2020年5月の読書メーター
休業の日があったわりには、読書量は増えなかった。言い訳すれば、畑や庭仕事のため。2、3時間、作業すると、同じ時間、体力回復に必要となる。情けない限り。ただ、四月もだが、五月も天候に恵まれ、かなりはかどった。あと、18冊読んで、初読は4冊。残りは全て再読。もう、三か月間、再読がメイン。新刊が買えない悲しさ。読書生活そのものは充実しているんだが。
読んだ本の数:18
読んだページ数:5614
ナイス数:8788
中国 考古と歴史の旅 (中公文庫)の感想
父の蔵書。篆刻に打ち込んだ父らしく、蔵書印に肖生印までが押印してある。篆刻と云えば本場は中国。いつかは中国を訪ねたいと思っていた……が、夢は叶わなかった。中国の秘境を巡る豪華版の写真集も父の蔵書にある。せめて本書で中国を旅する。85年刊。情報が古いかもしれないが、それでも門外漢の吾輩は十分に楽しめた。
読了日:05月30日 著者:村山 孚
無意味の祝祭の感想
シニカルなクンデラらしい作品。というか、1929年生まれのクンデラは、もう90歳を超えている。創作したのは数年前だから90歳前か。社会や政治どころか、文学に対してもシニカルになっているかと感じた。文学を達観しているわけじゃなかろうが、あの世に片足を突っ込んだ者は、どんな生々しいはずの事象に面しても、意味ある世の祝祭ではなく、この世に異邦人となってしまった、せいぜい諧謔に近い祝祭と捉えるしかなくなったということか。
読了日:05月28日 著者:ミラン クンデラ
無限の始まり : ひとはなぜ限りない可能性をもつのかの感想
本書のサブタイトル…テーマは、「ひとはなぜ限りない可能性をもつのか」である。前向きというか楽観的というか、著者の人間への信頼を示す言葉。彼の言う無限は、たとえば、ゼノンのパラドックスを想わせる。あるいは運動のパラドックスというべきか。「目的点の半分の点にまで到着したとしても更に残りの半分の半分にも、到着しなければならない。更にその残りの半分にも同様、と到着すべき地点が限りなく前に続く故に到着しない。だから運動はない」とされる。
読了日:05月27日 著者:デイヴィッド・ドイッチュ
渡来の古代史 国のかたちをつくったのは誰か (角川選書)の感想
数年前に読んだばかり。書店へ足を運べないので、書庫から物色しての再読を三か月以上続けている。
二週間ほど前、『日本の渡来文化 座談会』(司馬遼太郎/上田正昭/金達寿 編 中公文庫)を読んだこともあって、その流れでもある。以前も書いたが、日本と朝鮮がいかに深く関わってきたか、さらには日本という国家や文化伝統の成り立ちにいかに深く…想像以上に朝鮮からの渡来の人々が関わってきたかを再認識すべきと考えている。
読了日:05月26日 著者:上田 正昭
定本 山村を歩く (ヤマケイ文庫)の感想
現下の外出自粛の状況に鑑み、敢えて旅の本を書庫から選んできた。歴史や、あるいは歴史にならない人々の生活や足跡が残っているはずの山村の道。時に敢えて道なき道を選ぶ著者の姿勢に共感。紀行文というと、何と言ってもイザベラ・バードである。彼女は往時の日本人の生活の中に深く立ち入っていく。
読了日:05月26日 著者:岡田 喜秋
日本の土偶 (講談社学術文庫)の感想
1990年と古い本だが、画像が豊富で情報もまとまっており、初心者には十分楽しめる。
乳児を抱く母の土偶。その中に赤子の土偶が。
旧石器時代、ユーラシア大陸各地で粘土製の土偶(土製品)があったようだ。粘土製の土偶は歳月と共に風化していくが、たまたま火事で偶然素焼きになり残ったものも。このことが焼成への気付きにつながったのではないか、と。 http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2020/05/post-e82ce3.html
読了日:05月24日 著者:江坂 輝彌
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)の感想
感想にならないようなメモ書きは初読の際に纏めて書いた: http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2020/05/post-557120.html
読了日:05月20日 著者:福岡 伸一
生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像 (ブルーバックス)の感想
