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2008/09/06

浅草サンバカーニバルへ(4)…美は細部にあり!

[不明な用語については、「G.R.E.S. LIBERDADE---浅草サンバカーニバルパレード全体イメージ--」、あるいは「サンバ(ブラジル)関連用語解説」を参照してください。]

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→ この頁では、アレゴリア(アプリアーラ)の細部にこだわっていく。遊び心たっぷりの美と匠(たくみ)との粋は細部にあり!

 さて、いよいよパレード地点へ向うという合図が来た。
 山車は大きいし、高いし、幅も広い。山車の天辺は沿道の並木の枝葉に触れる。
 神経を使いつつ、スタート地点へ。
 スタート地点に立つと、ダンサー陣などの面々が出迎える。
 ワオーという声が上がる。


 さて、前項で雨で悲惨な目に遭ったと書いている。

 しかし、雨で悲惨な目に遭うのは、山車やスタッフ以上に、ダンサーやバテリア陣なのである。
 小生などは衣服が濡れるだけだが、ダンサーは高価な羽根が場合によっては雨で毀損となる怖れがある。雨がひどければ、この日のために用意した、背負いの豪華な羽根を外して踊る必要に迫られる。
 楽器を演奏するバテリア陣も、スルドなど太鼓などの皮などが雨でダメになり、音が変になる、楽器自体、ダメになる怖れもある。
 雨は誰にとっても厄介なものなのだ。

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← ひたすら、黙々と作業する人たち。

 ブラジルでのカーニバルでは雨は降らないのだろうか。
[実は例えばリオのカーニバルは雨との戦いでもある! 「世界最大の祭り リオのカーニバルの紹介」なる記事の中の、「注意点 カーニバルの期間中はリオは雨期です」という項を参照のこと。(08/09/27 追記)]
 日本では浅草サンバカーニバルは八月の終わりなので、季節の変わり目に近付いていて、晴天に恵まれるほうがある意味、幸運なのかもしれない。
 それでも、過去、雨が降ろうと中止になったことがないというのだから、やはりサンバの熱気なのだろう。

 小生の役目は、アプリアーラの先導、前方や横の踊り手たちとの距離の確保役。
 といっても、よく分からない。
 昨年までは山車(アプリアーラやPA(音響)車)を押す係りだったので、とにかく誰かの指導のもと、押したり止めたり、左右に動かしたりすればよかった。

 でも、先導役となると、前後左右のバランスへ注意を怠りなくする、という意味で余裕のあることなど一切、ないのだが、それでも、手持ち無沙汰になる瞬間が数十分のパレード中、何度もある。
 どうしたらいい。

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→ ゲソ(イカの足)、大好き。でも、程度がある。この足に巻き付かれたら、ゲッソリ!

 まあ、アプリアーラに乗っている人が、沿道にアピールするため、派手な演技やパフォーマンスをする際に、こちらも一緒に驚いて見せたり、手を振ったり、足踏みをしたり、まあ、ジタバタしてみたのだった。

 こうしてみて改めて、ダンサーの方たち、特にパシスタと呼ばれる人たちが、ステージ(ストリート)の上で、自在に踊りつつ、移動しつつ、アピールする演技力やサービス精神や何もかもが凄いなーと感じさせられる。
 小生など、所詮はスタッフで、男で、誰も見ているものなどいるはずがないのだ。
 それでも、なけなしの知恵(?)を絞って、アピールを考えるのだった。

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← カモメが~。

 我々のパレードの最中には雨はほとんど降らなかった。

 でも、直前までの豪雨などによるハプニングなら、数々。
 音響装置の再三の不具合は既に書いた。

 バテリア陣の演奏も歌手らの歌声も、広い浅草のストリートでは届かない。
 すると、ダンサーもスタッフも、一斉に歌ったりして、懸命にパレードを盛り上げようとしていた。その歌声でバテリア陣(打楽器隊)の面々が演奏をするという涙ぐましい工夫。

 音声の伴う動画でその様子を見てもらえるといい。
(この辺り、当事者の一人、歌手の方の話を読むのがいいだろう:「「天使とサンバ!」おーゆみこ希望的観測日録 雨中の宴」)

 ハプニングと言えば、小生が担当となった山車(アプリアーラ)にもあった。
 一つは、チームの名称を記した看板の文字の一つがスタート前に剥がれ落ちたのである。
 チーム名「LIBERDADE」の「」がスタート地点まであと数十メートルというところで、不意に落っこちてきた。
 チーム名「LIBERDADE」の各文字は、ゴールドの活字で、両面テープで布地で化粧されたベニヤ板に貼り付けてある。

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→ 飛んだ~! …よく見ると、嘴に小魚を銜(くわ)えてる! 雄飛するトビウオにも注目!

