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2010/02/25

柴田一成著『太陽の科学』を読む

 宇宙論も、細胞の科学も、医学も、そして地球や太陽の科学も近年、急展開を見せている。
 ガキの頃、太陽や地球についての科学書(啓蒙書、入門書)の類いをポチポチと読んできたが、折々、松井孝典氏の本を読んだりはしても、太陽を巡る本はあまり読んでこなかった。

 あくまで小生の中のイメージだが、子供の頃や学生の頃、教科書や啓蒙書に書いてある太陽像と、それほど理解の進化が見られたようには感じられなかったのだ。

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→ 「通常の機材で撮られた写真だが、夕日の中央に肉眼黒点が確認できる (画像は、「太陽黒点 - Wikipedia」より)

 しかし、近年は違う!

 図書館の新入荷本のコーナーで本書を見つけ、パラパラと捲ると、謳い文句には、「人工衛星「ようこう」「ひので」などの最新成果により、太陽は爆発を繰り返すダイナミックな天体であることがわかった」とか、「磁場の作用で、パチンコのようにプラズマが射出するメカニズムや、それが磁気嵐となって地球に影響を及ぼすプロセスを解明する」などとあり、「太陽研究の基礎から最先端の成果まで詰まった、知的興奮の書」とまで言い切っている。
 まあ、宣伝なのだから、それくらいは書くのだろうが、実際、本書を読んで、「太陽は爆発を繰り返すダイナミックな天体」であることを痛感させられた。

 著者の柴田一成氏は、現在、京都大学大学院理学研究科附属天文台長であり、京都大学宇宙総合学研究ユニット長(兼任)といった現職の方。

 本書は、「太陽研究の基礎から最先端の成果まで詰まった」本で、太陽研究の基礎も興味深い(小生の中の常識が随分と覆された)が、本書の醍醐味は、「第2章 人工衛星が明らかにした太陽の真実」もだが、やはり、「第3章 太陽が地球に与える影響」や「第4章 爆発だらけの宇宙」にこそ、ある。
 太陽研究の最先端に著者自らが関わり、且つ貢献されているからこその面白さがある。

 太陽を観測した最新のデータ(とその解析結果)があるからこそ、見い出された研究成果が随所に記述されている。
 本書の案内に、「人工衛星「ようこう」「ひので」などの最新成果」とあるが、これら衛星への期待については、下記が参考になる:
JAXA|世界が期待するSOLAR-Bの高性能望遠鏡

 これらの研究の結果、「宇宙天気の予報」も、現実味を帯び始めている。
 実際、「太陽の爆発の影響で起きた磁気嵐のせいで、人工衛星が故障したり、地球上で大停電が起こったりといった被害が起きてい」るのだが、その予測にも成功していたという事実のあったことも本書に書いてある。

 太陽研究の成果も大事だが、ある意味、現下の地球環境問題に関連しては、地球環境温暖化の問題への、重大な疑義も見過ごせない。

 温暖化には、科学的にはともかく、少なくとも政治的には大気中の二酸化炭素濃度が重大だという認識が定着してしまっている。
 この認識には、相当程度の異論が科学者の間からも出ていることは周知の事実だろう。

 そのことの是非もさることながら、短期的には、太陽の黒点の活動こそが、地球の温暖化(あるいは寒冷化)に相当程度影響しているという認識が天文学者の間では共通認識になりつつあるようだ。
 この太陽の黒点(の活動)についても、本書で書かれているのだが、その黒点の活動(黒点は約11年周期で増減を繰り返している)の沈静化している時期は、地球の(短期での)寒冷化に相関しているというのだ。
 このことは、二酸化炭素の地球温暖化との関わりを否定するものではないが(肯定もしないが)、少なくとも、地球大気の温暖化(寒冷化)については、どうやら太陽(の黒点)の活動のほうが影響が大きそうなのである。

 気象学者らと天文学者らとの認識の違いもあるし、政治的な思惑ではなく、純粋に科学的な見地から、地球大気の温暖化(寒冷化)の真の原因やメカニズムを探ってもらいたいものだ。
 これは、政治的な見地で決め付けて済む事柄では全くないはずなのである。

 まあ、こうした疑義を踏まえての、地球環境温暖化対策なら、問題はないのだが。

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← 柴田 一成【著】『太陽の科学―磁場から宇宙の謎に迫る』(NHKブックス 日本放送出版協会 (2010/01/30 出版)

 とにもかくにも、太陽に限らず、宇宙が爆発だらけの危険な世界であることなど、最新の太陽研究を知ることができて楽しかった。
 驚くべきことと思うべきか、最先端の科学研究の書を読むとしばしば感じるのだが、この世界に生まれ、生存しているのは、奇跡に近いのかもしれない。
 生きて在ること、その何気ない日常そのものが秘蹟なんだろうけど。


参考サイト:
Kazunari Shibata's Home Page
国立科学博物館-宇宙の質問箱-太陽編
地球温暖化に対する懐疑論 - Wikipedia

                          (10/02/25 作)

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