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2008/09/09

浅草サンバカーニバルから(7)…「真珠の女たち」に会いに

 コロー展の会場である国立西洋美術館を出たら、外は雨。
 どうやら、雨が降り出したところだったようだ。
 傘の花が開き始めている。
 さすがに館内の光景は撮影できなかったので、せめてもと思い、門のところの大きな看板を撮り、上野駅前にある東京文化会館で雨宿りした。
 傘を持っていないわけじゃないのに、雨宿りとは変だが、まあ、夕方以降をどう過ごすかゆっくり考えようと、ホール内の椅子に腰掛け、休憩し、下手な考えに耽ってみたわけである。

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→ フェルメール展コロー展の間に佇んでいた上野公園の一角。多分、二時間あまりもベンチでゴロ寝やら何やら。
 
 東京藝術大学大学美術館や国立科学博物館、上野の森美術館など、上野界隈だけでも見所が一杯あるのだが、もう夕刻になってしまっている。
 でももう、展覧会を楽しむ時間は過ぎている。
 夜十時過ぎ品川駅発の夜行バスに乗るので、それまでの時間をどう過ごすか。
 ホールでぼんやりしていても、結局、何の知恵も浮ばなかった。

 その前に飯だ。
 というわけで、上野界隈を歩く。映画でも観るか…。
 上野アメ横を歩き(…もしかしたら、アメ横を歩くのは初めてか、あるいは三十数年ぶりかもしれない)、上野広小路を歩き回った。

 映画館が見つからない。
 その代わり(?)、ストリップ劇場やら鈴本演芸場、風俗店などばかりが目に入る。
 中華料理屋を探したが、界隈には何故か韓国料理屋しかない。焼肉。ビビンバ。キムチ。嫌いじゃないが、このあとバスに乗ることを思うと、服に匂いをつけたくない。
 日曜日ということもあり、入りやすいようなラーメン屋さんは大抵が休業となっている。
 住宅街というより観光客かサラリーマンの付き合いのエリアといった風情で、ラーメン屋さんは日曜は閉まっているらしい。

 それでも、例によってリュックを背負いながら一時間も歩いていたら、ようやく湯島辺りで一軒、ここかなという店を見つけた。
 有り触れた料理をということで、ここでもタン麺とチャーハンを注文。
 こういう食事は、郷里にあっては家庭の事情もあってなかなか口に出来ないのだ。
 というか、帰郷してこういったメニューを選んだのは、前日も含め、家を離れたからこそなのである。

 食事しながら、次に足を向ける場所は決めていた。
 というか、上野広小路の小路に踏み込んだ途端、遭遇してしまったストリップ劇場に惹かれてしまっている自分がいたのだ。
 今夜はここで決まりなのだった。
 劇場の名前さえ、分からない。浅草ツアーから帰って、富山でネットを使って調べたのだった。
 その名は、「シアター上野」!

 小生は上野にストリップ劇場があるなんて、知らなかった。
 映画館で時間を潰すつもりでいたのだ。
 郷里にあって、本も買わない(半年で買ったのは二冊!)、映画へも足を運ばない、美術館へも未だ一度も足を向けていない。
 時間が拘束されていることもあるが、アルバイトしかやっていないので、生活費さえままならず、お小遣いはゼロなのである。
 なので、美術館へは行ったので、今度は映画をなんでもいいから観たかったのだ。
 
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← 上野は国立西洋美術館にて「コロー 光と追憶の変奏曲」を見る。『真珠の女』との出会い。真珠の女たちへの伏線?

 ストリップ劇場に上野で遭遇。
 浅草で土曜日の夜、ウロウロしている間も、浅草ロック座へ行こうかという思いがなかったわけじゃなかった。
 何故か。
 まあ、助兵衛心も勿論だが、切っ掛けらしきものがある。
 それはあるベリーダンサーの方が、仲間と浅草ロック座へ行ったという話しを仄聞したのである。
 その感想も何故か幾許かは知っている。
 男たるもの、なんだか先を越されたという変な、負けた…という思いが湧いたりした。

 そういえば、学生時代、友人ら四人で夜の繁華街をうろついていて、場末のストリップ劇場の前を通りかかった(あるいは、誰か知っている奴がいて、さりげなく劇場の方へ向ったのかもしれない)。
 誰かが、観て行くか(入るか、だったかもしれない)と言った。
 四人、顔を見合わせる。
 誰かがよそうよ、と言った。
 で、その時はお流れになった。
 惜しかった。
 一体、誰がよそうよって言ったのか…なんとなく自分だったような気がする。記憶が曖昧だ。
 ちょっと惜しかった(…どころか痛恨の)思い出である。
 
