間もなく西牧 徹 展「月と雷雲1865」
見事な鉛筆画の世界を現出されている西牧 徹氏(以下、敬愛の念を籠め、敬称は略させていただきます)の新たな展覧会が間もなく始まる:
「西牧 徹 展「月と雷雲1865」」
場所:南青山の画廊「ラトゥリエ( L'atelier )」
日付:2009年5月8日(金)~6月6日(土)
→ 西牧 徹「迎撃」(2008 41×20cm) (画像は、「西牧徹-黒戯画世界 Blacken Caricature-Toru Nishimaki」より) 以下、幾つかの作品を掲載するが、展覧会でどういった作品が展示されるのか、小生は知らない。
氏は、「2003年に自らの作品を「黒戯画」と名づけ」るが、「この「黒戯画」は“艶画”と“福画”に大別され」る。
一つは、「性幻想に基づくもの」であり、今ひとつは、「キエムクーとその仲間たちの日常と冒険を描いたもの」である。
但し、同氏によると、「ユートピア絵画という点で同一線上の世界となっている」という。
← 西牧 徹「鯨の機械と深海の熊」(2006/CG) (画像は、「西牧徹-黒戯画世界 Blacken Caricature-Toru Nishimaki」より)
描かれ表わされる世界は異質のようでいて、実際は同根であり、メビウスの帯のように、一つの世界を愛で楽しんで巡っているうちに、気が付くと別の世界に迷い込んでいる、ということなのか。
あるいは、性的幻想に浸ったその瞬間、それは幼い、いたいけな子の夢想の世界だったことに気づかされ、一方、無邪気でユーモラスで親しげな世界に戯れているはずが、実はそれはやや危ない世界への誘いそのものであることを示しているということか。
邪気のない子供の夢想ほどに欲望と本能に間近な道はない。幼子の幻想と夢は、真っ直ぐすぎて、あっさり、大人の良識を突き抜ける。
今度の展覧会では、紹介されるのは、キエムクーワールドだけだという。
→ 西牧 徹「ブータンの砦へ」(2004) (画像は、「西牧徹-黒戯画世界 Blacken Caricature-Toru Nishimaki」より) 画家に限らず芸術家の力量と才能(潜在性)は、技量を高め視野を広めるのは勿論だとして、先ずは己の美意識と本能の呼び声にどれだけ忠実かに懸かっていると信じる。世間体とか良識を言い訳にするようになったら、表現者としての生命は終わりではなかろうか。西牧は、美と知(痴)と快の宮殿への階(きざはし)を一人、登っていきつつある。キエムクーは、恐らくは、あくまで寂しがりやの彼を見送る守り神なのではなかろうか。
さて、小生は、既に「西牧徹…ラブドール幻想」(2008/06/12)や「西牧徹の黒戯画的ユートピアとロリータ文化」(2008/08/27)にて西牧の「黒戯画」ワールドの、ほんの表層だけは触れてみた。
それこそソフトビニールの人形を撫でるように優しく、かつ、中(あた)り障りなく。
そう、真っ正直に眺め入っていると、迷い道から抜け出られなくなるかも。
← 西牧 徹「蒸気船」(2009 60×27.5cm) 新作! この作品は、「黒戯画」ワールドのうちの「性幻想に基づくもの」なのか、それとも「キエムクー」ワールドのものなのか…。あるいは、両方の世界が侵犯し合っている?
西牧の「黒戯画」ワールドをもっとちゃんと知りたい方は、例えば、西牧の友人が紹介する、「画家 西牧徹の世界」へ。
そして、当然ながら、同氏のホームページへ:
「西牧徹-黒戯画世界 Blacken Caricature-Toru Nishimaki」
しかし、本当に知りたいなら、改めて告知するが、やはり生の作品を目の当たりにするのがいい:
「西牧 徹 展「月と雷雲1865」」
上記したように、「今回はエロスは無しでクマのキエムクーだけの展覧会」のようだ。
いきなり性幻想の世界では眼が回る、という方には、今回のクマのキエムクーだけの展覧会は、絶好の機会かもしれない。
西牧ワールドへ、まずは軟着陸できるかもしれない!
その後、どう深入りしようと、勝手次第であろう。
→ 『Dictionnaire de l'amour et du plaisir au Japon』 「仏人ジャーナリストAgnes Giardによる、日本のエロス文化の大著」 西牧 徹の作品が所収となっている。
初日8日(金)夕方よりオープニングパーティーがあるとか。
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コメント
大変ご無沙汰してます。
憶えて頂いているとありがたいのですが
昨年一度ブログ閉鎖してしまいまして
最近桜の花の写真で復活しました
せっかく撮った昨年の浅草の写真の再アップ始めて
ふと思い出したやいっちさんのお名前
再開の連絡しないといけないなあと思い
久々コメントさせて頂いてます
よろしかったら又遊びに来て下さい
http://blogs.yahoo.co.jp/shashinzukidesu
投稿: 写真好きです | 2009/04/27 22:54
写真好きですさん、久しぶり!
今年も連休、そして梅雨を越えたらサンバ。
いい写真を撮ろうと思うと大変なので、デジカメはいつもポケットの中に常備して、いいと思ったら、即、シャッターを切る。
日常の何気ない風景や風物も街並みも、いろんなところにシャッターチャンスがあると思ってます。
とにかく、楽しみつつ、淡々とネットも実生活も続けられたらって願ってます。
せっかく縁あって知り合えたのに、擦れ違うように小生は離京しましたが、縁は異なもの乙なもの、これからも、宜しく!
投稿: やいっち | 2009/04/28 00:38