多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者:ドナルド・コクセター
過日、ブログ日記でも紹介していた、シュボーン・ロバーツ著の『多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者』(糸川洋 訳 日経BP書店)を本日(27日)、読了。
← シュボーン・ロバーツ著『多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者』(糸川洋 訳 日経BP書店) 「幾何の美しさを追求し芸術家、建築家、物理学者からも認められたイギリス・カナダで活躍の数学者(ドナルド・コクセター)の生涯。2008年アメリカ数学会のオイラー賞受」といった本。
かなり高度な数学の本、でも、著者もだが、特に訳者も高校で数学に辟易した口。
それでも、苦労せずに訳せたという。
ただし、それだけに、多少なりとも高度な数学に馴染んだ方には、コクセター群などの考えが、最先端の宇宙論の現場で宇宙の最深次元での対称性との絡みで(特にスーパーストリング理論において)注目を浴びているだけに、肝心の専門的な記述には物足りなさを覚えるかもしれない。
小生でさえ、もどかしかったのだし。
たとえば、小生は車中での待機中、マーカス・デュ・ソートイ著の『素数の音楽』(冨永星/訳 新潮社)を読んでいる。
本書も、一般向けに書かれた本で、数式など出てこないし、難解な記述に辟易するわけでもない。
ただ、そこは書き手のマーカス・デュ・ソートイの文章の巧みさなのだろうが、数学の(素数の)深遠さと面白み(数学者が味わっているだろう醍醐味)を、その一端くらいは感じさせてくれるし、触れているんじゃないかという錯覚くらいは与えてくれる。
ここは、数学者が素人を煙に巻くんじゃなく、専門的な内容やあるいは専門家だからこそ味わう苦汁なりを上手く語ってくれる、その語り口の妙があるのだ。
まあ、そんな芸当を数学の素人たるシュボーン・ロバーツに求めるのは、筋違いというものだろう。
→ マーカス・デュ・ソートイ/著『素数の音楽』(冨永星/訳 新潮社) 小生は、本書を初めて読んでいると思っていたが、とんでもなかった。5年前に読んでいたし、感想文さえ、書いていた!
書店の書棚で本書の背の題名「多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者」に目が向き、まさに題名に惹かれて、つい手に取り、衝動買いした本。
中学時代、初等的な幾何学の面白みに引き込まれ、今も数学(幾何学)への嗜好は消えずに残っている。幾何学、あるいは図形を描くことなどによる直観的思考が、現代数学での論理至上主義の流れの中、一度はもう時代遅れのものとして数学の世界から追放(ないし忘れ)されかけたという本書の主人公であるドナルド・コクセター。 彼は、(古典)幾何学の重要さを数学の世界に再認識させた人物。
← ドナルド・コクセター(HSM Coxeter)は、オランダの画家(版画家)マウリッツ・エッシャーとも深い交流を持っていた。エッシャーにとっては、コクセターの数学や手紙の文言は、より深く斬新なエッシャー的モザイク画の世界の探求への刺激(着想源)となっていた。数学の難解な理論は理解できなかったけれど。本図は、コクセターが一番高く評価したエッシャーの版画。(画像は、「Mathematics meets Art for Prof. Coxeter」より)
と言いつつ、小生、本書を書店で手にするまで、コクセターなる人物を全く知らなかった。
「現代のユークリッド」と呼称されているとか。
なのに、なんと、Wikipedia(ウィキペディア)にも、ドナルド・コクセターの項がまだない!(ただし、「コクセター群 - Wikipedia」は、さすがに載っている。)
ダ・ヴィンチの伝記本を読了し、先週末から本書を読み始めた。数学(や物理学、その他のサイエンス、建築)に無視できない影響を与えた数学者なのに、一般に知られていないのは、なぜだろう。
数学は好きじゃなくても、中学などの(ユークリッド)幾何だけは好きって人も多いだろうに。あまりに専門性が高い?
本書について、もう少し踏み込んだ、できれば本格的な形で知りたいという人には、「アル中ハイマーの独り言 多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者 Siobhan Roberts 著」が非常に参考になるだろう。
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