小山哲生…耽醜の美は牙を研いで夜を待つ
「ヴァニラハ興奮性ノ植物デアル ――サド侯爵――」をコンセプトにする(?)「vanilla-gallery」にて、小山哲生という個性的な画家を知った。
否、画家のみならず、人形作家、パフォーマーなどとして多彩な活動をされている。
いきなり、「耽醜の美 ~Last Dolls」に示すような画が目に飛び込んできて、さすがに東京までは足を運べないが、せめてメモ書きくらいはしておきたいと思ったのである。
← 「耽醜の美 ~Last Dolls」展より。この作品、ギュスターヴ・モローの「サロメ」などを意識しているんだろうな。
「耽醜の美 ~Last Dolls」なる頁を覗いてみれば分かるが、絵画だけではなく、人形などオブジェでも独自の個性的な世界を切り拓いている。
「耽醜の美」は誰の命名なのか分からない。
小山哲生自身は、「自分の表現行為を「ビタミン・アート」と名付け」ているとか。
推測でしかないが、70年代80年代でのインド放浪が彼の営為の上での転機になるなど、彼の世界をかなりの程度に決定したような感を受ける。
→ 「耽醜の美 ~Last Dolls」ポスター。画像は、「ヴァニラで小山哲生展 - 銀座新聞ニュース」より(既に終わっている)。
ネットでは彼に付いての情報は必ずしも彼に相応しいほどには豊富とは言えない。
そんな中、「ヴァニラで小山哲生展 - 銀座新聞ニュース」が参考になる。
一部、転記させてもらう:
小山哲生さんは長野県生まれ、1960年代は自分の表現行為を「ビタミン・アート」と名付け、儀式やハプニングを通して、テレビ、雑誌にビタミン・アートを紹介し、新宿や銀座の街頭でショー「太陽まんだら」シリーズを行い、銀座東芝ホールで牛と蛇と人の共演によるビタミン・アートリサイタルを開いた。1970年代はインドを放浪し、「花とビートルズとお釈迦様」のテーマで個展を開催し、人形の制作を始め、1980年代もインド放浪し、風景画を描き始め、ブロードウェイ新人賞でグランプリを受賞、個展「神話深層の飛行」を開催した。
1990年代は、銀座三真堂ギャラリーで立体拡大のオブジェを発表し、公募展にて東京都知事賞、内閣総理大臣賞を受賞、2005年には渋谷で個展「この世でいちばん真っ赤なりんご」を開催、2006年に人人展、小さな人人展、地獄太夫展、幽霊展などを開催、2007年には「少女恋の美学」、「人人展」、「受胎告知展」などの個展を開いた。
← 「Fantastic Beast展」に出品された小山哲生の作品。画像は、「L'art fantastique-幻想芸術 Fantastic Beast展に寄せて ~「怪物」の居る場所~」より。このブログでは、小山哲生とレオ澤鬼とが対比され、紹介されている。「小山哲生の作品の女性たちは、宝石の輝きに閉じ込められた、まさに幽閉された女性たちである。幽閉されたそれは、時間を経ることなく、ただひたすらに一瞬の美を放つ。時間を超えたそれもまた「怪物」なのであろう」。確かに、絵画(平面作品)を見ていると、そうなのかもと思ってしまいそうだが、「耽醜の美 ~Last Dolls」で、オブジェ作品などを見てしまうと、絵画に表現される女性像では一時的に呪力が封印されているだけで、その魔性は牙を研いで咬みつく瞬間を虎視眈々と待ち受けていることを思い知るわけである。
「Gallery-58*blog 伝説のハプナー・小山哲生氏 ! ! ! ! !」や「佐熊桂一郎、小山哲生、生田耕作 - butoh-artの日記」などにて、同氏の写真を見ることができる。
冒頭に、「パフォーマーなどとして多彩な活動をされている」と書いた。
どうやら、小山哲生は知る人たちには伝説のパフォーマーであるらしい。
例えば、「泡沫傑人列伝」[PDF]によると、下記のようなパフォーマンスだという:
1-1 ニンジン、キャベツ、果物などを犬のように這いつくばってパクパク食べていく。
(60年代、民放の昼のワイドショーに出演。最終的には卑猥?な行為を行いTV局に抗議の電話が殺到する。)
1-2 上野の本牧亭で「儀式集団・ゼロ次元」を中心に行われた大ハプニング儀式大会にて。
(バケツ一杯のリンゴを持ち舞台に登場。そのリンゴの上におもむろにう○こをし観客に投げつける。 おかげで公演は中止。多大な弁償金を払わされたと言う。)
1-3 ある大手電機メーカーのホールにて
(子牛を連れて舞台に登場。おもむろにナイフを取り出し子牛を刺しまくる。舞台は血だらけ。)
→ 秋山祐徳太子著『泡沫桀人列伝 知られざる超前衛』(二玄社) 画像は、「泡沫桀人列伝 知られざる超前衛 [本] セブンアンドワイ ヤフー店 - Yahoo!ショッピング」より。傑出した個性派の前衛家の一人として、「ビタミン・アート“すべてが栄養”-小山哲生氏の巻」なる記事で紹介されている(らしい。小生は未読 「中年とオブジェ~魅惑のモノを求めて~秋山祐徳太子泡沫を語る - livedoor Blog(ブログ)」参照)。
「CAHIER HERMETIQUE Erosについて」を覗くと、小山氏の馴染みの店での酒宴、そして議論に熱中するエピソードなどが書いてあり、興味深い。
「アトリエサード publication 既刊bTH No.33「ネオ・ゴシック・ヴィジョン」-b」
「CAHIER HERMETIQUE Erosについて」
(08/12/20作)
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コメント
文中のサロメでリンクありがとうございました。トラックバックも頂戴してうれしいです。しばらくブログを更新していなかったため、ご挨拶がおくれて申し訳ございません。
耽醜の美、背中に背負う刺青のような美に感じました。人の目に触れることが少ないほど、その衝撃が大きく感じます。
迫力と浪漫が混在している素敵な記事です。
投稿: kafka | 2009/05/01 17:40
kafkaさん
TBだけして挨拶もせず、失礼しました。
TBも多く、注目されているブログなのですね。
小山哲生の世界は、耽醜の美というより、彼なりの耽美そのものですね。
氷柱の中に封じ込められた、彼にとっての美の極みなのでしょう。
彼の脳裏の奥に刺青のように刻み込まれた美でもあるのでしょうか。
投稿: やいっち | 2009/05/01 20:55