浅草サンバカーニバルへ(2)…東京 ! サウダージ
さて、出発の日時が近付いた。
アルバイトのほうも、29日の金曜日や週末の土日を含め、休みにさせてもらった。
父母も小康状態を保っている。
あとのことは姉に頼んである。土日には忙しい中を我が家へ来てくれる。
← 青いビニールシートや足元の泥濘が前夜の天候を如実に物語っている。
夜の10時頃になって、やっと旅の準備。慌しくて、用意するものも分からず、思いつくままカバンに詰め込んだ。
オートバイをやめ、自転車通勤していた際、使っていた、リュックサックが旅行カバンだ。
荷物を背中に背負うと、両手が開くし、体のバランスもいい。疲れ具合が気のせいか、違うようでもある。
東京から帰省する際には、パソコンをバッグに忍ばせたものだが、今回はパソコンも自宅に残したまま。
東京では浅草に徹する。他は予定なし。
11時を回った。バスが到着する11時40分が迫ってきている。
思いつくものをバッグに放り込んで、いざ駅前まで。
雨だったら、タクシーで駅へ向うつもりだったが、幸い、日中に引き続き晴れていたので、歩いて駅方面へ。
タクシーが何台も通り過ぎる。
拾おうか、それとも歩きか、と迷っているうちに、とてもじゃないが、タクシーを使うのは憚られる距離になってしまった。
そういえば、自宅からそんなに離れていない場所に、タクシー会社の営業所があり、しかも、空車が2台あるのを横目で見てきたのだった…。
→ 我がチームのアレゴリアもビニールシートがかぶさって、作業の人の来るのを待っている。
駅の北口に着いた。バスが到着する箇所が分からないが、旅行カバンを背や手にした、いかにも旅仕度という人たちが十数人、集まっている辺りへ向っていった。
十分ほど待ったろうか、それらしいバスが来た。
「ウィラー トラベル」の「willer.」の文字が横に入っている。
スタンダードタイプのバス。
運転手のほかに案内のガイドも同乗する。席が案内される。バッグはバスの外側のトランクへ。
本だけ手に乗り込む。
四人掛けで狭いが、まあ、本くらいは読めるだろうと思っていたが、間もなく、それが甘い期待だと分かった。
ガイドの車内放送で、夜半になったら車内は消灯する、というのだ。
車内では禁煙なのは勿論だが、飲食も禁止だとか。
ああ、読書しつつ、睡魔に誘われ、眠りに着くという思惑は乗った途端、あっさり夢と消えた。
← ここからは他のチームのアレゴリア画像を。チームは、「G.R.E.S. 仲見世 バルバロス」。今年の優勝チームである。アレゴリアでも優勝! 最後の追い込み作業中。テーマは、「「アート」人生を豊かにするアート~ぼくたちの音楽・ダンス・歌こそ芸術だ!!~」。
車内での座る席は、多分、予約の順番ごとに席順が決まると思うのだが(推測)、車内の後部は女性客、前半は男性客、というふうになっていた。
振り分けられているのだろうか?
