アルトドルファー:風景画の出現(前篇)
過日より、就寝前や寝起きのときなどに、越宏一氏著の『風景画の出現 ヨーロッパ美術史講義』(岩波書店)をちびりちびりと読んでいる。豊富な画像が載っていて、本文の記述も興味深く、それこそ濃厚な風味のワインを喫するように少しずつ。
→ アルブレヒト・アルトドルファー 『ロトと娘たち Lot and his Daughter』 (画像は、「アート at ドリアン 西洋絵画史・ギリシャ神話・聖書の物語」より)
本書のことは、拙稿「空と山を眺め描くのみ…ラスキン」の中で言及している。
が、その時は、本書はネットでその存在を知っただけで、まだ手にしていなかった。
「ロト」の話題は末尾で触れる。
せいぜい、本書の内容紹介文を転記して示すのみ:
17世紀ヨーロッパにおける風景画の出現は,美術史のなかでどのような意味を持つのだろうか.絵画の画面から人物が消えてゆくプロセスを,古代壁画,聖堂壁画,タピスリー,中世書物の挿画,暦の飾画などをつぶさに見ながらたどってゆくことで,<風景>が芽生える長い道程が解き明かされる.ユニークな西洋美術入門
絵画のことも美術史のことにも疎い小生には、ただただ読み浸り画像を眺めては夢想に耽るのみ。
本書から話題をピックアップするのもいいけれど、下手するとそれだけで一か月分のブログ記事になってしまいそう。
なので、今日は、表題のアルトドルファーの絵を鑑賞して楽しむことにする。詳しい情報はネットから得たりして提供するけれど、凄みのある世界を堪能できれば小生は満足である。
← アルブレヒト・アルトドルファー 『アレクサンドロス大王の戦い』 (画像は、「アート at ドリアン 西洋絵画史・ギリシャ神話・聖書の物語」より) この描写の緻密さ。スケールの圧倒的な大きさ。人間も風景の一部として描かれている…、が徹底して細密に!
まずは、「アルブレヒト・アルトドルファー - Wikipedia」から情報を得るのが素人たる小生には無難か。
冒頭の節だけ転記する:
アルブレヒト・アルトドルファー(Albrecht Altdorfer, 1480年頃‐1538年2月12日)は、16世紀前半に活動したドイツの画家。ドナウ派の代表的画家であり、西洋絵画史において、歴史画や物語の背景としての風景ではない、純粋な「風景画」を描いた最初期の画家と言われている。絵画のほか、建築、写本挿絵、版画なども手掛けた。
そう、本稿では「西洋絵画史において、歴史画や物語の背景としての風景ではない、純粋な「風景画」を描いた最初期の画家と言われている」点に焦点を合わせつつ、画像を幾つか載せていくことになるだろう(多分)。
絵画に疎い小生でも、『アレクサンドロス大王の戦い』と題された作品は知っている。
「アルトドルファー-アレクサンドロス大王の戦い-」(ホームページ:「Welcome to Salvastyle.com サルヴァスタイル美術館 ~西洋絵画、西洋美術と主題解説~」)に、本作品(「アレクサンドロス大王の戦い(Die Alexanderschlacht)1529年」)についての説明が載っている。
→ アルブレヒト・アルトドルファー 『エジプトへの逃避途上の休息』(画像は、「Welcome to Salvastyle.com サルヴァスタイル美術館 ~西洋絵画、西洋美術と主題解説~」より)
「Welcome to Salvastyle.com サルヴァスタイル美術館 ~西洋絵画、西洋美術と主題解説~」の中の「アルトドルファー-TOPページ-」には、下記の作品も画像と共に紹介されている:
「エジプトへの逃避途上の休息 (Die Ruhe auf der Flucht nach Agypten) 1510年」
「幼子キリストに慈愛の笑みを浮かべる聖母マリア」や、「噴水で天使と戯れる幼子キリスト」といった場面に注目するのは当然としても、小生としては、「写本彩色画家の父から写実的で細密描写を基本とした画法を学んだアルトドルファーの別の一面を垣間見れる初期の代表的な作品」だという『エジプトへの逃避途上の休息』の、風景の描かれようにこそ、目を瞠ってしまう。
ほんの一世紀前までのヨーロッパ絵画の風景とはまるで違う! そこだけ切り取れば、風景画として違和感はそれほど覚えたりはしないだろう。
← アルブレヒト・アルトドルファー 『ドナウ風景』(Alte Pinakothek, Munich) (画像は、「Gallery アルトドルファー」(ホームページ:「わんだあぶっく」)より) ここまで来ると、もう、風景画そのものである。この絵に付いては、「アルプスを描く、アルプスに生きる」など参照。
しかしながら、『アルトドルファー (北方ルネサンス)』なる頁を眺めていたら、風景より、『ロトと娘たち Lot and his Daughter』(1537)が気になってしまった。
なんだか、エロチック。みだらな感じ。どんな含意があるのか知りたい。
→ ヘンドリック・ホルツィウス(Hendrik Goltzius) 『Cadmo』 (画像は、「Hendrick Goltzius - Wikimedia Commons」より) 不気味で奇怪な絵のはずだけど、妙にエロティックなのは、気のせい?
「ロト (聖書) - Wikipedia」の冒頭には、「ロト(Lot, ヘブライ語:לוֹט)は『聖書』の登場人物であり、『創世記』 11章後半から14章、および19章に登場する。父親は、テラの息子ハランであり、ロトはアブラハムの甥にあたる。また、『新約聖書』では「義人」として紹介されている(『ペトロの手紙2』 2:7-8)」とあるが、以下の説明は飛ばす(興味のある方はリンク先を丁寧に読んでほしい)。
← 『洞窟の中のロトと娘たち』(1616?) (画像は、「ロト (聖書) - Wikipedia」より) 作者は(恐らく)「ヘンドリック・ホルツィウス(Hendrik Goltzius)」(1558-1616) と思われる。「Hendrick Goltzius - Wikimedia Commons」参照。
前後の脈絡をすっ飛ばして、下記の一節を転記する:
さらにその後、彼らは山中の洞窟に移り住んだが、ここでロトの二人の娘は父を酔わせ、父によって男子一人ずつを生んだ。長女の息子は「モアブ(父親より)」と名付けられ、モアブ人の祖となり、また、次女の息子は「ベン・アミ(私の肉親の子)」と名付けられ、後にアンモンの人々の祖となった。
ロト…。そうか、もしかして、「ロト6 」にはロトセックスが含意されている? 考えすぎか。
→ 越宏一著『風景画の出現 ヨーロッパ美術史講義』(岩波書店)
「ロト (聖書) - Wikipedia」なる頁には、『洞窟の中のロトと娘たち』と題された絵画が載っている。一層、みだらというか放恣というべきか、腰の辺りが疼いてきそうな、ちょっと危険な作品である。
宗教画の一種なのか。宗教的テーマを湛えているのか。あるいは宗教的テーマを装って、その実、鑑賞者らが気随気侭な夢想に耽ったのか。
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