 その内の一つの文字が、雨に両面テープの粘着力が負けたのだ。
 みんなで知恵を絞り、音響のアプリアーラを、我々の先頭のアプリアーラに近付け、音響のアプリアーラの台の上に若手が上り、「E」の文字を、粘着テープをワッカにしたものを何個も裏面にくっ付けたものを、看板「LIBERDADE」の「E」の場所にくっつけようとした。
が、すぐに呆気なく落ちてくる。
 ダメだ。
 スタートのラインだ。スタートの時間なのだ。
 万事休すである。

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← 水車のようなものに、何か小さな造形物が。実は、イルカ! 撮り損ねた。可愛かったのに。

 アプリアーラ押しのスタッフは、先導係りの小生のほか、男性が4人、女性が一人、いた。
 その女性が、小生にどうしましょうと聞く。小生は一応、このチームのリーダーとなっている。
 最初は、開き直って「E」なしで乗り切ろう、「E」の文字を、アプリアーラの隅っこに忍ばせようとも思った。

 そのうち、その女性が、手に持って、頭の上に掲げ、踊りましょうかと提案してきた。
 小生には絶対に思いつかない発想!

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→ 急遽、某ダンサーさんに画像を拝借。イルカたちの可愛いこと。水車が羽根車となりイルカたちが泳いでいるふうに見せるわけである。

 パレードが終わったあとで、本人にご苦労様と声を掛けたのだが、彼女曰く、来年はダンサーデビューするんです、という。
 ああいう形でアピールするのは苦ではなかったというのだ。
 機転が利くというのか、その場で即座に雰囲気を壊さない、しかも、自分も楽しめる行動に移れるって、凄いなーと小生は感心。
 そうでないと、あの広いコースを融通無碍に踊る、そんなダンサーなんてやれないんだろうね。
(追記:「E」の文字を持って踊ってくれた女性に、アレゴリアを浅草寺の駐車場に戻した際、彼女の愛称を聞いた(さっちゃんとか、チーちゃんとか)のだが、彼女、何を訊かれてるんだろうと、一瞬、ポカンとした表情を浮かべた。もしかして彼女、相性は? って訊かれたのだと勘違いしたんじゃなかろうか。ダンサーになる相性…適格性という意味で。だったら困るな。来年、ダンサーとなるから、応援で呼びかけるのに、名前(本名)じゃ何だし、愛称が分かればいいかなって思って訊いたんだけど(まさか本名を訊くわけにもいかないし)。誤解されたら残念である。)

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← 白い羽根で工夫した波飛沫(なみしぶき)も豪快に魚たちが泳ぐ…という光景がパレード中に見えるはずだったのだが、本当に水飛沫に悩まされた(この画像も同じく拝借したもの。使用の許可、ありがとう!)

 ハプニングは、我がアプリアーラに限っても一つじゃなかった。
 我がアプリアーラは潜水艦リベルダージ号である。
 船長(艦長)役はイギリス人の方が務める。派手な演技が得意な、アピール力タップリの方。
 潜水艦の艦橋(司令塔)から顔を、時には上半身を出し、おお! とか、遠くを眺めて驚くとか、島を発見して感動するとか、島の原住民を見つけて驚くとか、愛嬌を振りまいて友好の気持ちを示すとか、まあ、出発なんだから、よし、周囲に異常なし、出発進行だ! とか、あれこれ演技する。

 その艦橋のハッチ(蓋)が潜水艦から剥がれ、落ちそうになってしまったのだ。
 船長さん、その艦橋の蓋を手や腰(脇腹)で押さえながら、派手な演技を繰り広げ続けたのである。

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→ 巨大なイカの襲来で艦橋に亀裂が!

