ベクシンスキー:廃墟の美学(後篇)
→ ズジスワフ・ベクシンスキー Zdzislaw Beksinski 『??』(画像は、「Zdzislaw Beksinski」より) 何処かフリードリッヒを想わせるかのよう。けれど、徹底して乾いた絶望という名の詩情が漂うのみ。
ズジスワフ・ベクシンスキーは、「私の絵に定義づけ、意味を問う行為は無意味だ。私自身意味は分からないしね。そのうえ、理屈にはサッパリ興味が無いんだ」と言う。
だからなのか、彼の作品のほとんど(あるいは全て?)は、「無題」のようである。
末尾でも示すが、「editions treville - from é.t.art lab - エディシオン・トレヴィル - アート ラボ - ベクシンスキー アーカイブ」は、覗くだけの値打ちはある。
← ズジスワフ・ベクシンスキー Zdzislaw Beksinski 『??』(画像は、「Zdzislaw Beksinski」より)
冒頭で画像を示したズジスワフ・ベクシンスキー著の『ベクシンスキー』(エディシオン・トレヴィル;河出書房新社〔発売〕)。
その頁から、本書についての商品説明を重複を厭わず、再度、転記する:
死、腐敗、損壊。
言い知れぬ寂寥感と恐怖に支配され永遠の廃墟と化した時空。
そこにはただエロスの魂だけが虚ろに木霊している。
エルンスト・フックス、H.R.ギーガーと並び称されるファンタスティック・リアリズムの画家、写真家、彫刻家。
その夢魔的な画風で世界中のファンを魅了し圧倒的な支持を得たが、自らは幻想画家であることを否定し、ポーランドで隠者のように暮らし、先頃ワルシャワの自宅において刺殺体で発見されたポーランド現代絵画孤高の巨人ベクシンスキー日本唯一の作品集。

→ ズジスワフ・ベクシンスキー Zdzislaw Beksinski 『??』(画像は、「Zdzislaw Beksinski」より) あまりにも凄惨で哀れ。でも、この美しさはどうだろう ? !
H.R.ギーガー(Giger')は映画「エイリアン」などであまりに有名で、小生も知らないではない(ホームページ:「H.R.GIGER」がいい。いつか、小生なりに特集してみたい。)。
が、エルンスト・フックスって?
「Welcome to the official Webpage of Ernst Fuchs」という恰好のサイトがある。覗いてみると、これは凄い!
なんとしても、近いうちに特集を試みたい!
今は、「茜画廊/フックス・エルンスト」や「シモンの『我楽多日乗』 神秘的秘儀と甘美なエロス・・エルンスト・フックス」なる頁があることをメモしておくに留める。
← ズジスワフ・ベクシンスキー Zdzislaw Beksinski 『??』(画像は、「Zdzislaw Beksinski」より) 溶解する顔面。でも、心はもっと荒み乾ききっている。魂だけがかろうじて末期の息を吐いているのか。
念のため、「茜画廊/フックス・エルンスト」(ホームページ:「茜画廊」)から、一部、転記させてもらう:
富裕なユダヤ系古物商を父にウィーンに生まれるが、8歳の時ナチスが侵攻、親族.縁者の多くが監禁・虐殺される体験をもつ。13歳で彫刻を学ぶが、翌年絵画に転じ終戦とともにウィーン美術アカデミーに入学。ここでのちの〈幻想的レアリズムのウィーン派〉の育ての親、ギュータースロー教授に師事し(1946~50)、ウッチェロら15世紀のルネッサンス絵画やマニエリスムを研究、すでに精緻な細密技法をマスターして神童と謳われる。やがて彼は「間近いカタストローフを分析する人、錬金術師や魔術師を思わせる密房内の制作者」(プリオン)と評され、古色蒼然たる旧式の幻想世界を今日の頽廃した世界像と重ね合わせる「悪魔的作風」が注目を集める。
→ レオナルド・ダ・ヴィンチによる顔の素描。(画像は、「Museum of Rainbow FIGURE Ⅱ in rainbow レオナルドダビンチは何を与えたのだろうか」より) 直上のベクシンスキーの顔の絵を観たとき、誰かの絵か素描がボンヤリ浮んでいた。このダ・ヴィンチの顔の素描だったろうか。あるいはフランシス・ベーコンの描き示した人物像が思い浮かんできたのだったろうか。
最後に、ベクシンスキーのHPである「Zdzislaw Beksinski 」(Official web site presented by Belvedere Gallery)を是非、覗いてみてほしい。
せめてトップ頁(表紙)を。
ベクシンスキーの極め付けの画が望めるはずだ。
← 『BEKSINSKI ベクシンスキー画集』(画像は、「古書ドリス>BEKSINSKI ベクシンスキー画集 古本の買取・販売」より) 帯には、「損壊(ディスフィギュア―)の世界、損壊(ディスフィギュア―)の身体。現代のマニエリスム画家として伝説的な評価を得ながら、ポーランドに隠者のように暮らすベクシンスキーの、ディスフィギュア―につかれたイメージを密葬する、美しくも戦慄すべき作品群を日本初紹介」とあるとか。
「『ベクシンスキー』(1997)出版をめぐって」の編集サイドの興味深い裏話を読むことが出来る:
「editions treville - from é.t.art lab - エディシオン・トレヴィル - アート ラボ - ベクシンスキー アーカイブ」
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