『悲しみのダルフール』のこと
ジャーナリストやルポライターが自ら危険を覚悟で紛争地域へ飛び込んで、熱気溢れる報告をする…そういった類いの本もいい。
けど、やはり当事者が語る、しかも、自らが犠牲者の一人である人の文章の持つ迫力には敵わない。
人が人に対し悪魔になれる、しかも、虐殺する連中は自らの行為を正当化して憚らない。
民族や宗教の違い、そこへ介入する欧米や、特にダルフール紛争の場合は中国の、資源(石油)獲得のためには手段を選ばない政治(大国・先進国)の酷薄さ。
本書の前半は、主人公が「砂漠の中の伝統的なザガワ族の村に生まれ、家族の愛に包まれながら豊かでいきいきとした幼少期を過ご」し、「周囲の偏見や差別にも負けず、見事に首都ハルツームの大学に進学し、医師の資格を取得する。しかし、そんな幸福な日々も長くは続かなかった」といった、家族愛に満ちた、眩い話。
後半は、「アラブ系民兵組織ジャンジャウィードが各地でアフリカ系住民の村を襲撃し、国内は大混乱に陥」り、「その惨状は、とても正視に耐えるものではなかった。村人は手当たり次第に暴行、虐殺され、無垢な少女たちまでもがレイプされ」、「ハリマはそのなかで一人の医師として必死の抵抗運動を続けるが、ついに魔の手は彼女の身の上にまで及ぶ……」といった暗黒の(しかし間違いなくこの世での)話。
(「悲しみのダルフール 書籍 PHP研究所」の解説で概要が示されている。)
(「『悲しみのダルフール』の一読を薦める」より、読書感想文を抜粋。)
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