 ちなみに、浅草寺の境内裏の駐車場での制作の際、その船長さんに、中に入って見せてくれ、外から見たら、どんなふうなのか、自分で見て確かめたいからと言われ、痩せたとはいえ、まだ人よりは太目の体を押し込むようにして、潜水艦の内部に入ってみたものである。

 狭い!
 小生には狭い。しかも、狭い中に展望のため艦橋に上がれるよう、角材でハシゴを作ってあるのだが、小生だと登るのがやや怖いような気がするもの(がっしり、作ってあることは明記しておく)。

 狭い、人の体分だけの、丸い穴から外を覗き、板切れで作った即席の階段(ステップ)の上に足を懸け、笑顔で愛嬌を振りまく。
 でも、実は、中は狭いし、その上、パレードの半ばで蓋が剥がれるハプニングがあったというわけである。

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← 覗いてみると、蛍が…。えっ? 海に蛍? 海蛍?

 我がアプリアーラの前方のコミサンにも衣裳のハプニングがあった。
 豪華な背負いの、星型の衣裳が落ちてしまったのだ。これも、雨のなせる業なのだろうか。
 その背負い子をパレードの最中、誰かが持ってきたので、アプリアーラの隅っこに潜めた。

 アプリアーラは、一見すると重そうに見えるが、一旦、押し始めるとそれほどでもない。
 難しいのは、パレードコースの真ん中をキープすることである。
 道路は、カマボコ状になっている。真ん中の白線部分が一番、高い。雨水が両脇へ流れるように工夫されている。
 そのセンターラインの上をうまくキープしつつ移動できればいいのだが、必ずアプリアーラは左右に振られる。
 アプリアーラやアレゴリアが、コース上を左右に蛇行する様子は見苦しい。
 多分、それだけでも減点の対象になるのでは(推測)。

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→ さらに内部を覗き込んでみたら…。芸が細かい。ここまで作り込んでいる。パレードしていても、沿道の人には気付かれないだろうなー。でも、やっちゃうんだろうな。パレード中、電気系統にトラブルはなかったのだろうか?

 アプリアーラ押しは、前後への移動ではなく、左右への振られに対処するのが一番、難しいし、体力を消耗するのである。
 多分、だからこそ、先導役が小生の役となったのだろう(たぶん、昨年、パレードのあと、小生がヘトヘトになっているのを見かねて、なのかもしれない。小生はこの半年、浅草を意識して炎天下仕様の体に仕立て直してきたのだが)。

 アプリアーラやアレゴリアの移動は、センターライン上を真っ直ぐ移動するのも難しいし、ペース配分も難しいが、松屋の辺りで大きく右にカーブする、その曲がり方も難しい。斜めに真ん中のライン(但し、そこにはラインはない!)を想定して、前後のダンサー陣らとの距離感を保ちつつ移動する、その塩梅は時に苦労の種だったりする。

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← 穴があったら、入れたくなる…じゃない、入りたくなる習性で、内部を観察。黄色のランプが。

 まあ、ダンサー陣やバテリア陣の苦労は、小生らの苦労の比ではないはず。
 推して知ってほしいと思うばかりである。
 その代わり、パレードを無事、やりきったあとの達成感は、想像を絶するものがあるのだろう。

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→ ダンサー陣も総出でパレードスタート(着替えや化粧の時間)ギリギリまで作業に従事。沿道の人たちは、あの華麗なパフォーマンスを繰り広げてくれるダンサー陣や歌手陣らが手ずから汗水垂らして頑張っていたなんて知らないだろう。…知らないほうが夢があっていいのか?

