シートン著の『オオカミ王 ロボ』を読み直す(前篇)
ひょんなことから、とても懐かしい物語、シートン著の『オオカミ王 ロボ』を読む機会を得た。
昨夜半近くに読了した、ジョージ・エリオット著の『ミドルマーチ』を借り出し期間内に読みきれず、延長の手続きに行った際、隣りの児童図書の新入荷本のコーナーに本書を見い出したのだ。
← アーネスト・T・シートン 文・絵『オオカミ王 ロボ』(今泉吉晴 訳・解説 童心社) 「シートンがアメリカ・ニューメキシコのクルンパを支配するオオカミのロボに挑んだ壮絶な物語。シートンは、メスのオオカミ・ブランカに対するロボの深い愛情に感動と後悔を抱く。新しいシートン動物記第1弾!」だって。
手続きが順番待ちで手間取ったので、ぶらりと覗きに行ったら、そこにこの本があった、というわけである。
子供の頃、この物語を読んで、悲劇のヒーロー像に胸焦がれる思いをした、そんな遠い記憶がある。
憧れというわけではないが、孤高の、しかし心優しいヒーローのあまりに哀れな末路に思い入れを強くしてしまって、本の挿絵をせっせと真似て描いたものだった。
その絵は一つくらいは今も残っているはずである。
だから、読むというより、絵への懐かしみという気まぐれでついでのつもりで借り出したのだ。
借りた以上は、読んでみる。
すると、曲がりなりにも大人になった今になってこの悲劇の物語を読んで、ある意味、怒りをすら覚えた。
憤怒の念と言ってもいいような思いを抱くとは、ちょっと意外だった。
しかし、怒りの念を覚えるのは、意外ではなく、必然なのだと思う。
→ Ernest Thompson Seton (drawing from 「100 Years of Illustration Ernest Thompson Seton 1860-1946」)
この物語については、「狼王ロボ - Wikipedia」に概要が示されているので、大よそのことは分かる。
一部だけ転記すると、以下の通り:
ニューメキシコの一地区カランポーに到着したシートンは、現地の人々から「魔物」と呼ばれ恐れられる古狼、ロボの存在を知らされる。ロボはがっしりとした巨躯の狼で、自分の倍以上もある体重の牛を引きずり倒す体力と「悪魔が知恵を授けた」とさえ称される知性を持ち合わせていた。今までも何人もの牧場主やハンターたちがロボに挑んだが、策は全て徒労に終わり何百頭もの家畜や猟犬が殺されたという。人間を翻弄し続けるロボに万策尽きたカランポーの人々は、今まで数々の狼の群れを退治してきたシートンに白羽の矢を立てたのだった。
依頼を受けたシートンはロボの群れの追跡を開始した。(中略)シートンは知恵を絞りロボを捕らえようとするが、いかなる巧妙な仕掛けも通用せず、ロボたちは人間を嘲笑うかのように罠をかいくぐっていった。
そして追跡開始から3ヶ月が経った頃、シートンはロボの群れの足跡を見てあることに気付く。それは群れにいる特定の一頭にのみ、厳格なロボが例外的に寛容な態度を取っているというものだった。シートンはその特徴から足跡の主はロボの群れにいる唯一の雌、真っ白な毛色を持つ「ブランカ」と呼ばれる狼のものと断定する。ロボにとってブランカは特別な存在であり、これがロボの唯一の弱点と悟ったシートンは、捕獲の対象をロボからブランカへと変更。間もなくブランカは罠にかかり、シートンたちに捕獲される。
(以下略)
今回読んで怒りを覚えたのは、オオカミ王ロボの弱みである、「ブランカ」と呼ばれる雌のオオカミをまず、仕留め(その殺し方の残虐さ!)、怒り狂い、悲しみに我を忘れたロボの、冷静さもリーダーの自覚も見失った挙句の哀れな末路、人間のズルさ、という点に、ではなかった。
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