「フランスの広重」ノエル・ヌエット(後編)
← Noel Nouet 「Ryogoku Bashi (Showa 11) 1936」 (画像は、「The Woodblock Prints of Noel Nouet」より)
「ノエル・ヌエット - Wikipedia」の中の「日本との出会い」なる項目によると:
「フランスで既に三作の詩集を発表していたヌエットは、第4作目の詩集を出版するための費用を作るため、外国人学生にフランス語を教え始めた。そこで彼は、学生を通じて日本文化を知ることとなる。日本大使館の紹介により、静岡高等学校がフランス人教師を一人探していることを知る。彼は出願し、1926年3月に横浜に到着した。学校では一日平均三時間の授業を行い、東京の陸軍士官学校でも週一度の講義を行うようになった。三年後、一度フランスに戻るが1930年、今度は東京外国語学校(現・東京外国語大学)の教師として再び来日する。1935年に木版画の世界に入ると、持ち前のデザイン力、ペンタッチで白黒木版印刷を作成、この時の作品には「増上寺」および「桔梗門」がある。その後17年間、日本に滞在し、その間には、文化学院、アテネ・フランセ、早稲田大学、東京大学でも教壇に立つ。1947年、東京外国語学校に辞表を提出し、その後は住む場所を転々とする。1950年、銀座の万年堂にて小さな個展を開いた。その時の案内パンフレットに永井荷風が文を載せている。1951年、皇太子明仁親王のフランス語教師を一年務める。1952年、牛込に小さな家を買って落ち着き、教師の傍ら執筆活動を行う」とある。
→ Noel Nouet 「Babasakimon, (Showa 11) 1936」 (画像は、「The Woodblock Prints of Noel Nouet」より)
また、「ノエル・ヌエット - Wikipedia」の中の「版画との出会い」によるt:
「ヌエットの家には、母がデュシェ-ヌ・ド・ベルクール(フランスの駐日総領事1859-1864)から譲り受けた歌川広重の版画のコレクション(『江戸名所百景』)があった。石井柏亭のはげましもあり、町の風景を中心に絵を描き始めた。1935年、贔屓にしていた版画商、土井版画店に絵を見せると版画を出版することが決まり、彼は普通の版画の大きさで絵を描いた。そのペン画を土井版画店の土井貞一は新版画として出版したのであった。1936年に土井版画店から版行された「東京風景」24点のシリーズは、池田という彫師が版を彫り、横井という摺師が摺りを行っていた。彼は広重の影響で色彩画の版画も試み、それは売れるようになった。白水社の雑誌『ふらんす』にデッサンを発表し、それをまとめて絵葉書にしたものをジャパン・タイムズ社が売り出した。さらに同社は『ジャパン・タイムズ』の紙上に週一回、三年にわたってデッサンを掲載し、その中から50枚を選んで彼の最初の画集として刊行した。彼は高所から書くことを好んだ。それは、かつて朝日新聞社の屋上から見た風景に魅せられたためである」という。
← Noel Nouet 「Akasaka Mitsuke, Showa 11 (1936)」 (画像は、「The Woodblock Prints of Noel Nouet」より)
上掲の転記文末尾に、「彼は高所から書くことを好んだ。それは、かつて朝日新聞社の屋上から見た風景に魅せられたためである」とある。
これは、汐留ではなく、移転前の有楽町社屋の屋上のことだろう。
(余談だが、東京朝日新聞社は、富山県とはやや管轄や印刷について、やや特殊な経緯(いきさつ)があった。富山に帰郷した数年前、小生は朝日新聞の朝刊の配達というアルバイトをしていた。そのバイト当時、その変則的な経緯に何回となく、振り回されたものだった。)
→ Noel Nouet 「Kagurazaka, Showa 12 (1937)」 (画像は、「The Woodblock Prints of Noel Nouet」より)
版画、特に木版画の魅力は何処にあるだろう。
一言でいえば、親しみやすさに尽きると思う(江戸や明治などの古い版画が入手しやすい、という意味ではない)。
紙(楮か)や印刷のインク、彫り、摺り、いろいろ制作上の技術が必要だ。
技術が制約でもあり、時に予想外の効果を生み出したりする、その意外性が齎す味わいも大きい。
悲しくも情けなくも、小生は「フランスの広重」とも呼ばれるノエル・ヌエット作品の実物を鑑賞していない。
実際に鑑賞された感想を伺ってみよう:
「あるYoginiの日常 「没後40年 ノエル・ヌエット展~東京を愛した仏蘭西人~」 ガスミュージアム はじめての美術館49」
「遊行七恵の日々是遊行 ノエル・ヌエット展/世界をめぐる吉田家四代の画家たち展」
(12/10/05)
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