 パレードの最終ラインを超えたら、ダンスもダメ、楽器の演奏もダメである。減点の対象になる。
 なので、ラインを超えたら、速やかに退路付近に移動する。
 山車押し陣は、山車の一部を早速、解体に取り掛かる。特に横に、あるいは縦に高い、出っ張った部分は、沿道の並木の枝葉にぶつからないよう、確実にはがしてしまう。
 その上で、また、駐車場へ。
(この慌しい中、ほんの数人だが、ダンサーさんの写真をパチリ。我がチームのダンサーさんを踊る格好で撮れたのは、この機会のみだった。画像は、(6)で載せる予定。)

 観光客や買い物客の間を縫って、大きな山車を押して移動するのは、誰にも見物はされないけど、山車押しのメインイベントのようなもの。

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← 剥がれ落ちたのは、チーム名「LIBERDADE」の「E」である。しかも、スタート地点、目前で。その時、われわれはどう対処したか。動画(動画再生後1分25秒に注意!)や本文を参照のこと。

 浅草スタッフの人が誘導してくるはずだが、ホントに要所にしかいなくて、商店街を通るお客の姿で、スタッフが何処にいるのか見えない(昨年はもっといた。多分、一昨年はスタッフがいないとクレームを付けたので、増員したのだろうが、今年は一昨年と昨年の中間くらいの人数に感じられた)。

 思うに、山車の数など、それほど多くはないのだから、押すのは手伝わなくても、山車の前で先導してくれてもいいのではないか。
 地図は渡されているが、押しながら地図を見るわけにも行かないし、客も多い中だと、やはり誰か分かる人が先導してくれると安心できる。
 道を間違って後戻りって愚を犯したくないのだ。

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→ 海に髑髏(どくろ)は付き物…? 海中探検は常に危険と隣り合わせ。

 駐車場に着いた。
 所定の位置に止める。
 早速、山車の解体作業に取り掛かる。
 小生は翌日の日曜日は空けたかったので(電話があって急に帰ることになるかも、というプレッシャーが付き纏っていた)、規定の七時まで、せっせと解体作業に勤しんだ。

 軍手を買ってくるのを忘れていたので、素手で。
 釘やネジや、布地をベニヤに貼り付ける留め金具が一杯で、手での作業は怖々。
 でも、やり始めると熱中する。

 我がアプリアーラについては、七時前には、完全に形を喪失していた。
 待っていたかのように、雨も再び降り始めた。

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コメント

やいっちさん、出世しましたね。東京を離れたかと思うと祭りの時には必ず顔を出すテキヤさんみたいな感じで。

祇園祭でも角を回すのが見物で、その陣頭をとるのが花形です。祭りになくてはならない長老の存在!

投稿: pfaelzerwein | 2008/09/06 14:55

pfaelzerweinさん

山車(アプリアーラ)押しのつもりで手伝いを志願していたので、浅草寺の駐車場での見張り役などは想定の範囲内として、山車押しのリーダー役ってのは思いもよらないものだった。

といっても、要は他のパートとの間に必要充分な距離感を保つこと、などですが、それでも、なかなか。

コース上を自由に踊るダンサーらの大変さのほんの一端を垣間見たような気がします。

投稿: やいっち | 2008/09/06 17:11

やいっちゃん、こんばんは

ご無沙汰続きでお恥ずかしい限りです(^_^;)

久しぶりにサンバの熱気を感じました。
暫くこういう雰囲気を味わっていなくて・・・
とても新鮮でした゜+.(o´∀`o)゜+.゜

最近、文章と言うか文字が書けなくて
ついついネットから遠ざかってしまっていたのですが
これじゃぁいけない!と思い
刺激を求めてネット散歩を再開しました(´-ω-`;)ゞポリポリ

以前のようには動き回れませんが
今後ともどうぞ宜しくね(人´ω`*).☆.。.:*・゜

投稿: マコロン | 2008/09/06 19:05

マコロンさん

>最近、文章と言うか文字が書けなくて

小生も郷里に帰ってからは特に書く意欲が萎えているようです。家事三昧でネタを探す余裕もないし。
でも、田舎には田舎のよさがあるはずだし、ネットを離れると、日常に埋没しそうなので、自分に鞭打って、敢えて毎日、何かしら書くように心がけています。
まあ、ボケ防止にもなると思うし(期待を籠めて)。

ネット、ボチボチ楽しむのがいいですね。
ノルマにすると、きついからね。
マイペースを守って楽しんでね。

投稿: やいっち | 2008/09/07 03:26

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