Shuji, Takashi 感じたことを感じたままに
「美に焦がれ醜に嵌って足掻く日々」などで、大雑把にはアウトサイダー・アーティスト、幾分、狭めると、(時に)アール・ブリュット(Art Brut)と呼称される画家達を採り上げたことがある。
← 「Grue, s.d. pastel sur carton, 54 x 37.6 cm. 」 (画像は、「0utsider Art Japan」より)
ジャンル的には、分類しようがない、マージナルマンというか、凡人で狭隘な常識にしがみ付いているものには窺い知れない世界に分け入って、戻らなくなってしまっている人たち。
不幸なのか、あるいはその世界の中で幸せの絶頂か恍惚感かを味わっているのか、貧弱な想像力では考えも付かない人たち。
今日は、そういう小生のような凝り固まった常識の殻をあっさりとぶち破ってしまっている一人、Shuji, Takashi (1974生)を採り上げる。
見つけたのは、例によって、「Collection de l'Art Brut」においてである。
といっても、ネットでは(も)彼についての情報は乏しい。
あるいは、あるのかもしれないが、小生の腕では見出せない。
→ 「Carafes et cruches, 15 octobre 2004. pastel sur carton, 40.9 x 73.4 cm. 」 (画像は、「Collection de l'Art Brut」より)
「0utsider Art Japan Takashi Shuji」の「Biography」によると:
He often sees a motif. However he does not obtain this instinct through art education, but only through his unimpaired personal physical style.
There is no a rule by which he follows for sketching.
He pictures a line from a "plant" to create a feeling. He creates this production slowly by depicting what to him is a real plant fusing together. He enjoys the "quiet freedom" to the full.
← 「Coton et filet, 21 avril 2006. pastel sur carton, 54.5 x 79cm.」 (画像は、「Collection de l'Art Brut」より)
彼の絵は、小生には全く未知で、初めて見るはずなのに、どこかで既に見た感覚がある。
というより、見たことがある!
版画作品だからだろうか、どこか影絵のようなシンプルな雰囲気がある。
見ているもの、見たいもの、心の視野に入っているもの、それらだけを描く。彼にとっての夾雑物は一切、目に入らない。
その意味での雑音のない、穏やかな世界がそこには確かにある。
遠いの日に、何処かの海辺で過ごした、頬を撫でる潮風と、自転車と、椰子の木と、形のいい花瓶と、一羽の鳥とが完璧にそこにある。
愛惜せずには居られない世界。
→ 「Scies et vases, marteaux, tournevis et trains, s.d. pastel sur carton, 54 x 76.8 cm. 」 (画像は、「Collection de l'Art Brut」より)
モノの質感とか肌触りとか温もりとかが、あっさり捨て去られている。
シルエットばかりが彼の心の目には映っている…。
にもかかわらず、懐かしいような、人恋しいような、でも、瞼の裏でしか会えないし、会いたくないような、不思議な、しかし、心地いい世界が彼の作品には、ある。
こんなことができるのは、版画だから?
違う!
ネット検索してみたら、下記のサイトが浮上してきた:
「Liaison日記 TAKASHI SHUJI CALENDAR 2009」
← 「 ? 」 (画像は、「0utsider Art Japan」より)
「2008年11月30日」の日記で、「あとりえすずかけの舛次 崇さんの版画カレンダーが予約開始になりました。非常に少量生産のため、ご予約のみの販売となっています」云々と書いてある(「TAKASHI SHUJI 」の日本語表記は、(人違いでないならば)「舛次 崇」だということのようだ)。
カレンダーとなって昨年末に販売されている!
版画カレンダーの画像も載っている!
…ということは、小生が知らないだけで、知っている人は知っていて、商業的にも一定の位置を得ているということ?
アウトサイダー・アーティストでも、アール・ブリュット(Art Brut)の画家でもないってこと?
