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2020/08/02

2020年7月の読書メーター

Hukazawa_20200802095901  ← 「星空の不死鳥」深沢幸雄(1924年 - 2017年)作

 ラフカディオ・ハーン著作集や夏目漱石の文学論をベースに、書庫の奥に眠っていた本を引っ張り出してきての読書が先月も、そして多分今月も続きそう。コロナ禍故の読書傾向。数十年前の本もだが、父の蔵書にも徐々に手が伸びていく。眠っていた資源が生きるという意味では悪くはなかったかもしれない。
 それでもやはり、新規に買った本を読みたい。読書メーターには読みたい本が700冊以上になっている。これでも抑え気味なのだが。
 昨日、7月6日の検診の結果票をもらった。過去2回は共に真っ赤な文字があったが、今回はよくはないが、ひどくはない。
 さて、コロナ禍は第2波どころか、第1波はせいぜいウオーミングアップだった、これからが本番の到来の始まりだと言わんばかりである。

 

7月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:5359
ナイス数:5976



「御宿かわせみ」東京下町散歩「御宿かわせみ」東京下町散歩感想
時代小説歴史小説ファンの父の蔵書。平岩弓枝さんに限らず、時代小説は何百冊も。何十年に渡って書き続けられた『御宿かわせみ』。小説の舞台になった土地、川、橋、道、宿、料理、小物……。小説の面影を追いつつ、東京の主に下町散歩するにはいい本……だったなのか。本書の刊行から僅か十数年だけど、失われたもの、消えたものは多そう。まして、現下のコロナ禍だ、一気に奪われたものもありそうだ。
読了日:07月30日 著者:東京かわせみの会,平岩 弓枝


奥の細道を歩く (とんぼの本)奥の細道を歩く (とんぼの本)感想
1994年、京都の病院に入院した際に、病院の近くの書店で買った。四半世紀ぶりの再読である。旅がなかなかできない今、せめて本の上で旅する気分を味わう。的確な説明と素晴らしい写真と芭蕉の俳文と。大切なことは、脚でせっせと何百キロも歩いたということ、風光明媚を愛でるのが目的じゃなく、歌枕のなるような西行らの事績を辿る追懐の旅だということを強く認識しておくこと。ま、楽しむ分には勝手でいいんだけど。
読了日:07月29日 著者:井本 農一,土田 ヒロミ,村松 友次


名歌京都百景名歌京都百景感想
「古今和歌集から昭和初期まで、日本を代表する246人の秀歌600余首で京の四季や見どころをさぐる。名作の舞台となった名勝地n歴史と和歌のこころ、写真とが一体となった」。写真は、京都の歴史地理に詳しい加登氏が本文を熟読の上、現地で撮影。写真と本文が一体となっている点に特色がある。(中略)四半世紀ぶりの再読となる。京都へは入院などのため、数回は訪れているが、観光地を巡ったのはほんのわずか。いかに京都の奥が深いかを本書を読むと思い知らされる。でも、楽しませてもらった。
読了日:07月28日 著者:竹村 俊則


とんでも春画 妖怪・幽霊・けものたち (とんぼの本)とんでも春画 妖怪・幽霊・けものたち (とんぼの本)感想
できれば夏に読みたかったが、今年は梅雨明けが遅れて7月下旬も半ばが過ぎて夏は見えない。生物学の知見だと、大概の生物は子供を産み自立するまでがすべて。役目を終えると、他の動物に時にはメスや子供に喰われてしまう。が、人間はどこまでも生き延びようとする。その分、業も深い。六道の闇夜は際限なく続く。恐らく地獄(か極楽か分からないが)へ行っても業は燻りつづけるのだろう。その象徴が肉欲なのだろう。
読了日:07月27日 著者:鈴木 堅弘


スティーヴンソン  ポケットマスターピース 08 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)スティーヴンソン ポケットマスターピース 08 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)感想
解説も含め800頁以上。長いと言えば長いが、中身が充実していて読み急ぐ気はしなかった。収録作品は、「ジーキル博士とハイド氏/自殺クラブ/噓の顚末/ある古謡/死体泥棒/メリー・メン/声の島/ファレサーの浜/寓話(抄)/驢馬との旅」。恥ずかしながら、最後の「驢馬との旅は紀行文なのに、小説だと思い込んで読んでいた。最後まで気が付かない吾輩。なんて独創的な小説なんだ。地名はリアルなのか、架空なのか……どう受け止めていいかわからないままに。
読了日:07月27日 著者:


