ブラジル不思議・探検
小生は、リベルダージ(G.R.E.S.LIBERDADE)というサンバチームのメンバーである。といっても、加入したばかりだし、実際の活動は何もしていない。なんだかメンバーになったら安心したというのか、フカフカのソファに腰を埋めたようで、動くのも億劫になっているようである。
まあ、実際には、言い訳になるが目下、家庭の事情もあり、忙しくてメンバーとしての活動に携われないでいるのだ。
ところで、我がサンバチームは、毎年行われる浅草サンバカーニバルに今年も参加する。優勝の経験もあるし、常に上位に食い込んでいる都内でも、あるいは日本でも有力なチームの一つなのである。
浅草サンバカーニバルには、数多くのチームが参加するが、パレード行進の際には、それぞれにテーマを持っている。例えば我がチームの昨年のテーマは、「マジック」だった。シルクハットからウサギが現れるように、幻想から愛に満ちた現実が現れる、人生と言う舞台で老いも若きも人生を愉しみ夢を見る、というわけである。
さて、今年のテーマは、「不思議探検」だとのことである。噂によると、「不思議発見」などのテレビ番組名を合体させたというのだが、小生は決定に至る経緯は知らない。
さて、「不思議探検」というのは、「不思議」を「探検」するということなのか、「不思議な探検」ということなのか、それとも、「不思議」と「探検」が並立しているのか、その辺りの理解も小生は行き届いていない。
まあ、どのようなテーマ設定なりビジョンなりが構築されているのか、小生は知らないし、新人でもあるので、勝手気侭な「不思議探検」めぐりをしてみたい。
但し、サンバはなんといってもブラジルが発祥の地なのである。だから、念頭には常にブラジルがあるものとしないとならない。一つの縛りだけれど、「不思議探検」だけだと、茫漠とし過ぎて、捉えどころがないわけで、想像をめぐらす上での一つの方向性を示すもの、大枠を括るものとして受け止めるべきなのだろう。
ということで、ブラジルという国を勉強しつつ、不思議探検の旅に出てみたい。
さて、では、ブラジルにおいて不思議とか探検に関わるものというと何が考えられるのだろうか。
まずは、その前に、なんといっても地理的な観点から見ていくのが便利だし、肝要な視点なのだろうと思われる。あれだけ巨大な国なのだ。下記のサイトを参照させてもらう:
「ブラジル・アマゾンの森に人と森との明日をみる」
http://www2.odn.ne.jp/~aab27900/brasil.htm
ブラジルは国土の3分の2にあたる66.4%が森林に覆われているという。この点は、日本と同じだ。日本も国土の3分の2は森(乃至は山=森)なのである。但し、規模がまるで違う。日本の15倍もある。その森の半分ほどが熱帯多雨林地帯で、ほかに湿潤落葉林の占める割合も大きい。
上掲のサイトによると、近年の森林消失は規模も速度も増すばかりのようである。
ついで、ブラジルを考える場合、見逃せないのが、アマゾン川である。「流域を含めて4百万平方キロにも及ぶ」という。ブラジルは、このアマゾン川流域と アマゾン川の南に広がる中央高原とに大別されるという。高原とはいっても、山脈地帯もあり、標高三千メートルを越す山もある:
http://www.brasemb.or.jp/brasil/brief/land2.html
このサイトで見られるように、気候や植物分布でも特色があるのだが、また、動物に関して、「アマゾン森林には生体系の中で唯一ここでしか棲息していない生物が世界で最も多い」のであり、「アマゾン森林に何種類の生物が棲息しているか誰も知らないが、世界の全生物の15〜30%に当たる、80万〜5百万種の生物がいると科学者は推計する」というのである。
中でも、「世界最大の淡水魚と言われているピラルク」がいて、「全長2メートル、体重125キロ」に及ぶのだとか。ピラニアが生息することも知られているようだ(ピラニアも、人を襲う種類ばかりとは限らないようである)。
鉱物資源も豊富で、「ダイヤモンド、アクアマリン、トパーズ、アメジスト、トルマリーン、エメラルドなどの宝石については、世界供給量の90%がブラジル産」なのだとか。この点だけでも目がギラッと光った方も多いのではなかろうか。
さて、アマゾン川については、触れないではいられない現象がある。
一つはポロロッカである。別に食品館のポロロッカが大量発生しているという現象ではない。「ポロロッカはアマゾン川の流れと大西洋からの潮の流れがぶつかることによって発生」するもので、「この現象は新月と満月の大潮の時期に発生し、大西洋の海水が川をさかのぼります。その速度は時速16〜21Km、その轟音は何キロも先まで響きわたります。強力なエネルギーは、100トンの船を転覆させるほどになることもあ」るのだとか:
「ブラジルアマゾン・パラー州政府観光局」
もう一つは、正式な名称があるのかどうかは知らないが、二つの川の合流に伴う現象である。これは、「「黒い河・ネグロ」と「褐色の河・アマゾン」が合流する」ことで生じるもので、その合流地点では、「お互いの水が混ざり合わず、それが約2kmにわたって続いている不思議」な現象が見られるのである:
http://fmt.pobox.ne.jp/travelogue.page/brazil/bra_c04.html
ところで、ブラジルについて書かれた本は、膨大なものがあるだろう。中でも有名で、小生も学生時代に中央公論社の『世界の名著』シリーズの中の一冊として読んだ記憶のある、文化人類学者レヴィ=ストロース著の『悲しき熱帯』の舞台は、ブラジルなのである。本書についてのべた褒めの紹介が、松岡正剛氏によって為されている:
「松岡正剛の千夜千冊『悲しき熱帯』レヴィ=ストロース」
本書は、レヴィ=ストロースにとって、ブラジルを舞台にした探検旅行の記録の書なのである。四半世紀ぶりに、今度は全訳で読み直したいと感じた。こんなところで、『悲しき熱帯』と再会する契機を得るとは夢にも思わなかった。ブラジルについての本を読むのなら、まずは、最後の狩猟採集民を調査した本書からというのは、危険な誘惑になるだろうか。
さて、あまりに簡単なブラジルの不思議探検の旅だった。
けれど、規模はともかく、日本同様国土の3分の2が熱帯雨林などの森林であり、アマゾン川という世界有数の大河が流れている。森林などには鉱物資源も豊富だが、同時に未知の生き物がどれほど棲息しており(だからこそ、最後の狩猟採集民も生き延びることができたのだった)、これからの発見を待っているらしい。
が、悲しいかな、樹木の伐採が凄まじい速度で進んでいて、国土の疲弊の可能性が高まっている。ブラジル(=アマゾン)での環境破壊は、地球環境への負の影響という点で、世界の関心事であるべきだろう。
小生が、ブラジル不思議探検をテーマにパレードの構成を考えるとしたら、巨大な緑の高原と大河の青。けれど、本来なら肥沃の象徴であるはずの土壌が、実際には開発で剥き出しにされつつある大地の痛ましい黄色などをイメージするだろう。
黄色はブラジルをイメージするカラーだ。ブラジルの国旗にも黄色が使われている。その黄色はサンバの陽気さとサッカーへの情熱にもかかわらず、危機に瀕してもいる。
そして、忘れてはならないのは、悲しい歴史を背負うブラジルの人々のこと。陽気さの背後の日々の貧しい暮らし。だからこその祭りでの思いっきりの情熱の発散なのだ。ブラジルの祭り(カーニバル)は、まさに年に一度だからこそ、ありったけの情熱を傾けるという、祭り本来の性格を帯びているのだろう。
(04/02/25 記)
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