小生は左側前から二列目の通路席。なので外は眺められない。
というか、そもそも深夜バスの場合、カーテンは全て下ろされている。
それだけじゃなく、運転席(ガイドも含めて)側と客席側の間にもカーテンがあり、運行が始まると完全に閉められてしまう。
ツアー客にしても、ビジネス客にしても、車内では基本的に睡眠・休息を、という主旨のようだ(推測。そのほうが手間が掛からない?)。
バスに乗り込んだのは11時半過ぎ…四十分頃だったか。真夜中の十二時までの、僅か十数分が読書タイム。乏しい時間を惜しむように持参したバルザックの『あら皮』を読む。
まさに古典。「S.モームは、バルザックを「確実に天才とよぶにふさわしい人物」と自著『世界の十大小説』のなかで述べている」ことは、その『世界の十大小説』を二度、読んだ小生は知っている。
→ 二つの地球がゴロンと。チームは、「アミーゴス カリエンテス」か(断言できないでいる)。テーマは、「脱!地球温暖化~愛は地球を救う~」。
が、かならずしも納得したわけじゃなかった。
でも、今は違う。好悪はあっても、断固、天才であると認める。量も凄まじいが、叙述も際立っている。
「90篇の長編・短編からなる小説群『人間喜劇』を執筆した」というが、写実的小説という俗説は小生は理解できない。
一度でも読んで見ると、主人公の気持ちにしても、パリの風景描写にしても、酒と女とマザーコンプレックスに突き動かされての、何処か妄想に近いような<光景>が描き示される。
決して、リアルな街並みを忠実に客観的に丁寧に描いているというふうではない(と小生は感じる)。
「バルザックの小説の特性は、社会全体を俯瞰する巨大な視点と同時に、人間の精神の内部を精密に描くというところにある」とも言われるが、「人間の精神の内部を精密に」の精密の次元がバルザックの想像力の時空にしかありえない、浮び得ないものではないかと思えてならないのだ。
← 奥の地球(儀)は、こんなふう。次回のオリンピックはロンドン。チーム名は、「フェスタンサ・フェステイロ」で、テーマは「Para a terra~銀河鉄道の旅」。…つまり、一つ前の画像は、たまたま違うチームの地球儀を連なるように撮っていたというわけのようだ。情報を寄せてくれた方、ありがとう(コメント欄を参照)。
そのドストエフスキーとは違うが、そんな精神の持主は非現実に思えるほどに、且つ紋切り型な性格造形の謗りを歯牙にもかけぬふうに、貪欲にヴァイタリティ溢れるエネルギーで描く…創出されていくのだ。
…とにかく読書は夜半でストップ。
予定通り消灯。
なので、眠くはないし、読書で睡魔の到来を待つという手も使えず、夜景を楽しむこともできず、闇の中、悶々と過ごすばかりだった。
バスに乗って四十分ほどだったか、有磯海サービスエリアで最初の休憩・トイレタイム。
ちなみに、「有磯海サービスエリア - Wikipedia」によると、「有磯海という地名は富山県内には存在しない。有磯海とは大伴家持が詠んだ歌に由来する歌枕で、富山湾の海のことを指すとされ、松尾芭蕉をはじめ多くの歌人・俳人が富山湾を有磯海と呼び和歌や俳句に詠んだ。実際には存在しない地名を利用したサービスエリア名はここが初めてである」とか。
→ 結構、人気のあった作品。テーマは暗黒系のロック?
次の休憩地点は松本周辺だった。小布施辺り?
雨が降っていた。不安。太平洋側に近付くにつれ、天候が怪しくなっていく。
缶コーヒーを飲みつつ、東京の空を想う。
長野の何処かから降り出した雨が降り続いていていたが、多分、高井戸インター付近を走行していた頃に上がったようだった。
最後のトイレ休憩時間を終えて、やがてバスは東京へ。
カーテンは相変わらず閉じられたままなのだが、外が明るくなりつつあるのが分かる。
運転席側と客席の間のカーテンの透き間から、対向車のヘッドライトが漏れこんだりする折々、あと何キロという青い標識が見え隠れする。
← もっと近付いてみたいって要望に応えて。お前は誰だ? スパイか? 違う、手前のがスパイダー!
やがてバスは高速道路を降りた。
多分、高井戸インター(?)で(小生は寝入っていたらしく、カーテンで視界が遮られていることもあり、確認できなかった)。
気がつくと新宿駅へ。
東京だ!
