「古川通泰のこと」再掲
「富山を描いた絵画の数々(1)」の中で、古川通泰(ふるかわみちやす) の作品「祭り」の画像を掲げ、さらに、「小生には、「古川通泰のこと」と題した小文がある。後日、ブログにアップしたい」と書いている。
延び延びになってしまったが、今日、多少、追記したり、幾分の訂正注記を加えた上で本ブログにアップする。
=== === (以下、旧稿です)=== ===
「古川通泰のこと」
『とやま裏方反省記』(奥野達夫編著、柏書房刊)を捲っていたら、「きつね火まつりと七匹のきつね」と題された一文が目を引いた。というより、「古川通泰氏の絵を飾った、町の中心部を「きつね火まつり」の行列が進む。この夜、町が立体ギャラリーに化ける」とキャプションの入った写真に目が行ったというべきかもしれない。
→ 『とやま裏方反省記』(奥野達夫編著、柏書房刊)
きつねを想わせる化粧を施す様子や、化粧し終え、実際に町中を花嫁・花婿らの一行が歩く様子を写した写真が掲載されている。どうやら、平成二年から始められた「きつね火まつり」が、「飛騨古川・秋の風物詩」として、定着してきたという内容の記事のようである。
このイベントにも、アイデア作りなどの上で、福光美術館長であり、デザインや広告の世界でも有名な奥野達夫氏が関わっているようだ。
ここで小生の気を一番、惹いたのは、古川通泰(ふるかわみちやす)氏の絵という一点。
小生、絵のことになると、好奇心が湧く。早く、「1940年 富山県高岡市生まれ」の古川通泰氏の絵を見たいと、早速、ネット検索。
← 古川通泰「村の祭り」 (画像は、「アートシティ「展」展覧会訪問」より。)
幸い、彼を扱うサイトをヒットした:
http://www.success21.com/furukawa/(← 既に無効になっていた。代わりに、今回調べてみたら、「古川通泰のアトリエ日記」を発見。但し、ほとんど放置状態のようだ。せっかくのサイトを荒れ放題にするなんて、勿体無いねー。(08/10/22記) )
このサイトを見ると、古川通泰氏と古川歩(あゆみ)氏の連名のサイトとなっている。どうやら、二人は父子のようである。父・古川通泰氏は絵画(油彩)、古川歩(あゆみ)氏は、陶作品で活躍されているらしい。
まず、古川通泰氏は絵画(屏風)作品を見てみる:
http://www.success21.com/furukawa/michiyasu/work/michiyasu1.htm
あるいは、油彩作品を:
http://www.success21.com/furukawa/michiyasu/work/michiyasu2.htm
なんだか、強烈な個性を感じる。興味が湧いたので、彼等のことをネット上にて調べてみることにした。
二人は、富山県八尾町の山奥にある旧桐谷小学校をアトリエ(歩は校舎、通泰は講堂)にして創作活動をされている:
http://www.success21.com/furukawa/atolie/atolie.htm (← やはり、無効になっていた。(08/10/22記))
小生は、二人の名前を初めて知ったほどで、何も知らない。とりあえず、どのように紹介されているかをネットで調べてみた。
「アートシティ「展」展覧会訪問」によると、雪国北陸の風土性豊かな懐かしい世界が彼の作品の世界を現すキーワードのようだ。
また、童画風のもの、装飾画、半抽象画と、手法もさまざまのようである。
さらに、同サイトによると、「古川の絵画世界のもう一つの魅力は、太陽や山、木々を図案化し、赤,青、金色などの明快な色彩で構成した作品。大胆華麗さを集大成の形で、屏風2点を披露した。別に、数点のモノクロに近い半抽象画は、北陸の暗い風土を思わせる作者の心象風景をかいま見せる」とある。
→ 古川通泰「暦」(?) (画像は、「ギャラリー七つ森/ギャラリー作品 » 暦 古川通泰」より。)
古川歩氏の「Clay World」を:
http://www.success21.com/furukawa/ayumi/work/ayumi3.htm
http://www.success21.com/furukawa/ayumi/work/ayumi1.htm
「アートシティ「展」展覧会訪問」によると、古川歩氏の作品に付された、「織部風の緑の色彩と、力感のある独特の造形が魅力的で、「釉薬は"うなぎ屋のタレ"みたいなもの、基本となるベースを造って、それに色、鉱物を足していく」。その"うなぎ屋のタレ" がミソで、植物の灰やら何やら、企業秘密も少々」というコメントが面白い。
(上掲のサイトは無効となっている。その代わり、「古川 歩 お山の陶芸家日記」を発見。(08/10/22記))