そんなことはどうでもいいか。
→ 「 ? 」 (画像は、「0utsider Art Japan」より)
「舛次 崇」でネット検索したら、結構、情報があるらしいと分かった。
例えば、「SAVOIR VIVRE - GALLERY - 舛次 崇 展/Takashi Shuuji 絵画」が詳しい。
年譜もだが、作品画像も数多く載せてくれている。
この中の文章を読むと、小生の感じ方がまるでピント外れだと思い知らされる:
目の前に置かれた植物の鉢や、日常品を見て描くようになった。しかし彼は、作品全体のバランスやムーブメントなどという、一般的な絵画教育とは無縁の方法で描いてゆく。彼は対象をじっと見てはいるが、その形をトレースしているのではなく、どうやらそのモチーフから受ける「感じ」を直感的に受信して描いているようだ。

← 「 ? 」(画像は、「SAVOIR VIVRE - GALLERY - 舛次 崇 展/Takashi Shuuji 絵画」より)
「SAVOIR VIVRE - GALLERY - 舛次 崇 展/Takashi Shuuji 絵画」での、彼の描く姿を見ての感想を是非、通読願いたい。
「作家紹介 舛次 崇」もいい!
この頁でも、「彼は、植物や花を写生しているようで、実は、対象物から受ける「感じ」を描いている。小さな植木鉢から窮屈そうにはみ出している植物の生命力を、直感的に表現してしまう。その感性は、あまりにも無防備でおおらかなので、見ている方が、恥ずかしくなってしまうほどだ」などと書いてある。
「あまりにも無防備でおおらか」!
そうだ、これを言いたかったのだ。
実に高名な方なのに、やたらと遠回りしてしまったが、まあ、そんなことはいい。
一人の大切な作家と出会えたのだし。
人の感じる生で、直截な世界をそのままに提示できるって、簡単なようで、難しい。
そして、難しいようで、実は簡単なのかもしれない、なんてほんの一瞬でも思わせてくれるだけでも、稀有な存在であることは確かだと思う。
(独り言:しつこくネット検索してよかった! そうでないと、「Shuji, Takashi」が「舛次 崇」という名の人気のある作家だと分からずに終わっていたはず!)
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コメント
こんばんはヽ(´▽`)/やいっちさん
よくこんな素敵な絵を見つけて下さいました。すごいな。こういう感じ好きですね
投稿: ピッピ | 2009/02/07 22:59
ピッピ さん
絵は描くほうもだけど、お気に入りになるかどうかも、感性だし、フィーリング。
お気に召す画家(の作品)だったりすると、日記を書いたものとしても嬉しいですね。
投稿: やいっち | 2009/02/08 01:06
国見くん
気味が悪いことは止めたまえ。
女の子の尻追っかけから、性奴隷、殺し、バラバラへと性癖が発展しないように祈る。
投稿: | 2009/02/20 17:18
あ、どこかで見たと思ったらやっぱり。
それ、まさにそのカレンダー、うちにあります。国見さん、残念。もう3月なので、さすがに入手は困難と思われ。
西宮の人ですね~、不肖青梗菜、及ばずながら、陰ながら、応援している作家のひとりです。
ほんと、なにかを言いたくなって、それがなかなか出てこない絵ばかりです。
そしてたぶん、そんなこと思いながら作ってないから。まったく、モノを作ってるやつらには敵わない。
投稿: 青梗菜 | 2009/03/03 01:22
名無しさん、何を言うにしても書くにしても根拠のあることを書いたほうがいいと尾もますよ。
碌でもないコメントですが、証拠物件として記録に止めておきます。
人のことをとやかくいう前に自分の人間性を反省されたほうがいいと思います。
投稿: やいっち | 2009/03/03 14:07
青梗菜さん
Shuji, Takashi さん(の絵)を好きだという人は案外と多いことにびっくりしてます。
確かに好感の持てる世界です。
投稿: やいっち | 2009/03/03 14:08