売薬版画・紙風船を懐かしむ(前篇)
何かの折に偶然、「ショット 売薬版画 紙ふうせん 富山の薬売り」なるサイトに出合った。
← 「売薬版画」 (画像は、「売薬版画・紙風船」より。) 「ショット 売薬版画 紙ふうせん 富山の薬売り」にてこの版画の存在を知った。
小生の親戚にも売薬さんを稼業にされている方がいたこともあってか、小生には売薬さんや、そのオマケとしての紙風船などは懐かしい。
折り畳まれたそれを空気を吹き込みつつ立方体に整え、お手玉などして遊んだ記憶がある。
パン! パン! という音が今でも耳元で鳴るような気さえする。
でも、小生が記憶する限りでは、「売薬版画」のことは知らない。
一体、いつ頃までこうした版画が配られていたものなのか。
そもそも売薬版画って、どんなもの?
「売薬版画」は、「人と薬のあゆみ-売薬版画・土産」(ホームページ:「くすりの博物館」)によると、「配置売薬の行商人がお客様のもとを訪れるときには、売薬版画とよばれる小さな版画や紙風船をお土産として持参し、大変喜ばれたものです」とか。
→ 「忠臣蔵七段目 祇園一力の場」(国美画 江戸後期 22x16cm K01214:目で見るくすりの博物誌 P.52) (画像・情報は、「人と薬のあゆみ-売薬版画・土産」より。)
「売薬版画・紙風船」によると、「情報の配達人」なる項に下記のようにある:
他領で商売していくという事は当時では富山売薬の薬売り特有の事でした、さらに交通網・情報網の整っていない時代の中、地域外の情報の入手は極めて困難だったのです。
そこで全国を回る薬売りの人々は各地の特産品などを顧客におまけとして持参するようになりました、 特に江戸時代後期に流行になりその中でも喜ばれた物が売薬版画でした、
庶民からすれば領内からでる事はまれで娯楽のない中、こういったおまけは全国の情報を知らせてくれる物として非常に喜ばれ、また薬売りの話なども情報の担い手となっていたようです。
← 「御姫様花見」(松浦守義画 江戸後期 15.5x22cm K01218:目で見るくすりの博物誌 P.53)
他藩での情報収集の困難さは、時に辛酸を舐めるものでもあった。
そのことは既に、その一端に過ぎないが、「「富山の薬売りと薩摩藩」の周辺」にて多少のことを書いている。
詳しくは、下記を参照:
「富山商工会議所 会報「商工とやま」 平成19年5月号 特集 薬都・とやま 300年以上の歴史と価値を再発見しよう! 其の一 富山売薬のはじまりと発展」
→ 「面子づくし」(松浦守義画 江戸後期 22x16cm K01349:目で見るくすりの博物誌 P.53) (画像・情報は、「人と薬のあゆみ-売薬版画・土産」より。)
「富山の売薬 - Wikipedia」は、ちょっと記述が寂しい。
下記資料館も興味のある場所。「本館部分では、常設展示として、富山売薬の歴史年表、柳行李など行商の用具、手作業で薬をつくっていたときの製薬用具、紙風船などのみやげ品ほか、富山売薬についての資料があります」とのこと:
「売薬資料館」
← 「鬼一法眼館之段」(明治 21x11cm K01054:目で見るくすりの博物誌 P.53) (画像・情報は、「人と薬のあゆみ-売薬版画・土産」より。)
「越中売薬」なる頁も参考になる。
「越中売薬の中枢をなす富山売薬の起源については,(中略)備前国の医師萬代浄閑の創製で,富山2代藩主前田正甫が元禄年間(1688~1704)に諸国へ売り広める契機をつくったと考えられていた」が、「越中の売薬は,反魂丹以前に越中立山の御師たちが諸国壇那場を回って立山信仰宣布のかたわら熊胆(くまのい)・黄蓮(おうれん)などを販売した「立山売薬」や,越中婦負郡の修験者たちが始めた「修験売薬」に起源をもつと考えられる」という。
(続く)
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