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2009/10/14

「富山市美術展 2009」を観て来た(下)

 会場内をせかせかと見て回った…というより歩き回ったもので、書(書道)や工芸、写真などのコーナーは、今回は立ち入ることもしなかった。
 書(書道)や工芸(造形)作品は苦手という意識も働いて、ついつい敷居が高く感じられるようでもある。

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← 鉾木久雄「雪の山門」(入選)

 さて、絵の鑑賞で下手な感想など書かない。
 以下、旧稿からモノローグを少々、転記して示す。
 特に意味はない…のだが。

 病室での長い長い夜を想う。
命が静謐なる闇の中で密やかに滾っているようでもある。熱く静かに、静かに熱く、命は燃え、息が弾む」。
 いや、もう、滾りもしないし、弾みもしない。

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→ 不詳

真夜中の病室。隣り合う人たちも、ようやく眠りに就いている。看護の人も先ほど見て回って行ったばかりである。そんな中にあって、夜の深みに直面して、何を思うだろうか。過ぎ越した遠い昔のこと、それともあるかないか分からない行末のこと、もしかしたら信じている振りを装ってきた来世のこと。消え行く魂の象徴としての、吹きもしない風に揺れる小さな焔なのかもしれない」。

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← 直江定雄「昼下りの山村」(入選) こういう山間の古民家の光景は、もう、それだけで小生の気を引く。竹林の中の古民家…。小生の短編「筍の家」の挿画に使わせてもらいたくなる。

闇の中、懸命に蝋燭の焔を思い浮かべる。そう、魂に命を帯びさせるように。それとも、誰のものでもない、命のそこはかとない揺らめきを、せめて自分だけは見詰めてやりたい、看取ってやりたいという切なる願いだけが確かな思いなのだろうか」。


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→ 新井利子「野の秋」(優秀賞) (実際の作品は、黄色と青色との対比がもっと鮮やか。但し、メモの際、名前を間違ったかもしれない。)

きっと、魂を見詰め、見守る意志にこそ己の存在の自覚がありえるのかもしれない。風に揺れ、吹きかける息に身を捩り、心の闇の世界の数えるほどの光の微粒子を掻き集める。けれど、手にしたはずの光の粒は、握る手の平から零れ落ち、銀河宇宙の五線譜の水晶のオタマジャクシになって、輝いてくれる。星の煌きは溢れる涙の海に浮かぶ熱い切望の念」。


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← 浅岡栄子「満月」(入選)

蝋燭の焔もいつしか燃え尽きる。漆黒の闇に還る。僅かなばかりの名残の微熱も、闇の宇宙に拡散していく。それでも、きっと尽き果てた命の焔の余波は、望むと望まざるとに関わらず、姿を変えてでも生き続けるのだろう。一度、この世に生まれたものは決して消え去ることがない。あったものは、燃え尽きても、掻き消されても、踏み躙られても、押し潰されても、粉微塵に引き千切られても、輪廻し続ける」。


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→ 村井敏子「蔵をつたう」(入選) 単純素朴な構図だし、見過ごしていいはずなのに、つい振り返って見直してしまった。

輪廻とは、光の粒子自身には時間がないように、この世自身にも実は時間のないことの何よりの証明なのではなかろうか。だからこそ、来世では誰も彼もが再会すると信じられてきたのだろう」。


関連拙稿:
あなたを縛るものは何ですか

                           (09/10/12 作)

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コメント

国見さま
ご無沙汰いたしております。お元気な様子。
私のブログ「なんと‐e.com」の「なんと万華鏡」も、ご覧いただければと思います。ブログネームは「ほそみち」です。

投稿: 奥野達夫 | 2009/10/18 14:29

奥野達夫さん
いえ、ほそみちさん
ようこそ!

こちらこそ、帰郷しておりながら、無沙汰して、申し訳なく思っています。

元気…というより、家庭の事情で家に張り付いたような生活。
外出も所用だけ。
帰郷して一年と半年余りになりますが、富山の美術館も名所もどこも、ほとんど訪ねていません。

ブログの記事もかなり低調になっていて、とにかく持続だけはさせたいと頑張っています。

貴殿のブログ、お邪魔させてもらいました。
相変わらず活発な活動をされているのですね。
交流の幅も広いことに驚かされます。


投稿: やいっち | 2009/10/20 19:42

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