再読である。著者の主張(仮説)は、第四章で示されている。
以下は、ネット上で見出した本書からの引用:
「ウイルスが作り出すウイルス工場が、私たち真核生物の『細胞核』を作り出したとなると、ウイルスの生物界における重要性は俄然、その意味を増してくる。一方で、そもそも最近の研究によって、ウイルスが私たち生物の進化にきわめて重要な役割をはたしていることが明らかになってきてもいるのだ」
読了日:05月18日 著者:武村 政春
巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト (ブルーバックス)の感想
内容案内に「「次々と発見される巨大ウイルスは、サイズが大きいだけでなく、多彩な遺伝子を持ち、細胞性生物に近い機能を備えているものもいる。これらの新発見により、「ウイルスは生物ではない」という定義が揺らぎ、巨大ウイルスは未知の生物グループ(ドメイン)ではないかという議論が湧き上がってきた」とある。まだ仮説段階。でも、ウイルスそして生命の理解でもパラダイムが揺さぶられていると感じる。
読了日:05月16日 著者:武村 政春
梶井基次郎・堀辰雄・太宰治 (向学社現代教養選書―小説 (7))の感想
梶井基次郎は、「檸檬・路上・Kの昇天・冬の蠅・闇の絵巻」。堀辰雄は「ルウベンスの偽画・鼠・麦藁帽子」。太宰治は、「黄金風景・駈込み訴え・きりぎりす・吉野山」。解説は、二宮一夫(愛光中学校・高等学校教諭 ← 当時)なのだが、短いなりにシュアな解説で掌編を読んでいるような。三人の作家は、どういう取り合わせなのか分からない。夭逝? 結核? 死と背中合わせの生か。
読了日:05月15日 著者:梶井 基次郎
ウイルスは生きている (講談社現代新書)の感想
新型コロナウイルス禍の現状ゆえに、ウイルス観連の本を書庫から引っ張り出してきた。これは新型インフルエンザ禍だったころに買ったもの。研究の日進月歩からすると、情報的に物足りないものがあるかもしれないが、門外漢には初歩から学んだほうがいいだろう。分かりやすいし、近年のウイルス研究の進展は、生命体と物質との中間的存在という括りを許さなくなっていることは痛感させられる。著者が語るように、生きている…少なくとも進化を遂げていることは確かだろう。
読了日:05月13日 著者:中屋敷均
サンセット・パークの感想
ポール・オースターである。それなりに読んできて、オースターワールドに馴染んできた。自分にとっての新作を読むたび、今度はどんな手で吾輩を小説の世界に巻き込むのか。ほんの少々高みの見物ならぬ冷ややかな姿勢で読み始めたのだが、悔しいかな一気にオースターの術中に嵌ってしまう。それぞれに個性的なアメリカの若者たちは、逆巻く波に抗いなんとか泳ぎ切ろうとするのだが、一寸先も見えない未来へと呑みこまれるようにして突っ込んでいく。文学の妙味をたっぷり味あわせてくれる。
読了日:05月12日 著者:ポール オースター
日本の渡来文化―座談会 (中公文庫)の感想
日本と朝鮮がいかに深く関わってきたか、さらには日本という国家や文化伝統の成り立ちにいかに深く朝鮮の人々が関わってきたかを再認識すべきと本書を再度手にした。
本書は、京都で鄭貴文・鄭詔文兄弟が発行し続けている(た?)「日本のなかの朝鮮文化」(十八号〜二十五号)の座談会―「東北アジアの流動と日本文化」「王仁系氏族とその遺跡」、「秦氏とその遺跡」、「紀氏とその遺跡」、「漢氏とその遺跡」、「山上憶良と『万葉集』」、「行基とその遺跡」、「能登と朝鮮遺跡」、「対馬と朝鮮遺跡」の各章からなる。
読了日:05月11日 著者:
検証 天皇陵の感想
「歴代天皇124代の全天皇陵の歴史を空撮写真、古写真、絵画資料を豊富に活用して解説」とあり、天皇陵ガイドブックとしてはもちろん、陵墓を巡る多種な課題や問題点を知ることができた。
いろいろ事情はあっても、このままってわけにもいかないだろう。天皇陵や陵墓参考墓などの調査研究、その成果に基づく適切な保存を願いたい。
読了日:05月09日 著者:外池 昇
方丈記私記 (ちくま文庫)の感想
先の15年戦争の悲惨な結末。東京にしろ富山などの地方にしろ焼夷弾などで焼き尽くされた。あるいは沖縄は地上戦が戦わされたたけにもっと悲惨だったろう。なのに、終戦直後の日本人は負けてすみませんと天皇に詫びる。天皇はというと、終戦直後には、天皇制の維持に汲々としている。国民の困窮、まして中国や朝鮮への懺悔の気持ちの欠片も示さなかった。
