ミチオ・カク著『サイエンス・インポッシブル』はSFを超える!
ミチオ・カク著の『サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か』(斉藤 隆央【訳】 日本放送出版協会 (2008/10/25 出版))を読んだ。
別に同氏の著作のファンというわけではないはずだが、同氏の訳書は少なからず、読んできた。
最初に読んだのは、『アインシュタインを超える ― 超弦理論が語る宇宙の姿』(講談社ブル-バックス)で、宇宙論が日本でブームになった頃で、同書で小生は超ひも理論の世界に導かれていった。
← ミチオ・カク著『サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か』(斉藤 隆央【訳】 日本放送出版協会 (2008/10/25 出版))
素粒子論の究極の存在を点粒子と仮構する発想に素人の小生ですら、疑問を抱いていただけに、やっと点ではない形で究極の存在を想定する取り組みに密かな快哉の念を抱いた。
でも、きっと、「(超)ひも」じゃなく、もっと違う形なんだろうなとは、思ってきたけれど。
ついで読んだのは、『サイエンス21』(野本陽代訳 翔泳社)で、上掲の本からは十数年の間がある。
ここには苦い思い出があって、『アインシュタインを超える』を読んで約十年後、何処かの書店で、面白そうだと同じ本を買ってしまった。
前に読んだとは気づかずに!
田舎に本があると承知しつつ、同じ本を買ったことはあったが、気づかずに二度、買ったのは(多分!)初めてのことで、ショックだった。
ショック過ぎて、せっかく買ったのに、読まないままに書棚に突っ込んでしまった。本に罪はないのに。
(なんとなく、図書館で本を借りて読むようになったのも、懐具合が悪く、本を買えなくなったってのもあるが、このショックで、買う気力というか意欲が萎えたってのも、大きいような気がする。)
ただし、『サイエンス21』はちゃんと読んだ。
さらに、『パラレルワ-ルド ― 11次元の宇宙から超空間へ』(斉藤隆央 / 日本放送出版協会)を読み、本書『サイエンス・インポッシブル』に至るわけである。
正直、この『サイエンス・インポッシブル』が同氏の本の中では、一番、面白かった。
「今でも当たり前のGPSや携帯電話は、かつて想像の世界にしか存在しなかった。だとしたら、タイムトラベルやテレポーテーションも、実現できる日が来るかもしれない。『スター・トレック』や『透明人間』など、古今のSF作品に登場する「ありえない」テクノロジーは、いつ、どのように実現できるのか…。現代物理学界を代表するミチオ・カク博士も、昔はSF大好き少年だった!だれもが持つ「少年時代の夢」をかなえる最先端の科学理論をカク博士が熱く語った、全米ベストセラーのポピュラー・サイエンス書」といった本。
実際、携帯電話なんて、今は当たり前に使っているが(使いこなしてはいないが!)、線も何もないのに、電話できるなんて信じられないという感覚は今もある(← 小生だけ?)。
しかも、動画さえ、送受信できる。
テレポーテーションも、既に極微の世界では実験的に成功していると、過日、読んだ本で知ったばかりだが、本書で読んで、改めて、科学的に技術的に可能と不可能の線引きの微妙さを思い知らされる。
→ ミチオ・カク著『サイエンス21』(野本陽代訳 翔泳社)
本書では、以下のような章立てになっている:
1 不可能レベル1(フォース・フィールド;不可視化;フェイザーとデス・スター ほか)
2 不可能レベル2(光より速く;タイムトラベル;並行宇宙)
3 不可能レベル3(永久機関;予知能力)
「不可能」の未来
「レベル1は、うまくいけば数年から百年以内に実現可能なもので、透明化技術やテレポーテーションなどが含まれる」。「レベル2は、数千年から数百万年で実現可能なもので、ワープやタイムマシンなどが含まれる」。「レベル3は、現在の物理法則では「明白に阻止」されているもので、(無限のエネルギーを取り出す)永久機関や(未来を見渡すことのできる)予知能力が含まれる」。
(「【竹内薫の科学・時事放談】サイエンス・インポッシブル (1-2ページ) - MSN産経ニュース」参照)
まあ、そんなことより、推理小説(探偵小説は除く)よりSF小説が好きだった小生としては、この一冊でSF小説を何十冊も読んだ満足感が得られたことが特筆される。
ちなみに本書『サイエンス・インポッシブル』の日本語訳題名は、訳者によると、ミチオ・カク氏の関与する、科学のホットな話題を集めたウェブサイト『Impossible Science』(と、トム・クルーズの主演した映画の題名と)に引っ掛けているとか。
← 本訳書の日本語題名『サイエンス・インポッシブル』は、原題の『PHYSICS OF THE IMPOSSIBLE』と、科学のホットな話題を集めたウェブサイト『Impossible Science』、そして、トム・クルーズの主演した映画の題名『ミッション:インポッシブル(Mission: Impossible)』などを意識しつつ考え出したとか。
せっかくなので、本書の「まえがき」から著者の、ミチオ・カク氏の若き日のエピソードを一つ:
高校時代、サイエンスフェアの課題として、ガレージで粒子加速器をつくった。そのために、電機メーカーのウエスティグハウス社へ行って、変圧器の鉄くずを四〇〇ポンドももらい集め、クリスマス休暇のあいだ、高校のフットボール場で二二マイルもの銅線を巻きつけた。そしてとうとう、六キロワットもの電力を消費して地球磁場の二万倍の磁場を生み出す、二三〇万電子ボルトのベータトロンを完成させた。目標は、反物質をつくり出せるほどの強力なガンマ線を生み出すことだった。
参考:
「Welcome to Explorations in Science with Dr. Michio Kaku」(ミチオ・カク公式サイト)
(09/07/16 作)
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