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2008/06/06

元永定正……僕はアホ派です ? !

白髪一雄から遠く」で白髪一雄を扱った、その流れとか連想で、というわけではないが、元永定正の作品世界がふと脳裏に浮かんできた。
 パフォーマンスアートつながりではないのだが。

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→ 元永定正『ひかりでているあかしかく』(1984 Screenprint  Image size 66.0×46.0cm) (画像は、「ときの忘れもの「元永定正」」より)

 パフォーマンスアートも手がけるが、アンフォルメルの画家と看做されたこともあったようだ(一時期はそうなのかもしれない。小生にはそうは思えないのだが)。

 元永定正もまた小生が抽象表現主義やアール・ブリュットに関心を抱き関連する展覧会を見て回った80年代後半から90年代前半にかけての、(小生にとっての美術の上での)疾風怒濤(表現が古い!)の最中の頃に好きになった画家の一人である。

 斯界の大物の一人だと思うのだが、「元永定正 - Wikipedia」で得られる情報はあまりに乏しい:

元永定正(もとなが さだまさ、1922年11月26日 - )は、三重県伊賀市(旧上野市)出身の芸術家。

三重県上野商業学校(現三重県立上野商業高等学校)卒。1955年に師事していた吉原治良をリーダーとする具体美術協会に参加。 初期にはビニール袋に様々な色の色水を入れて吊るした作品をつくっていた。

前衛画家として初めて紫綬褒章を受章している。


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← 元永定正『まるいみどりは』(1979年 Silkscreen 47.0×33.0cm) (画像は、「ときの忘れもの「元永定正」」より)

 ファンは多くはいない?
 そんなことはないはず。

 元永定正については、下記のサイトが作品の画像も豊富でいい:
ときの忘れもの「元永定正」」(ホームページ:「ギャラリー ときの忘れもの」)
 上でアンフォルメルの画家云々と書いたが、「55年関西を拠点にする[具体美術協会]に参加、吉原治良に師事する。絵具のたらし込みなど流動感ある絵画によって、折から世界を席巻したアンフォルメルの画家として一躍注目を浴びる。(中略 各)賞を受賞し、名実共に日本を代表する抽象画家としての地位を確立した」とあっては、抽象画家と呼称されるのは致し方ないのだろう。
 抽象への傾きがあるのは否めないとして、彼の作品の数々をみると、第一印象として、楽しい! ユーモラス! 何処かヒョウキン! といった感想を多くの方はまず抱くのではないか。
 作品に付いての専門的な説明を知っていようがいまいが、根っからの明るさを画面から感じる。

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→ 元永定正 『すうしきもある There is even an Equation』(1984 Screenprint  Image size 46.0×66.0cm) (画像は、「ときの忘れもの「元永定正」」より)

 小生の好きな画家の一人にジョアン・ミロ(Joan Miró)がいるが、誰しも(?)ミロ的世界との親和性を感じるのではないか。
 ただ、ミロの場合、どうしてもピカソやブラックやクレーらの強力な引力圏を感じてしまうが(それでも独自の揺るぎないワールドを持っている)、元永定正はもっと軽やかであり、いい意味で幼児性というか童話的な世界が伸びやかに表現されている。
 脱力的で、解放感があり、気軽に楽しめる。
 作品を鑑賞するにしても、妙に深刻ぶる必要もない。
 まずは作品に接して感じる、楽しむってのがあって、そのあとで薀蓄を傾けるもよし、専門的な説明に縋るのもよしである。
 これは当たり前のことなのだろうが、特に抽象作品だと、頭でっかちになりがちなので、元永定正ワールドだと、能書きよりまず作品を鑑賞する、作品と遊ぶという基本に立ち返らせてくれるのである。

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← 元永定正 『白い光が出ているみたい』(1977 Screenprint  Image Size 61.0x47.0cm) (画像は、「ときの忘れもの「元永定正」」より)

 表現の手法として抽象的かもしれないが、アンフォルメルの画家たちの閉じた精神世界の中で外部の世界との交流を断たれた中で、ちょうどそう、永遠に開くことのない繭の中で夢見ているような、あまりに硬い殻の中で成虫へとメタモルフォーゼを遂げる術を失い、ブヨブヨな心が剥きだしのままに、髄液のまま枯渇の時を待っているような世界とはまるで逆で、元永定正ワールドは生気に満ち溢れ、世界との会話への志向や戯れの心や遊び心一杯なのである。
ときの忘れもの「元永定正」」では、元永定正自身の言葉として、「僕は知性派じゃなく、アホ派です」を紹介してくれている。

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→ 元永定正『せのひくいおれんじはまんなかあたり』(1984年 Silkscreen(刷り:石田了一) 46.0×66.0cm) (画像は、「ときの忘れもの「元永定正」」より)

元永定正 展 ― いろだまあかしろきいろ ― 」ではないが、「元永定正 (もとながさだまさ) さんの作風は、絵画、素描、版画、陶のオブジェ、イス、タピストリー、絵本、パフォーマンス、舞台美術、映像と縦横無尽で」、「いつの時代も元永さんの作品には力が漲っていて、鮮やかな色彩、シンプルな線やフォルム、そして巧まざるユーモアに満ちています。ほんとうにすぐれた作品がもたらしてくれる開放感で、深く明るい笑いで包み込んでくれます。ハハハハと無心に笑いながら、作品の持つエネルギーで満たされ」るのだ。

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← 元永定正『作品』(1962年, 33x24cm) (画像は、「SADAMASA MOTONAGA アート・遊」より)

 元永定正ワールドは広い。
 今回は紹介できなかったが、こんな世界も垣間見せてくれる:
読み聞かせをしてみよう!もこもこもこ(元永 定正 さんの 絵本)

元永定正ワールドは、入るは易いかもしれないが、奥が深いのである。

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コメント

この人の展覧会は練馬区立美術館で開かれましたね。
弥一さんとしては珍しくリンクされていませんね。
練馬も西武線の中村橋ですか、ちょっと行きにくいですよね。

投稿: oki | 2008/06/07 00:00

okiさん

練馬区立美術館は小生にとって清宮質文という版画家(の作品)と出遭わせてくれた懐かしい美術館。

「元永定正の創作の世界」が一昨年だったかあったのは知っていたけど、美術館通いは本の購入共々封印しているので、目をつぶってやり過ごしました。

投稿: やいっち | 2008/06/07 10:14

初めまして、唐突ですが元永定正先生に是非ともお会いしたくてアトリエや会社等を探していますが、見つかりません。もしご存知でしたら教えていただけないでしょうか。
具体の活動しているところでもいいのですが、ご存知でしたら教えて下さいませ。
勝手なメールで失礼しますが、何かの糸口でも見つかれば嬉しいです。
誠に勝手ですみません。

投稿: 久保 あつこ | 2011/05/18 13:53

元永定正さん死去…「具体美術」参加、絵本も数多く
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111007-OYO1T00309.htm?from=main3

元永定正さんが、3日午後9時42分、前立腺がんのため亡くなった。88歳だった。

三重県生まれ。1955年、前衛美術集団「具体美術協会」に参加。日本画の「たらし込み」の手法に着想を得て、バケツや容器に入れた絵の具をキャンバスにたらすアクション・ペインティングで注目を集めた。

投稿: やいっち | 2011/10/07 21:28

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