フィリップ・ヘンリー・ゴス……オムファロス!
どういう流れでだったか、「フィリップ・ヘンリー・ゴス-armchair aquarium [アームチェア・アクアリウム]」なる頁に遭遇した。
「armchair aquarium [アームチェア・アクアリウム]」は、「飼育家でも釣り人でもなく、ネタを転がしてさかなを愛でる安楽椅子派のさかなブログ」とのことだが、とっても魅力的なサイトだ。
← 画像は、「Biblomaniac Page The Blitish Sea-Anemones and Corals」(以下、全て同じサイトから。「古書をこよなく愛し、古書蒐集という不治の病に冒されてしまった人たちのための安らぎの場」だというそのホームページは、「Bibliomaniac Page」)より。
フィリップ・ヘンリー・ゴスという名前は小生には初耳である。
でも、とにかく上掲の頁に載る作品画像は魅力的。
なので、ちょっとメモしてみることにした。
フィリップ・ヘンリー・ゴスについては、「フィリップ・ヘンリー・ゴス-armchair aquarium [アームチェア・アクアリウム]」がとても参考になる。
が、その前に、「フィリップ・ヘンリー・ゴス - Wikipedia」を覗いてみる。
「オムファロス(Omphalos)」という創造論の仮説を提唱した人としても知られているようだが:
フィリップ・ヘンリー・ゴス(Philip Henry Gosse, 1810年4月6日 - 1888年8月23日)はイギリスの自然学者、科学作家。聖書の天地創造説と地質学の斉一説を融合させようと試みた。詩人エドモンド・ゴスの父親である。英国ウスター生まれ、神学上重要な提案をしたが、聖職者ではなく神学の教育を受けたわけでもなかった。ニューファンドランドへ移住すると昆虫観察に没頭した。カナダ、アメリカのアラバマ州と移り住み、1839年に英国へ戻った。その後科学作家に転じ、カナダの昆虫やジャマイカの鳥類、海生生物等の著作を発表した。またロンドン動物園で海水を使ったショーを世界で初めて可能にした。
→ 画像は、「Biblomaniac Page The Aqualium」より。
ここまで読むと真っ当な学者…少なくとも著作家であるかのようだが、以下の記述を読むと平凡なる常識人たる小生は首を傾げてしまう:
ゴスは地質学をよく理解していたので、地球の年齢が聖書の記述よりも遙かに古いと認めていた。しかし同時に、当時の多くの人と同じように創造論者でもあったので、聖書の記述は正しいとも考えていた。(中略)しかしゴスはジェームズ・アッシャー司教が想定した紀元前4004年の字義通り七日間での創造と、観察されている地質学的年代の矛盾を解決するために、それらとは全く異なる仮説を提唱した。それが1857年に公表されたオムファロスである。
地球の年齢について、聖書の記述(天地創造説)と地質学から得られる知見や証拠との矛盾を解決するため、理由は不明だが、神が化石や地層を数知れず作りばら撒いたと説明したようである。
← 画像は、「Biblomaniac Page Tenby: A Ser-side Holiday」より。図版の技術や芸術性が高いかどうかは小生には分からないが、この図版は秀逸だ。能書きがなかったら、二十世紀前半から半ばの頃の高名な抽象画家の作品かと思えたりする。例えば、拙稿「ハンス・ベルメール…球体関節人形」に掲げた、ベルメールの『重なる頭足類』などを見て欲しい。
経歴に付いては、「フィリップ・ヘンリー・ゴス - Wikipedia」を参照したが、さらに、「フィリップ・ヘンリー・ゴス-armchair aquarium [アームチェア・アクアリウム]」によると:
彼は採集した海の生き物を付近にあった妻の別荘に運んで飼育・観察し、従来になかった海中の様子を活写した図版を含む本を著しました。このさいに彼が確立した海水アクアリウムの技術が元となり、海洋生物の飼育の技術はめざましい発展を遂げることになります。
小生としては、オムファロス説もそれなりに興味深いが、小生にとっては(少なからぬ人たちにとっても!)何と言っても彼の「海中の様子を活写した図版」こそが素晴らしい。
→ 画像は、「Biblomaniac Page A Year At the Shore」より。地上であれ海中であれ、この世に生けるもの全てへの親和性の感覚。
「水槽の恐怖-ナナ’ログ - 」によると:
水槽=アクアリウムはヴィクトリアンにとって博物学的な関心の高まりから室内娯楽としての流行になった。1857年頃には街角の至る所で水槽やガラス容器が売られるようになった。
火付け役はフィリップ・ヘンリー・ゴスの著書『ある博物学者のデヴォンシャー海岸散策』(1853)である。(以下略)
なお、フィリップ・ヘンリー・ゴスは、リン・L・メリル著の『博物学のロマンス』(大橋洋一・照屋由佳・原田祐貨訳、国文社)の「後半部の主役級」だという。
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コメント
ナナ’ログ引用ありがとうございます。
うれしいです。
投稿: ナナ | 2008/12/17 18:01
ナナ’ログ引用ありがとうございます。
投稿: ナナ | 2008/12/17 18:02
ナナさん
勝手に引用だけしてごめんなさい。
トラックバックができればしていたはずだけど、ダメだった。
水槽の話など、参考になりました。
いつか、自分でも関連の記事を書いてみたいものです。
投稿: やいっち | 2008/12/17 19:58