川村清雄…洋画の洗礼の果てに(前篇)
ひょんなことから川村清雄(かわむらきよお 1852-1934)という明治の(忘れられていた…が最近、再評価されつつある)画家の存在を知った。
「川村清雄《ヴェネツィア風景》コレクション名品選」によると、「嘉永5年東京に生まれ、幼少期から日本画を学び、16歳頃から3年間川上冬崖について西洋画法を学んだ川村清雄は、明治3年徳川宗家の給費留学生として政治法律研究のため渡米するが、まもなく本格的な絵画研究に専念、翌々年パリへ、次いでイタリアに赴き、ヴェネツィアの美術学校に入る」とある。
↑ 川村清雄「なた豆に雀」大正末~昭和初期 板 漆地塗 油彩 36.3×84.5cm) (画像は、「那珂川町馬頭広重美術館」より。)
ひょんなことから、というのは、「五姓田義松」のことをあれこれ調べている最中に、「日本近代洋画への道 ―山岡コレクションを中心に―」なる頁に遭遇し、その中で、川村清雄の《ベニス風景》(油彩・板)という作品に惹かれたことである。
他の高橋由一の《鮭図》や《丁髷姿の自画像》 、司馬江漢の《風景》、藤島武二の《ヴェニス風景》などは、見たことがあるし、素晴らしさ(というより凄みのようなものか)は知らないではないだけに、小生には川村清雄の《ベニス風景》は新鮮に映ったのである。
なんとか、実物に会いたいなんて贅沢は今は控えるとして、ネットでもっと大きな画像を見たいと思い、本稿の作成に着手したのだ。
↑ 川村清雄「海底に遺る日清勇士の髑髏」 (1899(明治32)年以前 42.5×81.0cm 板、漆絵) (画像は、「静岡県立美術館【主な収蔵品の作家名:川村清雄】」より。) 川村清雄(1852-1934(嘉永5-昭和9))の全体像を知るにはこの頁がいいようだ。 髑髏という西欧と書画(古歌)という日本との折衷。
← 川村清雄の《ベニス風景》(油彩・板) (画像は、「日本近代洋画への道 ―山岡コレクションを中心に―」より。)
川村清雄については、ネットではまとまった形での情報が得られない。
そんな中、「京都古美術&骨董ドットコム>商品番号:090」なるサイトがやや詳しい:
川村清雄(1852-1934)は、明治初期から昭和初期、日本の近代洋画草創期における開拓者であり、主要な指導者として活躍しました。単に西洋の模倣にとどまることなく、また時流に流されることなく、卓越した画技と独自の和的美意識をその作品にもりこみ、油彩画の日本化を目指しました。画家の初期の代表作は関東大震災により消失(以下略)
→ 川村清雄『雲龍図』(福富太郎コレクション) (画像は、「artlog 川村清雄_雲龍図」より。)
さらに、「京都古美術&骨董ドットコム>商品番号:090」によると:
【年譜】江戸嘉永5年生まれ 8歳の時より日本画を学び、12歳で画学局にて西洋画法を学ぶ。
明治4年、徳川留学生として政治法律研究のため米国へ留学するが、明治5年より画業に目的を変更。明治6年洋画を本格的に勉強するためパリへ、カバネルの弟子のオラース・ド・カリアスに師事。次いで明治9年イタリアに赴き、ヴェネチア美術学校に入る。
明治14年帰国、明治16年勝海舟援助のもと画室を開設、18年には画塾を開き弟子を養成する。
明治22年 明治美術会創立会員となる。門下に桜井忠剛、塚原律子、東城鉦太郎などがおり、同34年には門下を中心に結成された巴会に加わり活躍。同40年には公的な出品を絶ち自らの絵画世界を深めていく。
日本の近代洋画史における川村清雄の果たした役割は大きく、その画業は近年再び脚光を浴びている。
← 川村清雄「天璋院肖像 川村清雄筆」德川記念財団 蔵 (画像は、「G-Call 「天璋院 篤姫展」[天璋院肖像 川村清雄筆]」より。)
「掛け軸は思文閣 - 書画、古美術、掛け軸の販売・査定|《思文閣 美術人名辞典 検索結果 「か」で始まる人名 421件のうち381~400件》」によると、多少情報が重なるが:
洋画家。江戸生。幼名清次郎、のち清兵衛脩寛、号は時童。初め田能村直人、更に春木南溟に師事し、次いで幕府の開成所画学局で川上冬崖・高橋由一から西洋画を学ぶ。のち渡米、画学を志しパリを経て、ヴェネツィア美術学校へ入学。帰国後画学校を開設、門下に東城鉦太郎・桜井忠剛らがいる。明治美術会創立に参加、のち巴会を結成。晩年は日本画的傾向を強めた。昭和9年(1934)歿、82才。
(後半に続く)
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