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2009/06/06

アトキンス著『万物を駆動する四つの法則』に撃沈す

  ピーター・アトキンス著の『万物を駆動する四つの法則―科学の基本、熱力学を究める』(斉藤 隆央【訳】 早川書房)を読んだ。

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 小生には、とんでもなく難物の本だった。
 この『万物を駆動する四つの法則』なる本には、「科学の基本、熱力学を究める」といった副題がちゃんと付してある。
 まさに熱力学の本である。
 出版社側の説明にあるように、「名作『ガリレオの指』『エントロピーと秩序』の名匠アトキンスが贈る、珠玉のポピュラー・サイエンス」のはずなのだった。
 小生は、両者共に読んでいて、『エントロピーと秩序』には手こずった記憶がかすかにあるが、特に『ガリレオの指』は、じっくり味わえた、読み応えのある本で、近い将来、再読を期している本である。ポピュラー・サイエンスの本としては、実に傑作だと思う

 そのつもりで予約したのだが。

 そう、ピーター・アトキンスの名を信用して、図書館の新入荷本のリストからネット予約したのだった。
 図書館で手に取って中味を見たら、あるいは躊躇ったはずである。

 素養のない小生、「万物を駆動する四つの法則」ということで、ただ「四つ」だけに反応し、4つの力、即ち、「重力、電磁力、強い力、弱い力」を連想した。
力には良く知られている重力や電磁力、原子核をまとめている強い力、ほかに陽子を中性子に変える等の作用をする弱い力の4種類があ」るという、その四つの力である。

 本書は単行本(新刊)だが、「174p / 19cm / B6判」と短いもので、そんなに数式があるわけでもなく、これだけの厚みの本で、熱力学の視点から、4つの力 (重力、電磁力、強い力、弱い力)を考えていくなんて、そんなに深い議論になるはずもなく、パンフレット的に気楽に読めるものと思い込んだ。
 勝手な思い込みに過ぎなかった。
 繰り替えすが、本書はまさに熱力学の本なのである!

 熱力学の本を読むには動機があった。
 過日、読了したブライアン・グリーン著の『宇宙を織りなすもの』(草思社)の上巻で、エントロピーの概念の深さ面白さを痛感させられたので、もう少し、エントロピーや熱力学のことを知りたいと思っていたのだ。
 そこへ、この新刊、しかも、名匠アトキンスの著となると、もう、誂えたようなものではないか!

 本書で言う、四つの法則とは、熱力学第一法則(エネルギー保存則)、熱力学第二法則 、熱力学第三法則
に加えるに、熱力学第零法則
の四つである。

 本書の目次を示しておく:

1 第0法則 温度の概念(「系」とそのふたつの特性;「平衡」という概念と温度 ほか)
2 第1法則 エネルギーの保存(エネルギーと仕事;内部エネルギー ほか)
3 第2法則 エントロピーは増大する(熱力学第2法則の重要性;第2法則のふたつの表現 ほか)
4 自由エネルギー どれだけ仕事に使えるか(仕事にかんする熱力学的特性はないのか?;ヘルムホルツ・エネルギー ほか)
5 第3法則 ゼロには到達できない(第3法則の意義;有限のはしごを使っても、無限には到達できない ほか)

 小生は、熱力学第零法則があることを初めて知った。
 熱力学第零法則こそが、「温度が一意に定まることを示している」わけで、本書第一章のテーマはこの法則なのだが、ここで既に躓いてしまった。
 ハードルの高さを思い知るべきだった。

 本書での一番の眼目は、第3法則で、「第3法則は、温度が究極の寒さである絶対零度になることを阻む障壁となるが、そのゼロより下に、奇妙だが実現可能な鏡像の世界があること」を示している。
 この一番、興味深いはずの記述が特に小生には難しく、字面を眺めるだけに終わった。

 本文の中でも、訳者あとがきでも、「熱力学第2法則を知らないのは、シェイクスピアの作品を読んだことがないようなものだ」という、C・P・スノー(C.P.Snow)の言葉が掲げられている。
 負けじと勇んで読んだのだが、あっさり跳ね返されてしまった。
 
 たとえば、「熱力学~統計力学を学んでいる学生が本書のような副読本を読めばパッと視界が広がるかもしれません。「大学教養時代に熱力学を習ったけれども、いまいちスッキリしなかったなぁ」という方にとっても丁度良い内容レベル&分量でしょう」とあったりすると、がっかりというか、口惜しい思いがする。

 さらに、「本書を読み通すと、熱力学に関するアトキンス先生の"思索の深さ"を味わうことができます。具体的な数値で捉えようという姿勢が所々で窺える処、アナロジーも援用して理解を深めようとする処が良いです」とあると、高級ワインを牛乳か何かを混ぜて無理にも飲み乾した小生には、そんなふうに楽しめる方が羨ましく、嫉妬しちゃう(いずれも、アマゾンの同書カスタマーレビューより転記)。

                              (09/06/03 作)

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