浅草サンバカーニバルから（５）…宴の後

　夕方の七時頃だったろうか、浅草寺の駐車場を使っての作業が制限されている時間となった。
　小生は作業場を抜け出し、着替えのため控え室へ。
　スタッフとしての活動の際に雨に降られた衣服も完全ではないが、渇き始めている。
　オレンジ色のＴシャツの色が落ちてズボンも何もかもが淡いオレンジ色に。

←　この頁では、浅草のコース脇から撮った、主にダンサーさんの画像を載せる（本文と画像は基本的に関係がない）。但し、我がチームのものではなく、午後の二時過ぎ、たまたま目にした、しかも、スタート前の姿。なので、踊る躍動感なんてものは期待できない。
　
　控え室へ向おうとしたら、作業の間は止んでいた雨がまた降り出した。
　最後の最後まで雨に祟られるカーニバルとなった。
　チームのテーマ「海中探検」があまりにタイムリー ? !

　七時を回った控え室は閑散としている。
　帰宅の途についた人も多いだろうが、かなりの人は打上げのパーティ会場へ向ったのではなかろうか。

　チームの中心的なメンバー（やパーティに参加しない人などの一部）は、結果発表の会場へ向ったようだ。

　小生は打上げにも何も参加せず、ただ、浅草周辺を歩いていた。
　浅草サンバカーニバル以外は何も予定がない。
　東京近辺の無沙汰・不義理してしまっている友人にも連絡しない上京。
　当初はカーニバルが終わったら日帰りのつもりでいたのである。

←　以上、３枚の画像は、「アサヒサンバチーム」。

　家庭の事情もあって、来れるかどうかすら内心、危ぶんでいた。
　会うと約束して、また、ごめんじゃ、不義理の上塗りである。
「浅草サンバカーニバルへ（１）…東京へ」に書いたように、サンバ以外は無為の旅なのだった。

　雨の夜。夜とはいっても夕方の七時を回った頃合。
　泊る宛てもないが、泊る場所を探すにも早すぎる。
　雨の中、浅草界隈を一時間もリュックサックを背負い傘を差して歩き回ったろうか。
　足が段々、もとの会場へ、商店街へ向う。腹が減っている。
　何か食べるか。
　が、どの店もさすがに観光客なのか、それともサンバ関係者なのか、客で一杯。
　

←　以上、二枚も、「アサヒサンバチーム」のようだ。

　店にもあぶれる中、浅草ロック座へでも行こうかと思っていたら、思いがけず見慣れた施設が目に入ってきた。金網で覆われた施設。照明が煌々と。

　あれっ、あそこって、結果発表会場じゃなかったっけ。
　それとも、サンバショーを未だやっている？

→　「G.R.E.S ALEGRIA（アレグリア）」のダンサー陣がスタート地点をめざす。テーマは、「ボサノヴァ５０周年～歴史とボヘミアン～」

　近付いてみると、審査結果発表会場だった。
　中には関係者が一杯。
　ステージ上には進行役の女性がマイクを持って立っている。
　音が聞こえてくる。
　聞き慣れた音…バルバロスの演奏だ！

　バルバロスが快哉をあげている。
　うむ？
　
　すると、進行役の女性が、優勝したバルバロスでした…とか言っている。
　そうか、今年のＳ１リーグでの優勝はG.R.E.S.仲見世バルバロスだったのか。
　昨年の雪辱を果たしたんだ。

［G.R.E.S.仲見世バルバロスの優勝ドキュメントなど、貴重な画像を楽しめる「ドキドキ、ワクワクな浅草☆ - SATOMARI日記」は必見・必読！ （08/09/16 追記）］

　バルバロスにとっては昨年は屈辱の準優勝だったのだろう。

　しかも、今年、バルバロスにとってシンボル的存在の方の逝去という悲しいこともあった。
　もともと組織力もあるし（動員力につながる）、パレードの企画や構成する力も抜群なので、動画や画像を見るだけでも、悲しみを乗り越えるという執念のようなものもあって、集中力を高め一丸となってやってやるって感じが如実に感じられる。
　いろんな意味で今年は特にバルバロスにとっては勝たなければならない年だったのだろう。
（審査結果は、「ここ」で。G.R.E.S.仲見世バルバロスの格別な事情については、例えば「優勝報告にリーダー現る！？」を参照のこと。）