読了日:05月08日 著者:堀田 善衛
ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか――宇宙開闢から138億年の「人間」史の感想
個々の記述については、ポピュラーサイエンス本を読むのが好きな吾輩には馴染みがあって、ちょっと退屈。ただ、農耕生活が始まる辺りの文明の誕生辺りは、ちょっと読書の守備範囲から外れていて、勉強になった。網羅的な手堅い記述なので、高校か大学の教養部で一年かけて使うテキストにいいかも。表題にあるように、宇宙開闢から138億年の「人間」史。つまり138億年の宇宙の歴史ではなく、ついには現代の人間に至るビッグヒストリー。しかも、本書では未来学をも紹介している。
読了日:05月05日 著者:デヴィッド・クリスチャン,シンシア・ストークス・ブラウン,クレイグ・ベンジャミン
先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学の感想
一部からはトンでも本だという噂も。そもそも40年前の本を何故今さら訳して出すのか。その後の研究で本書で参照されているデータについて否定されていることも少なからず。
本書は、表題にあるように、プラトンの著作で示されているアトランティス大陸伝説をただの神話や言い伝えではなく、実は本当にあったことだという前提で、アトランティス大陸が洪水などで沈んだのであり、それはプラトンの書『ティマイオス』や『クリティアス』などにあるように、古代ギリシャから遡ること九千年前(現代体と11,000年前になる)に起きた。
読了日:05月04日 著者:メアリー・セットガスト
坑夫 (新潮文庫)の感想
本作品の舞台は、足尾銅山。作品が新聞に連載され始めた明治41年までには既にあからさまではないものの、足尾銅山鉱毒事件(この呼称も後世)が報じられつつあった。が、銅山の元坑夫の話を土台にした作品で、あくまで若き世をすねた語り手の内心の吐露であり、主観的なドキュメントの体裁を崩さない。事件を匂わす語りは全くない。世間知らずの坊ちゃんが言葉巧みに誘われるがままに、思いがけず鉱山へ。
読了日:05月02日 著者:夏目 漱石
読書メーター
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 2024年12月読書まとめ(2025.01.05)
- 2024年11月の読書メーター(2024.12.06)
- 2024年10月の読書メーター(2024.11.17)
- 2024年9月の読書メーター(2024.10.01)
- 2024年8月の読書メーター(2024.09.04)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 2024年12月読書まとめ(2025.01.05)
- 2024年11月の読書メーター(2024.12.06)
- 2024年10月の読書メーター(2024.11.17)
- 2024年9月の読書メーター(2024.10.01)
- 2024年8月の読書メーター(2024.09.04)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 2024年12月読書まとめ(2025.01.05)
- 2024年9月の読書メーター(2024.10.01)
- 2024年8月の読書メーター(2024.09.04)
- 2024年7月の読書メーター(2024.08.05)
- 2024年5月の読書メーター(2024.06.03)
「書評エッセイ」カテゴリの記事
- 2024年12月読書まとめ(2025.01.05)
- 2024年11月の読書メーター(2024.12.06)
- 2024年10月の読書メーター(2024.11.17)
- 2024年9月の読書メーター(2024.10.01)
- 2024年8月の読書メーター(2024.09.04)
「読書メーター」カテゴリの記事
- 2024年12月読書まとめ(2025.01.05)
- 2024年11月の読書メーター(2024.12.06)
- 2024年10月の読書メーター(2024.11.17)
- 2024年9月の読書メーター(2024.10.01)
- 2024年8月の読書メーター(2024.09.04)
コメント