 が、浅草ロック座へは、サンバカーニバルでの手伝いや雨の中の放浪で疲れ果て、荷物も抱えていたし、行きそびれてしまった。
 それが思いがけず、上野界隈を映画館を求めて、宛てもなくうろついていたらストリップ劇場に行き逢った。
 最初はそのまま劇場の前を通り過ぎ、とにかく腹ごしらえだとばかりに上野どころか湯島までへも歩いて食堂を見つけた。
 店に入る前には、だから、ストリップ劇場へ入ることは決めていたわけである。
 変に気持ちは落ち着いている。
 昂ぶったりしない。
 女の裸を見るという期待感も乏しい。
 プロの女の裸だからか。

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→ 上野を去り、新幹線の着駅ともなった品川駅へ。雨。駅の構内で休みたかったが、警備員さんが来て邪魔だって。綺麗過ぎるのも困るなー。駅前には喫茶店もなく、仕方なく初めてカフェに入った。スターバックスの品川東口店である。時間的な余裕もなかったこともあってか、何か居たたまれない。昔ながらの喫茶店が恋しい。

 それでも、シアター上野という劇場(小屋?)の入口の狭さや、ややうらぶれた感じがいい。
 浅草ロック座は、中は入ったことがないので分からないが、少なくとも表は綺麗過ぎる気がする。
 何処か男の後ろめたいような気分を逆撫でするほどにオープンな感じがする。
 
 その点、シアター上野は、少なくとも入口の雰囲気は隠微さらしき雰囲気が周囲にダラーンと垂れ零れているようで、陰に篭ったような男の気持ちには自然な感じがする。

 90年代の前半、高輪から大田区へ引っ越した。未だ東京在住の頃でサラリーマンだった。
 会社では立派過ぎるほどの窓際族だった。孤立無援の状態。
 疲れきって帰って、家ではバッタリ。
 楽しみは週末の映画。
 観るのはピンク映画である。
 小難しい内容の映画は一切、眼中にない。
 ただ、昔風なロマンポルノを観たかった。
 といっても、ロマンポルノでもなく、まさにピンク映画なのだった。
 大森駅から歩いて2分ほどの場所にピンク映画館があるなんて、思いも寄らなかったが、あることを知ると、週末、習慣のようにして行った。
 もう、いつ閉館になってもおかしくない映画館(実際、通い始めて二年も経たないうちに消滅してしまった)。
 映画館の中に入ると、場末の映画館特有の、饐(す)えたような匂いが鼻を突く。
 タバコのにおい、小便の匂い、痰(たん)の匂い、ゲロも混じってそう。
 そして、恐らくは(多分、間違いなく)精液の匂い。
 映画を見ても、紫煙で映像が揺らいで見えるように感じられる。

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→ 品川駅の港南口でバスを待つ。この港南口に初めて立ったのは、81年の四月。会社が海岸にあり、バスで田町駅へ、あるいは品川駅へ向ったのだった。大概は歩き、やがてはオートバイを利用するようになった。この頃の品川駅や田町駅の裏側は裏町であり倉庫街の雰囲気が濃厚で、刑事物のドラマの撮影現場(大抵は犯行現場?)にしばしば使われていた。バスで、あるいは徒歩の途中でロケの現場を幾度も見かけた。主に『西部警察』だったような。会社はヘリポートのある倉庫だったので、ヘリポートへの階段などで俳優さんの姿を見かけることもしばしば。擦れ違ったことも。

 ピンクやエロを楽しむには、こうした雰囲気がいいのだ…。
 シアター上野は、少なくとも外見は、好みから遠くない…。

 発想が古い?
 
 料金は五千円。入れ替え制ではありません、とある。
(後で調べたら、シアター上野のHPで表示されるチラシを印刷して持参すると、千円割引になるんだって!…尤も、小生はプリンターは持っていない!)
 この入れ替え制じゃないってのは、ミソである。
 それは、ワンクールを観終えても、さらに次のクールを楽しめるから、という意味じゃなく(そういう意味もあっていいが)、もっと違う意味合いがある(すぐに入れ替え制じゃないってことの意味を思い知る事態に遭遇する)。

 劇場の入口を入ると、そこには階段があって、地下へ。
 リュックを背負い、傘を手の、うらぶれた野郎が薄暗いわけじゃないが、明るいとは到底言えない照明が頼りの階段を下りていく。
 降り切ったところに男が立っていた。電話中。
 おカネを五千円札一枚出すが、なかなかチケット(入場券乃至は領収書)を呉れない。
 電話に事寄せてばっくれられても困るなとイライラしていたら、やっと入場券を出し、千切って半券を渡してくれた。

 受付の前の通路は狭い。モノが一杯置かれている。そこに何故か男たちが屯(たむろ)している。時間待ち? でも、入れ替え制じゃないのだから、入ってもいいのでは。
 おずおずと男どもの前を通って、中へ。
 いきなり驚かされた。

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