
読了日:11月12日 著者:山田 英春
夏目漱石全集〈6〉 (1973年)の感想
本巻には、今も人気の「三四郎」と「永日小品」などが所収。どちらも好きな作品。前者はよく知られているが、後者も味わい深い。時折、「夢十夜」風な雰囲気もあって楽しめる。コロナ禍もあっての(書庫の奥で埃をかぶっていた、古書市で入手の)角川版漱石全集の通読だが、最初は、ラフカディオ・ハーン著作集の通読の延長で、第14巻の「文学論」と第15巻の「文学評論」だけ読むつもりだった。
読了日:11月07日 著者:夏目 漱石
皇国史観 (文春新書 1259)の感想
博覧強記の片山節が炸裂。どうやら講義録らしい。音楽評論家とばかり思っていたら、近現代史に詳しく、思想史の研究家のようだ。本書には、さすがに目次はあるものの、索引もなければ、参考文献もない。解説もない。したがってどういう経緯で書かれた(記録された)のかも分からない。語調からして講演か講義だったのかなと推察できるだけ。あるいは、著者は記憶だけで講義したのだろうか(さすがに文中に参照文献は書いてあるが、その本に言及するのだから、書名を書くのは当然だろう)。
読了日:11月06日 著者:片山 杜秀
デカメロン 中 (河出文庫)の感想
「新曲」のダンテ(1265年 - 1321年)、ペトラルカ( 1304年 - 1374年)ボッカッチョ(1313年 - 1375年)は、詩人(韻文)と散文の書き手と違いながらも、共通するところがあるとすると、それぞれの当時のイタリア方言で書いたという点だろうか。ボッカッチョは、ダンテを尊敬し、研究し、常に意識してきた。中世最後の詩人とも呼ばれるやや古い宗教観に比べ、ボッカッチョの散文は我々でもそれなりに楽しめる、理解もできる価値観が垣間見られる。
読了日:11月02日 著者:ジョヴァンニ ボッカッチョ
性からよむ江戸時代――生活の現場から (岩波新書)の感想
仕事の合間の楽しみで読む本じゃなく、「史料の丹念な読み込みから、江戸時代に生きた女と男の性の日常と、それを規定する「家」意識、藩や幕府の政策に迫る」という労作であり、本格的な研究書。江戸時代は女性も含め、性的におおらかだとか、呆気ラカンとしているというイメージ(先入観)がある。ホントにおおらかなのか。
読了日:11月02日 著者:沢山 美果子
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