遊廓に泊まる (とんぼの本)遊廓に泊まる (とんぼの本)感想
女性にとっては苦界。一部の男性には愉楽の場。遣り手婆さんがいて日本各地へ 女性を買い付けに行く。貧困の極みにあった時代にあって、僅かなカネで苦界へ身を沈めていったとも。贅沢と妍を凝らした意匠の遊郭の建物。赤…朱色主体の外観。男の欲望を満たす場。濃厚接触の場にあって思惑がどこまでも擦れ違う真っ赤な闇の場。本書の刊行は2018年。コロナ禍の苦境にあって、辛うじて残った遊郭の名残の旅館…宿は、今、生き残っているのだろうか。
読了日:07月23日 著者:関根 虎洸


プレオー8の夜明け (1970年)プレオー8の夜明け (1970年)感想
表題作と、処女作など二つの作品を合わせて一冊の本に仕立てた。 プレオー8(ユイット)とは、ヴェトナムの捕虜収容所中庭第八号。
 筆者が芥川賞作家だと知る人は今日どれほどいるのだろう。我輩が高校時代に受賞したので、印象には残っている。あるいは吾輩が覚えていないだけで、買って読んだのかもしれない。正直、当時の自分が仮に読んだとしてもどれほど理解できたか。
作家の戦争体験に基づくもの。大岡昇平などいろんな戦争体験文学があるが、こういう柳に風の粘り腰の対処の仕方もあったのだと学んだ。
読了日:07月21日 著者:古山 高麗雄


小泉八雲記念館 図録 小泉八雲、開かれた精神の航跡。小泉八雲記念館 図録 小泉八雲、開かれた精神の航跡。感想
「展示品の紹介に加え、八雲の生涯を主要著書、ゆかりのマップなどを編み、簡単な日英併記として編集した第2版」簡潔な説明。写真が豊富。現下の状況にあって、ハーン著作集などを読み出して3ヶ月以上経ったけど、まだ当分は続きそう。八雲の成果が昭和天皇の窮地を救う一助にもなっていたとは初耳。
読了日:07月19日 著者:


水晶幻想/禽獣 (講談社文芸文庫)水晶幻想/禽獣 (講談社文芸文庫)感想
初期から彼の作風が徐々に形成されていく様子が分かる短編集。「青い海黒い海」「春景色」「死者の書」などは実験的というか試行錯誤。「水晶幻想」などは、意識の流れ風な当時としては先鋭的な作品。正直、川端ファンとか研究者には興味を持てるだろうが、吾輩は退屈だった。 「それを見た人達」から「禽獣」になると、読み応えがある。川端文学が始まったと感じられる。
読了日:07月18日 著者:川端 康成


寂寥郊野寂寥郊野感想
小説の舞台は、アメリカ合衆国南部の州であるルイジアナ州。郊外のSolitude Point (河岸の農作地)が舞台。白人中心の州。日本人は苦しい立場にあった。主人のリチャードが違法な農薬の汚染で健康被害を出したという汚名で仕事を失ったことを契機に、奥さんの幸恵の言動崩壊が始まる。アルツハイマー型認知症かどうか、医者の診断は確定しない。リチャードは収入の道が途絶えたことが原因だと思うが、物語が進むうちに日本人妻である奥さんの孤立、そのことが主人にも理解されていなかったことが主因ではないかとも思われてくる。
読了日:07月16日 著者:吉目木 晴彦


若い読者に贈る美しい生物学講義――感動する生命のはなし若い読者に贈る美しい生物学講義――感動する生命のはなし感想
『残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか』 (NHK出版新書)をつい先日読んで気に入ったので、本書にも手が出た。

 といいつつも、本の装丁がやや地味。書店で生物学など自然科学関係の書架を眺めた時も、普通なら見過ごしてしまったかも。著者名に目が行ったので、手にしたのだ。本書は初学者向けの本。生物学に限らず自然科学に関心を持ってもらいたいと書きおろしたらしい。大人にも科学に親しんでほしいという思いが伝わる。読みやすいし理解しやすい。お茶を飲みながら気楽に読める本である。
読了日:07月14日 著者:更科 功


ベル神父のフランス食物誌ベル神父のフランス食物誌感想
友人に戴いた本。フランス人にとって、パンは主食ではない。日本人とは、料理……飲食の考え方が違う。そもそも主食(ご飯)に味噌汁など副食(おかず)という発想が日本風……日本人の常識なんですね。と云いつつ、我輩は料理をしない。個食……孤食。料理……調理するって、恋人などの連れ合い、仲間を歓待するウェルカムの営為。友らとの時間を濃密に楽しみたいという思い。悲しいかな我輩には縁遠い世界。眩しい思いで読んでました。
読了日:07月13日 著者:ヨハネ ベル