東京だ! というある種の感動はこの先、もっともっと感じた。
半年ぶりの東京ということもあるが、それ以上の感懐が沸くのだった。
新宿駅を出てつぎは品川駅へ向う。
戸山を通り、六本木を通り、麻布の地名や札の辻やら、小生には懐かしい地名が一杯。
東京在住30年ということもあるが、バスで都心、それも新宿から品川駅へは、最初を覗いてほとんど港区を走る。
→ ブラジル移民百周年! 最初は船で海を越えて行った。チームは、「ウニドス ド ウルバナ」。テーマは、「日本-ブラジル移民100周年~人々を繋ぐ架け橋としてのサンバ~」。
小生は95年の9月から昨年の末まで、タクシードライバーとして働いた。
メインの営業拠点は港区の青山・六本木・麻布・芝(一時期、歌舞伎町、そして渋谷の時期もあった)である。
都心の特に港区六本木や麻布界隈の道路は、一体、どれほど走りぬけたことか。
交差点で何度、信号待ちをしたり右左折をしたり、渋滞に巻き込まれたりしたことか。
バスの運転席の真後ろの席に移動して(新宿駅から先は、もう朝ということで運転席と客席の間のカーテンは開けられていた)、小生がタクシーを運転しながら走った道路を眺め入った。
(数年前、タクシードライバーとして東京の町を流していた時の胸中の思いなどを綴った雑文に「東京の闇を流して」がある。その他、タクシー関連エッセイは、「夜間飛行を堪能する」など、数知れず)
← テーマはひと目で分かる ? ! 「ロック(Rock)~俺たちの譲れない矜持~」です。
12年余りのタクシードライバー生活。
忙しい時期は、一月に4400キロほど、年間で5万キロを走行。
最後の数年は暇になったので、一月、せいぜい3000キロ、年間で3万5千キロほど。
よって、12年余りで50万キロ以上、主に都心を走ったことになる。
同じ交差点を何百回、あるいは交差点によっては千回以上、走り抜けた。
ドンドン変わっていく光景。
この道路で生活の基礎を得、同時に神経をすり減らしたのだった。
オートバイやスクーターでも都内を走り回った。
バイクでの通算の走行距離は分からない。年間一万キロとしても、ライダー生活30年だから、自ずから大よその距離数が計算される。
尤もライダー生活最後の数年は、年間の走行距離は、せいぜい三千キロほどになっていた。
しかもスクーターだ。
→ 先ほどのをリクエスト(?)に応えてもう一度、下から。迫力! ガーターが…。ってことは、メスのブタさんだったのね。下から覗いて失礼!
バスでの旅でこんな感懐を抱くようになるとは思ってもみなかった。
家庭の事情が許せば、昨年末に個人タクシーの資格免許試験もパスしたし、今年の春からは個人タクシーのドライバーとして今も走り回っていたはずなのである。
ささやかなキャリアが全て消え去った。捨て去ってしまって郷里へ。
バスは品川駅を立って東京駅へ。品川方面から東京(新橋や浜松町・有楽町)という方向でタクシーを走らせる機会が多かったので、これもまた懐かしい。
銀座(中央)通りを抜けていく。銀座のメインの通りだが、早朝だし、土曜日の朝なので、ガラガラ。
仕事を終えての片付けなのか、これから回転するための準備なのか、ゴミ出しや掃除などの人影がある。買い物客はさすがにいない。
こんな早朝の銀座の風景はあまり見たことがない。夜の賑わいの中を指定された店や通りを目指して走ったことは数え切れないほどあるが。
← 海賊? 調べてみたら、テーマは「海賊~夢は海のかなたへ~」だった。チーム名は、「学生サンバ連合ウニアン・ドス・アマドーリス」
バスは八重洲へ、そして東京駅へ。
朝の七時二十分頃だったか。ほぼ予定通りだ。
雨は降っていない。
このまま持ってくれるのか。
予定は何も決めていない。
せっかく東京駅にいるのだから、お土産を先に買って小包便で田舎に送付しておくか(これが失敗のもとだった)。
でも、腹が減っている。
まずは腹ごしらえ。
→ 地球にはやっぱり日本が似合う。で、日本の中心は近い将来、浅草になる ? ! …もう、なってるか!
