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2009/06/14

岡本綺堂『半七捕物帳』がマイブーム

 今、「海辺のカフカ」などの作品で知られる村上春樹さんによる5年ぶりの新作小説、「1Q84(いちきゅうはちよん)」(全2巻)が売れていて、あっという間に百万部を超えたという。

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→ 岡本綺堂著『半七捕物帳(一)』(光文社時代小説文庫) カバーイラストは、岩田専太郎氏の流れを汲む、時代劇の挿絵画家の巨匠の「堂 昌一」である。今は、新装版が出ているが、カバーイラストは、同じく堂 昌一氏の手になる。


 …なのだが、小生、個人的には、岡本綺堂の『半七捕物帳』がマイブームである。
 何故となくノスタルジーというか、回顧的な気分になり、岡本綺堂の世界に触れたくなったのである。
 といっても、まだ、全6巻のうちの(二)に手を出した段階なのだが、今の勢いだと、全巻、読んじゃいそう。

 岡本綺堂については、拙稿に「岡本綺堂『江戸の思い出』あれこれ」がある。

 一部を転記する:

 富山生まれの小生だが、東京に暮らし始めて来年で25年となる。今年は人生の半分を東京で暮らしてきたことになった。今は時間の自由がなくなったが、東京にきた当初は、居住していた新宿や高輪を中心に方々を散々歩き回った。
 今は仕事柄、東京都区部を中心に車で巡っている。小生なりに東京への愛着がある。東京の地名や土地柄を車という媒介を通じてだが、感じようとしている。読む本も、次第に現代から古典へと遡るように嗜好が変わってきつつある。
(略)
 特に藤村が品川の停車場から高輪辺りへ歩く辺りは、そうだ、小生も80年代の初め、よく会社の帰り細い曲がりくねった坂道を歩いたっけと実に懐かしく感じたものだ。
 それをさらに綺堂は遡る古い東京を語ってくれるのだから、興味津々となるのも小生としては無理からぬものがある。

 拙稿を書いた当時は、東京在住だったが、今は郷里の富山に住み暮す。
 東京は遠くなりにけり、なのだが、むしろ、往古の東京ならぬ江戸の風情を通じ、富山の往古はかくばかりだったろうかと、少々、変則的な回顧という仕儀なのである。

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← 岡本綺堂 著『随筆綺堂 江戸の思い出』(2002 河出文庫 河出書房新社) 表紙に「東京名所図 駿河町雪」(小林清親)が使われている(「岡本綺堂『江戸の思い出』あれこれ」参照)。

 小生が岡本綺堂の『半七捕物帳』などを初めて読んだのは、ずっと昔のこと。
 あるいは、今頃になって数十年も昔の岡本綺堂の語りの世界の持つ、独特の幻想味溢れる感覚が蘇ってきたのだろうか。


 いつ知ったか忘れたが、「綺堂は明治5年に芝高輪に生まれ」たことも、芝高輪や白金近辺に十年弱、住んだことのある小生、島崎藤村と並び、あるいはそれ以上に遠い親戚、遠い先祖、曾爺さんのような懐かしみと親しみ(と近寄り難い畏敬の念と)を勝手に抱いている。

松岡正剛の千夜千冊『半七捕物帳』岡本綺堂」に拠るまでもなく、「設定は明治20年代末に新聞記者をしていた作者が、幕末に岡っ引をつとめていた神田の半七という老人と知りあって、順々にその手柄話を聞くという構成である。その第1話のおわりに、綺堂は半七老人のことを「彼は江戸時代に於ける隠れたシャアロック・ホームズであった」と書いて、ネタをあかし」ている。

 久しぶりに読んで、こういう形式だったことに、えっ、そうだったっけと妙な違和感を抱いた。
 そういった形式より、怪奇譚的な世界の印象が強かったようである。

 この文庫(旧版)の解説は、作家の都筑道夫だが、その中で、綺堂は「原書でシャーロック・ホームズを読んだ、というだけではない。公使館のイギリス人に、ヴィクトリア朝ロンドンの話を、聞いて育って、コナン・ドイルが生きて、書いていたときに、ホームズを読んだのである」と書いている。
 だからどうだと言われればそれまでだが、綺堂の小説には探偵小説の魂が息衝いていると感じる。そして、人間観察の目。


半七捕物帳』に限らないだろうが、その魅力は、以下にある:

(半七ら岡っ引には)そもそも逮捕状がなく、捜査を進めるには相手にさとられないようにするしかないのだし、おまけに岡っ引には、与力や同心とちがってほとんど何の権限もない。
 すべては人力であり、勘であり、推理力に頼るしかない。ようするに半七の世界は、人間が等身大でもっている能力のすべてを駆使して犯人をつきとめるという究極の人知ゲームなのである。

 科学捜査もいいが、最後の最後は人間であり、人への信頼なのではないかと、今更ながらに感じさせられる。

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→ 【堂 昌一  挿絵画集 1992】 (今なら、「■堂昌一■【堂 昌一  挿絵画集 1992】■ - Yahoo!オークション」にて、堂 昌一作品を幾つか、拡大画像で見ることができる。

 岡本綺堂の『半七捕物帳』などの小説には、物語を読むに際して一番、求める情緒・風俗・人間味があって、そこに怪異譚や怪談話めいた味付けがあったりするから、読み出すと頁を捲る手が止まらなくなるわけである。

                               (09/06/11 作)

 6月13日、『半七捕物帳(二)』を読了。(三)以降も予約しました。 (06/13 追記)

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コメント

こんにちは。ノスタルジーを感じるものって最近惹かれます。私のブログたちあげました。よろしかったらお越し下さい。コメント入れていただけると嬉しいです。(ゆびとま閉鎖してますので)
ブログ名<妖精時間>

投稿: ナナ(Crucifixion) | 2009/06/15 09:18

ナナ(Crucifixion)さん こんにちは。

来訪、コメント、ありがとう。
半年ぶり?

新たなサイトの立ち上げを教えていただき、嬉しいです:
http://expulsion909.blog68.fc2.com/

>よろしかったらお越し下さい。コメント入れていただけると嬉しいです。


こちらこそ、折に触れて来訪してくれると嬉しいです。
地味なサイトですが、また来てくださいね。

投稿: やいっち | 2009/06/15 20:59

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