ロリータ (新潮文庫)ロリータ (新潮文庫)感想
(前略) いずれにしろ、『ロリータ』を読み返してよかったとつくづく思う。今回は、春先にナボコフの文学講義を四冊立て続けに読んだこともあり、ナボコフの小説は何冊も読んできた。ナボコフの評価はどうであれ、ウエルベックの小説で鍛えられてもいる。そんなハイブローな講義をするお前はどうなんだと、『ロリータ』を読み返して、これはかなりレベルの高い小説だと、つくづく感じ入った次第。下世話なポルノ小説の期待はあっさり裏切られるが、代わって意匠を凝らしたナボコフならではの虚構…物語の世界が繰り広げられる。
読了日:07月12日 著者:ウラジーミル ナボコフ


越中残酷史談 (1985年)越中残酷史談 (1985年)感想
「江戸期を中心に、明治初期までの郷土史にテーマを求めた物語の数々で、義民の憤死、家老の割腹、家庭薬配置員の死、殺人、偽札作り、くるわの心中、と刃傷はなしなど、バラエティーに富んだ内容」とか。ほとんどを車中での待機中に読んだ。挿画は、かの岩田長峯氏である。昨年、展覧会へ行ったっけ。
読了日:07月11日 著者:八尾 正治


江戸切絵図散歩 (新潮文庫)江戸切絵図散歩 (新潮文庫)感想

池波氏の小説も好きだが、何と言っても東京在住30年だったので、東京の主に都下への思い入れは人一倍である。方々を歩いたし、車でオートバイで走り回った。居住したり会社のあった地域(西落合・上高田・新宿・大久保・飯田橋・高輪・三田・芝浦・海岸・中延・大森……)についてはなおのことである。
 東京出身や在住の作家らへの思い入れもある。関連本も様々読んできた。本書を読んで、古地図を手に歩けばよかったなーという悔いの念を覚えている。だからこそ、今、富山に帰郷した以上は、富山の方々を動いて回るつもりである。
読了日:07月08日 著者:池波 正太郎


ラフカディオ・ハーン著作集 (第7巻)ラフカディオ・ハーン著作集 (第7巻)感想
シェイクスピア論に始まって、英文学と聖書、ポーやロングフェロー、など興味深い話題が続く。「散文芸術論」「小説における超自然的なものの価値」「西洋の詩歌における樹の精について」「虫の詩」「英詩のなかの鳥たち」「夜の詩」「日本を主題にした外国の詩」「最終講義」などなど、気になる章が並び、詩の苦手な吾輩を夢中にさせてくれた。
読了日:07月05日 著者:ラフカディオ・ハーン


科学にとって美とは何か―形・モデル・構造科学にとって美とは何か―形・モデル・構造感想
「数学・量子論・進化論・結晶学・物理学から心理学に至る第一級の科学者たちが,今まで見すごされてきた科学における「美」の役割をさまざまな角度から解説し,科学的想像力の核心に迫る。無味乾燥な科学を親しみやすいものにする刺激的な論集」とか。以前、読みかけたが冒頭の一章が理解不能で放棄していた。コロナ禍の現況に鑑み、再挑戦。第二章からはそこそこに読める。門外漢の吾輩だから参考になる議論だろうが、がやはり、論としてはやや古い。
読了日:07月03日 著者:


三陸海岸大津波 (中公文庫)三陸海岸大津波 (中公文庫)感想
)「明治29年の津波。昭和8年の津波。チリ地震津波。三陸沿岸を襲った三大津波はどのようにやってきたか。大津波の惨状を、その悲劇を体験した人びとの証言をもとに再現し、海と闘う人間の姿を記録する」もの。作家吉村氏の力作。個人として集められる限りの証言を記録してくれている。吾輩としては、「高熱隧道」以来の吉村昭作品。ともに父の蔵書である。
読了日:07月02日 著者:吉村 昭


ドナルド・キーン自伝 増補新版 (中公文庫)ドナルド・キーン自伝 増補新版 (中公文庫)感想
ほとんど車中での待機中の楽しみで読んでいた。

 

 本書についてはメモ的に折々書いてきた。  大概の日本人には全く敵わないような日本への知悉ぶり。歌舞伎や能、狂言への傾倒ぶり。日本の文学史についての浩瀚な著作。渡辺崋山研究など、本来なら日本の研究者にやってほしかった仕事という業績。などなど卓越した研究生活は吾輩などが評価するなど僭越だろう。ただ、その上で云うと、特に文学(や美術)について、何か物足りない。
読了日:07月01日 著者:ドナルド・キーン

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