« 『リチャード三世』を斜め読みする | トップページ | カストラートについて »

2009/08/06

『ホモ・フロレシエンシス1万2000年前に消えた人類』の周辺

 マイク=モーウッド、ペニー=ヴァン=オオステルチィ著『ホモ・フロレシエンシス〈上〉―1万2000年前に消えた人類』『ホモ・フロレシエンシス〈下〉』(馬場悠男監訳、仲村明子翻訳 NHKブックス)を読んだ。

 NHKブックスの上下巻を併せても400頁ほどの本。
 分冊は、出版社のシリーズの都合なのだろうけど、読者としては、一冊の本のほうが読みやすい。

2009_1021071003tonai0007

← 発掘現場のリアン・ブア(冷たい洞窟)。(画像は、「サイエンスZERO これまでの放送 278 衝撃の発見! 身長1m 小型人類の謎」より)

「世界中を驚かせたホモ・フロレシエンシスの発見」。身長が一メートルほどの人類の発見ということで、「それは新たな人類なのか、単なる小頭症の現生人類なのか」と論争を呼んだ。


ジャワ原人の末裔かもしれない化石が、インドネシアのバリ島の東、コモドオオトカゲで有名な小島コモド島の東となりのフロレンス島で、2003年に発見され」、「ホモ・フロレシエンシス」と呼称されるが、ホビットという愛称もある。

山賀 進のWeb site」の記述によると、「ジャワ原人:ジャワ原人の末裔かもしれない化石が、インドネシアのバリ島の東、コモドオオトカゲで有名な小島コモド島の東となりのフロレンス島で、2003年に発見された。身長1m程度、頭の大きさはわれわれの1/3程度(グレープフルーツなみ)という小さな人類化石であった。1万8000年前に生存してたという。当然、この地域にはすでにホモ・サピエンスも進出していただろうから、一時は共存していたことになる。彼らは1万3000年前の火山噴火により絶滅したという」といった内容(本書では、1万2000年前に消えた人類、となっているが)。

 なお、「ジャワ島には二万五〇〇〇年前までホモ・エレクトスが生存していたと思われる。ホモ・サピエンスは四万年ほど前にアジアに到達したとされるので、ホモ・フロレシエンシスと合わせると三種のヒトが共存していた時があったことになる」!

 でも、本書は、どうも書きおろした意図が違うところにありそう。
 読んでいるうちに、何の本だったか、忘れそうになったりして。

「大きな動物は小さく、小さな動物は大きくなるという、「島の法則」の作用は、人類にもおこりうるのか」も、大いに問題になったし、本書でも書いてあるのだが、むしろ、本書では、印象の上では、「激しい論争の渦中、骨は論争相手のもとへ…発見後の混乱を乗り越えて当事者である著者が挑む、ホモ・フロレシエンシスと人類の進化・拡散の謎」と、学者間の論争や、欧米の人類学者らと、、従来はほとんど常に発掘された遺跡・遺骨・遺物などの証拠が持ち去られる運命にあった発見された国・インドネシアの学者らとのメンツを懸けた戦いでもある。
(醜聞とも呼べそう!)

 日本も研究体制(施設や資金・人材)という面では、欧米に少なからず遅れを取っているが(日本は、本書の監訳をされている馬場悠男氏によると、欧米と東南アジアなどとの中位の状態だという)、インドネシアなどのアジア各国は尚のこと、苦汁を飲む状況を今も強いられている。


4311043af1crop_2

→ 「ホモ・フロレシエンシスの人類史上の位置」 (この画像を見つけたのは、下記するが、「山賀 進のWeb site」にて)

 改善されつつあると期待しいたいが…。
 アフリカなどの状況は推して知るべきであろう。

 発見に至るドラマ、発見してからの論文を発表するまでのハラハラドキドキの物語以上に、本書はそういった遅れた研究体制(資金も人材も)の国での発掘の微妙な国際関係、学者間の軋轢などなどの話に自然と興味を掻き立てられてられてしまう。

 それが本書の意図なのか、今ひとつ、はっきりしない。
「骨は論争相手のもとへ」とあり(それはインドネシアの人類学会の重鎮)、その大切な骨が稚拙な、あるいは杜撰な取扱いで傷められてしまったりする。
 ということで、そのつもりはなくても、(少なくとも結果的には)そのインドネシアの学界の重鎮が悪者扱いにされてしまう。
 

4311043af2

← 「ホモ・フロレシエンシスの身長と脳の大きさ」 (この画像を見つけたのは、同じく、「山賀 進のWeb site」にて)


 単純に困った人というのなら、図式は明確で記述も割り切れるのだろうが、そうもいかない歯痒さが、監訳に携わった馬場悠男の弁からも感じ取れる。

 まあ、人類の起源といった問題なると、微妙な問題が絡むから、どんな世界でもありえる学者間の軋轢以上に、学問の現場においても、複雑で微妙な問題が、決して截然と切り離されることなく、付き纏ってしまうのだろう。

 余談が過ぎた。
 でも、本書の半分は、そんな問題(愚痴? 苦労話? 自慢話にはなりきれない難しさ)なのは事実なのである。
 言い換えると、まだまだ謎や疑問が残っていて、「今後の発掘成果を待たねばならない」ということでもあろう。

41409111312

→ マイク=モーウッド、ペニー=ヴァン=オオステルチィ著『ホモ・フロレシエンシス〈下〉―1万2000年前に消えた人類』(馬場悠男監訳、仲村明子翻訳 NHKブックス)


 本書の内容については、例えば、下記のブログ記事がよく整理がされていて、理解に資すると思われる(小生が説明するよりは!):
『ホモ・フロレシエンシス』上・下(日本放送出版協会、2008年) 雑記帳

 上掲のサイトを読むと、実に手際よく纏められていて、感心するばかりだ。
 本を読んで感想文など書こうとして、参考資料を求め、ネット検索して、いきなりこういうサイトが浮上してきたりすると(浮上すべくして上位に来るわけなのだが)、自分などが下手な感想文を書く必要もなければ、印象を書き残す意欲すら萎えてしまう。
 ま、愚痴は愚痴として…。
 
 本稿でも、既に参照させてもらっているが、人類史について、もっと幅広い観点からだと、図表も載っていて理解しやすい、下記のサイトがいい:
人類の起源 第3部 生命 山賀 進のWeb site

41409111231

← マイク=モーウッド、ペニー=ヴァン=オオステルチィ著『ホモ・フロレシエンシス〈上〉―1万2000年前に消えた人類』(馬場悠男監訳、仲村明子翻訳 NHKブックス)

 これまで本ブログでも何度か参照させてもらったが、「はるかなる旅展」は、覗いて楽しい。

関連拙稿:
海部陽介著『人類がたどってきた道』
海部陽介著『人類がたどってきた道』(続)
崎谷 満著『DNAでたどる日本人10万年の旅』!

                            (09/07/30 作)

|

« 『リチャード三世』を斜め読みする | トップページ | カストラートについて »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

書評エッセイ」カテゴリの記事

社会一般」カテゴリの記事

科学一般」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/52847/45781708

この記事へのトラックバック一覧です: 『ホモ・フロレシエンシス1万2000年前に消えた人類』の周辺:

« 『リチャード三世』を斜め読みする | トップページ | カストラートについて »