立ち食いの蕎麦屋さんを探したが見つからない。
探しながらぶらぶら歩いていたら、駅の構内へ。
地下鉄で浅草を目指そうかと思ったが、まず上野へ行き、それから銀座線で浅草、というルートを選ぶ。
上野で飯だ。
上野駅を出たら、大きなガードを渡った対面に立ち食い蕎麦屋がある。
とにかく蕎麦を食べたかった。天ぷら蕎麦を注文。
← オートバイ好きな小生、気になる。チーム名は、「ヴェルメーリョ イ ブランコ」。
バスの車内での飲食は禁止で、さすがにペットボトルのお茶は飲んだが、持参したビスケットも食べることはできなかった。空腹だったのだ。
そのあとすぐ浅草へ。
浅草についたのは八時過ぎで、浅草寺着が10分ころ。
せっかくなので、浅草寺で天気が持ちますようにと、お賽銭を放ってお参り。
その甲斐もなく、我がチームのパレードが始まる直前の頃から土砂降りとなったのだが。
でも、結果を考えず、今、できること、やりたいことに熱中するのがいいのだ。
→ サン場所!? 将来は浅草で相撲を ? ! チーム名は、「エスコーラ・ジ・サンバ
クルゼイロ・ド・スゥル」。テーマは、「大相撲~大相撲サンバ所千秋楽の一日~」。
バスの中では居眠りはしたものの、グッスリは眠れなかったので、浅草寺の境内の何処かで眠ることにした。転寝(うたたね)程度でいいから、眠っておきたかったのだ。
浅草寺の本堂の裏手の階段上でリュックサックを下ろし、板塀を背にして座り、目を閉じる。
が、眠れない。
そのうち、警備員らしき人がきて、ここじゃ、ダメと言われ、場所を移動しようとも思ったが(だが、その前に階段付近はダメだから回廊に回ってくれといったのも(別の)警備員さんだった!)、もう、いい、今日一日を乗り切ればいいんだと、仮眠は諦めて、浅草寺の裏の境内・駐車場にあるアレゴリア(山車)置き場へ向うことに。
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コメント
でかい方の地球はフェスタンサの
テーマ「地球へ ~銀河鉄道の旅」の奴ですね
私もてっきり温暖化と思っていたんですが。
投稿: bato | 2008/09/04 09:35
batoさん
今b年も最高に充実した画像群ですね。
まだまだアップ作業が続いていくようです。
これだけの画像を撮る苦労。
しかも、雨に祟られた時間帯も結構、あったはずだし。
ご指摘、ありがとう。
小生、ちょっと…じゃない、大いに混乱していました。
環境をイメージした「アミーゴス カリエンテス」の地球儀と、銀河鉄道の旅をイメージした「フェスタンサ・フェステイロ」の地球儀があったんですね。
画像のコメント欄に注記しておきました。
ありがとう!
投稿: やいっち | 2008/09/04 10:17
10時前から雷門通りで座りっぱなしの身と
しては、こういう裏レポートは見ようにも
見られないので貴重です。開始前の大雨も
含めて豪雨が三回あったので各チームどう
しているかな、と思ったらブルーシートを
被せてあったんですね。
投稿: bato | 2008/09/04 11:15
「コンデジ画像館]のbatoさん
舞台裏レポート、メンバーとして活動していたら、もっと書けるかもしれない(秘密事項は別にして)。
今回は山車押しスタッフだったので、山車に焦点を合わせていますが、これにしても、三ヶ月間ほどの製作期間があって、その上で浅草寺の境内に半完成のmのを運び、現地で組み立てたり、細部の作りこみをしている、小生はその最後の部分をチラッと覗かせてもらっただけです。
それでも、苦労が伝わってくる(多分、作る楽しさも)!
豪雨は昼前後に一時間、午後三時半から一時間余り、パレードが終わる頃にもと、3度ほど当日、降りました。
(終わってから夕方から夜に掛けてずっと降っていたけど)。
昼前後の雨はシートなどでカバーしても、スタート直前の午後4時に掛けての雨は、もう、ギブアップ状態でした。
何しろ、スタンバイエリアの手前で待っていたので、シートを被せるわけにもいかず、雨にすっかり祟られました。
努力の成果のかなりの部分が(特に電気仕掛けや羽根類など)惨めな姿に。
スタート地点に立つ前に見栄えは相当に劣ってしまった…それでも、見事な出来栄えを示していたと思うけど。
この辺りのことは(3)以降の記事で縷々書きます。
出演者は雨には開き直るしかなかったけど、撮影される方たち、見物される方たちは大変だったろうと思います。
カメラとか衣服とか何もかもが。
画像、ドンドンアップされているようです。
楽しみにしてますよ!
投稿: やいっち | 2008/09/04 12:53