« マイケル・モ-ガン著の『アナログ・ブレイン』は再読でした | トップページ | 09薬王寺・柳町七夕祭り(牛込パレード)画像情報 »

2009/07/03

ケネス・ リブレクト 著『スノーフレーク』あれこれ

 図書館で予約していた本を借り出した際、それが娯楽系の小説だったので、もう一冊、ジャンルの違うものも手にしたいと書架をぶらついたら、本書が目に入った。
 雪の結晶を巡る、親しみやすい文章での科学解説(エッセイ)と素晴らしい写真とのコラボの本。

51boptzzl

→ ケネス・ リブレクト 著『スノーフレーク』(パトリシア・ ラスムッセン撮影 でがわ あずさ/広田 敦郎 訳 山と溪谷社) (画像は、「Amazon.co.jp: 通販」より)

 雪の結晶、雪片(スノーフレーク)は、決して凍った雨粒などではない。
「水蒸気が空気中で昇華凝結、つまり液体の状態を介さないでいっきに凍って固体になる時、雪結晶は形成される」。
 誰かが造形をしているわけではない(だろう)が、多様な形はあっても原則として六角形である。
 同じようでもあるが、実際には二つとして同じものはできないし、ありえないという(その理由も本書の末尾に書いてあって、なるほどと納得させてくれるものだった)。

 本書の記述は平明で親しみやすいが、ちゃんと雪結晶の観察の歴史もつづってある。
「雪結晶についての詳細な記録で最も古いものは1637年、フランス人哲学者ルネ・デカルトによるもの」。
 小生は高校時代、ショーペンハウエルとデカルトの哲学書に感銘を受け、哲学に志した。
 当時、デカルトで読んだのは中央公論社の『世界の名著』(野田又夫責任編集)で、その解説の中でだったと思うが、デカルトが雪の結晶を観察研究していたことを知ったのだった。

 関連する旧稿では、デカルトやケプラー、中谷宇吉郎のことも取り上げている。
 当然ながら、本書でも中谷のことは、「雪結晶について初めて詳細かつ体系的な研究を行った。世界で初めて人工の雪結晶を作ることに成功。実験室でウサギの毛の上で成長させた」ことなどが紹介されている:
季節外れとは思うけど雪のことなど

A640by480_2

← この写真(のみ)は、free素材。「Snowflake Wallpaper」 (画像は、「Snowflakes and Snow Crystals」(本稿で紹介している本の著者Kenneth G. Libbrechtが運営しているサイト!)より) 画像を拡大してご覧になることをお奨めする。 

 雪片ということではないが、「雪」を巡っては、これまでもあれこれ綴ってきた。
 関連稿は、「思い出は淡き夢かと雪の降る」にてリストアップしてある。

 一部だけ、転記しておこう:

 小生にはその頃は未だ、雪は神秘の塊のように思えていたのだ。雪が水の違う相なのだとは信じられなかった。仮に水が、あるいは凍って雪になるのだとしても、そこには天の意思とか、あるいは神の見えざる手が加わっているに違いないとしか思えなかった。
 小生の生まれた富山は、小生がガキの頃は冬ともなると、これでもかというほどに雪が降って、家の手伝いなどしない甘ったれの小生だったが、雪掻きだけは大好きだった。疲れ、湯気の立ち上る身体を堆く積まれた雪の小山の天辺に横たえ、何処までも深い藍色の夜空を眺め入った。
 雪は小止みなく降っている。あっという間に身体は雪に埋められていく。顔にも雪が降りかかる。頬に辿り着いた雪は、次々に溶けて雫となり流れ伝っていく。仰向けになって雪の空を眺めていると、段々、不思議な錯覚に囚われてくる。自分が天底にあり、大地に横たわっているのではなく、白いベッドに乗ったまま、天に吸い込まれていくような感覚を覚えてしまうのだ。雪の花びらが中空を舞っている、その只中を自分の身体が漂っている。上昇していく。藍色の闇の海の底から雪が生まれる、まさにその現場にいつかは辿り着いてしまいそうに思えてくる。


 本書に戻る。
 本書の特徴は、科学的記述もさることながら、なんといっても、掲載されている写真の見事さである。
「雪結晶ははかない芸術作品です。この本に載せた雪結晶の写真は、空気中を降ってくるものを一つずつとらえて、すぐさま撮影したものです。地面に落ちた雪結晶はわずか数分、ときには数秒で形が崩れていきます。尖った先端も丸みを帯び、繊細な容貌はわずかな時間で消え去ってしまうのです。降ってくる雪結晶に同じ姿形をしたものは一つもありません」…。
 そういった雪結晶をパトリシア・ ラスムッセンが撮影した。
顕微鏡にカラーフィルターを内臓したことで背景効果と明るいハイライトが与えられるため、無色透明な雪結晶の写真は立体的に三次元の構造まで映し出されていて、その美しさは今までの雪結晶写真とは一線を画している」。「写真を見ているだけでもうぐぐっと雪の不思議の世界に引き込まれてしまう」のも無理はないのだ。

W050207c080

→ 「snowflake」 (画像は、同上。ブログで写真を使う際は、クレジットを付すことで容認されている(If you want to publish something from this website on your personal website or blog, that's fine, but please include a link to 「SnowCrystals.com.」)) この写真も拡大して見たほうがいいかも。

 無論、実物に優るはずはない。今は梅雨、その後は夏。
 冬。雪の季節には遠い。
 雪の降る時期に本書を手にあれこれ観察を試みるのもいいだろう。
 けれど、夏の時期にこそ、本書の記述や写真を介して、雪への想いを逞しくしてみるのもいいのではないか。

                             (09/07/01 作)

|

« マイケル・モ-ガン著の『アナログ・ブレイン』は再読でした | トップページ | 09薬王寺・柳町七夕祭り(牛込パレード)画像情報 »

文化・芸術」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

書評エッセイ」カテゴリの記事

科学一般」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/52847/45505432

この記事へのトラックバック一覧です: ケネス・ リブレクト 著『スノーフレーク』あれこれ:

« マイケル・モ-ガン著の『アナログ・ブレイン』は再読でした | トップページ | 09薬王寺・柳町七夕祭り(牛込パレード)画像情報 »