　それはともかく、我がリベルダージの結果は？　優勝はバルバロスで分かったけど、結果について改めて順位を含めアナウンスしてくれないかと、金網に張り付き、傘まで金網にくっ付けるようにして、聞き入る。
　でも、大会関係者の話があるだけで、全然、話してくれない。

　リベルダージは（他のチームもだが）雨に祟られた中での演技だった。
　山車も当初の狙い通りの効果や威力を発揮しきれたのかどうか。
　スタッフとしてやっていると、全体の状況が分からない。

　パレードの最中に音が飛んだ…消えたのが分かった。まずい！
　そもそもスタート前にリベルダージの看板から「Ｅ」の文字が落っこちたりしている。

　他にも予期せぬトラブルやハプニングがあったやもしれない。
　自分は自分の役割を果たすだけだけど、観客や審査員にはどう見えている、感じられているのか分からないのがもどかしい…。

　まさか、昨年まで三年連続の三位をキープできなかったとか？
　金網で仕切られた、テニスコート場よりは広めの会場内を見渡すと、我がチームのメンバーの姿も見える。
　表情からは結果が窺えない。
　落胆しているとも思えないが、結果に納得というわけでもなさそう。
　まあ、優勝チームではないのに、喜び爆発のはずはないが、でも、審査結果はどうだったのだろう。

　結果発表のセレモニーは終わった。
　会場内から少しずつ関係者が出てくる。
　我がチームの関係者が出てくるのを出口付近で待ち受けることにした。
　雨がひどい。
　着替えた服も背中のバッグもズブ濡れ。
　出口付近は大会の関係者がいて、そこで立ち止まらないでくださいって言っている。
　小生、移動しつつ付近をウロウロ。
　何人か見過ごしてしまった。
　そのうち、チームのリーダー格の人が二人揃って出てきた。
　尊敬する二人である。名前を書きたいくらいだが、我慢である。

→　チーム「G.R.E.S ALEGRIA（アレグリア）」のアレゴリア。

　呼び止めてみた。
「結果、どうだったんですか？」　
　彼は指を三本立てて示す。

「三位？」
　頷く。その上で、
「未だ黙っててくださいね」と。

←　「フェスタンサ・フェステイロ」のダンサー陣が行く。

　表情を見る限り、三位という評価はともかく、やりきった満足感、充実感のようなものが窺えるようだった。

　同じ順位でも中味は随分と違う。落ちての三位もあろうし、準優勝と切磋した三位で口惜しいこともあろうし、四位に迫られて薄氷の三位もあろうが、チームの総合力の中で力を出し切ったという思いを抱くこともあるのではなかろうか。

　小生は結果を聞いたこともあり、落胆でもなく、とにかく結果が出たことで拍子抜けしたような気分になった。
　自分は何一つ、関わっていないのに、目標喪失も何も関係ないはずである。
　ただ、今年の二月末に東京を離れ（その前に、東京を離れると決まった時点でチームからも退会している）、東京との繋がりが何もなくなった中、せめてもの絆で今年の春先、スタッフ参加を申し出た。

→　次のオリンピックはロンドンで、でも、来年のカーニバルは、やっぱり浅草で、なんて会話をしてるわけじゃない。「フェスタンサ・フェステイロ」のテーマは、「Ｐａｒａ　ａ　ｔｅｒｒａ (地球へ)　～銀河鉄道の旅」！

　自宅には庭や畑がある。父母が体の都合で作業できないので、一人で見よう見真似でやっている。
　意図的な炎天下での作業を春から夏まで、ほぼ毎日やってきた。
　買物も昼間。

　自分のためであり自宅のためであるが、浅草を意識しなかったわけではない。
　その全てがとりあえずは意義を失った。

　夢の宴は終わりを告げた。さあ、浅草を離れる時だ。

　でも、何処へ？