古川通泰氏の世界は、どうやら、郷土色というか風土性が濃厚の世界のようだ。解像度の低いパソコン画面での印象しか語れないが、油彩作品についていうと、画面からは、例えば、古川歩氏の陶作品に油絵具を塗り、画布に転写したような、あるザラザラ感、手触り感を覚える。
それは、古川氏が創作活動をされている、おわら風の盆で有名な越中八尾の風土が土台にあるからなのだろうか。実際には、富山県は高岡市で生まれた方なのだが。生まれ育った町(村?)の風土などを知りたいものだ。
例えば、古川通泰氏の「桐谷日記Ⅱ」などを見ると、小生の好きな「人質」シリーズで有名なアンフォルメルの画家ジャン・フォートリエ(1898~1964)をすぐさま連想した:
http://kmma.jp/collect/artists/fautrier_j.html(← やはり、無効になっていた。(08/10/22記))
あるいは、大袈裟かもしれないが、ジャン・デュビュッフェを想ったりもする。恐らく、こんな連想を聞くと、もっと地に足の着いた作風なのだと言って、古川通泰氏自身は笑うかもしれない。
← 古川通泰『里の祭り』 (73×61cm 油彩) (画像は、「民藝サトウ GALLERY觀」より。)
「村の祭りⅠ」を見れば、昔日の村祭りの思い出が、何十年も経て、不意に或る日夢の中に蘇ってしまったような、闇の濃さと夕焼けの紅さと、ぽっかり浮かぶ月影の非現実感とが印象的である。脳裏に刻まれた世界が時間的隔たりなどを無視して直截に今、現出したかのようだ。
「村の祭りⅡ」も鮮烈な世界だが、それでも、<理解>は可能かもしれない。
しかし、「僕の里」や「里」「僕の里Ⅱ」となると、一体、どういう世界なのだろう。グローバリゼーションとか、インターナショナルなんて言葉が軽く感じられてしまう土臭さがある。昭和が遠くなり、21世紀の今日に我々があることを忘れさせてしまう。江戸や平安の時代も一気に飛んで、縄文時代の思い出が陶器の肌触りの感覚もさながらに蘇ったかのようである。
村の民の生きていた日々が時の経過に風化することなく生き延びる。そのためには溶けることのない深い雪に降り込められ、凍て付く大地に凍え、思い出の命が一度は封印される必要があった。そうして初めて思い出は陶器の肌と見紛うような永遠へと固着される。
土を裸足で踏む懐かしい感覚。
北陸の暗い風土というのは、見当違いも甚だしい。
北国の風土に沁みる風景とは、時の風化に擦り切れることのない日の光への意志に裏打ちされた世界なのではなかろうか。人が集い合い、寄り添い合う、そんな懐かしい世界が現出している永遠の今の掛け替えのなさを愛でる意志に満ちた世界なのではないか。
そんな思いに駆られてしまう作品世界なのだった。
(04/05/20 記)
=== === === (以上が旧稿) === ===
→ 古川通泰「祭り」(97×130cm) (画像は、「洋画分野所蔵作品紹介」より。) 画像を見ると、キツネが。古川通泰がデザインしたお酒のラベルもある:「地酒 姫の井 純米吟醸酒「狐の夜祭り」誕生です!」 そのラベルには、「狐の夜祭り」と表記してある。
[本稿は、事情があってホームページの記事「古川通泰のこと」を急遽ブログに載せたもの。事情といっても、「富山の風景を描いた絵の数々といった記事を近々アップするので、タイミングを合わせ、関連する記事を更新してみたのである。表記やリンクは原則、執筆当時のままだが、リンクなどは多くは無効(削除)となっていた。僅か四年半ほど前の記事なのだが、時代の変化は激しい。画像は、ブログにアップするに際し、ネットで物色して掲げたもの。下記は、今回、ブログに書き直す際に、見つけた関連情報。]:
← 「古川通泰・古川歩展」のポスター(?) (画像は、「アートなひととき。:株式会社トレンズ」より。)
「つっくんの独り言 ふきのとうランチと古川通泰展」
「北日本新聞社 富山のニュース 富山の風土、屏風絵で ベルリン、古川通泰さん個展開幕」(2007年10月28日):
画家、古川通泰さん(富山)の個展「古川通泰ベルリン展―北陸から欧州への風」が二十六日夜(日本時間二十七日未明)、ドイツ・ベルリンのベルリン日独センターで開幕した。桜や富山の自然を描いた屏風(びょうぶ)絵を一堂に並べ、ドイツの文化関係者らの注目を集めている。個展は一月十一日まで。同センターと北日本新聞社主催。古川さんは富山市八尾町桐谷の山あいにアトリエを構え、里山の自然や土着の信仰などからイメージを膨らませた独自の作風で知られる。同センターで個展を開くのは平成七年以来、二回目。今回は里山など富山の風土を題材にした屏風絵二十六点を展示した。
(08/10/22記)
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