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2008/06/14

「伍代夏子・香西かおり ジョイントコンサート」!

 日付が「2008/04/20」の拙稿「無言坂…早く昔になればいい」の冒頭で、「今年、小生の大好きな歌手香西かおりさんが富山にやってくる」と書いている:
伍代夏子・香西かおり ジョイントコンサート~二人の美艶歌~

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→ 開演直前の光景。ほとんどが中高年の方々。自分もだが。三階席にある我が席からはステージが遠い!

 わざわざこんな記事を書くくらいだから、小生、香西かおり(以下、例によって敬愛の念を籠めつつ、敬称を略させてもらう)のファンである。
 ああ、彼女の歌を生で聴きたい、彼女を生のステージで見たい、そう思いつつ、しかし、ちょっと実現は無理かなと思いながら書いていた。
 コンサートがあったのは13日。小生は、その一週間前になって、行く! と決めた。
 好きな本だって年に数冊も買えるかどうかの小生、借金を抱えた経済状況からしてコンサートなんてとんでもない!

 でも、次に彼女が富山に来るのは早くても来年…。

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← 舞台があんなに小さく見えるんじゃ、歌手らの姿は…。

 そう思うと、たまらなくなり、切羽詰った一週間前の5日になって行くと決め、翌6日にはチケットを買いに行った。無論、事前に前売りの空きがあることを電話で確かめて。
 会場は「オーバード・ホール」(AUBADE HALL)といって、中は五階席まである。
 席が取れたのはその三階席。これでもSS席、つまり一番いい席なのである。
 ただ、買うのが遅すぎてその中の末席、しかも三階席というわけ。

 いい。とにかく聴きたいし、姿を見たい。

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→ 香西かおり! 最初の曲は、「雨酒場」。

 こんなふうな気持ちになったのは、富山には娯楽が少ないからでもある。
 東京ではサンバパレードがあったり、ベリーダンスのショーがあったりして、それこそ年に数回だがライブのショーやパレードを楽しんできた。スタッフの一員として手伝いの真似事もした。
 が、富山にはそんな機会が乏しい。
 少なくとも知る限りベリーダンスのショーはない。

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← 伍代夏子! 最初の曲は、「ひとり酒」。杉良太郎が旦那だったと初めて知った。

 地元の若い人に聞くと、富山ではパチンコかゴルフかボーリングか、飲むならキャバレーかスナックでカラオケといったもの。
 遊ぶ場所がホントに少ない。
 場所が少ないというより、メニューが少ない。
 若い人でカラオケで歌うだけじゃなく、踊りたいって人は少なからずいるはずなのに、そんな場が皆無に近いのである。
 遊びも含め富山の文化土壌の薄さを痛感する(同じ富山県でも高岡など県の西部は加賀地方に近いこともあってか、伝統も含め文化の歴史や雰囲気はやや濃い。)

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→ 伍代夏子・香西かおりの揃い踏み。東京生れのチャキチャキの江戸っ子の伍代夏子、浪花っ子の香西かおりと、性格も生まれもまるで対照的だが、妙に気が合い、ジョイントコンサートも何年にもなるとか。

 東京など他府県へ行ってショーを楽しむ…なんてのも、小生には無理。
 本を読む環境も貧相だが、音楽環境も今は逆境かと思えるほど貧しい。
 音楽CDを借り出したいが、肝心の図書館がアスベスト除去工事中ということで、小生が帰郷してからはずっと閉館したまま。
 本も借りられない。音楽CDもダメ、ライブなどのショーもないという三重苦。
 音楽環境がひどいってのは辛い。我が家にはじっくり音楽を楽しむという土壌がないのだ(但し、母は長年、民謡に親しんできた。デイケアセンターでも、母の喉の披露を望まれることもあるほど。でも、自宅でカセットなどで音楽を聴くという習慣はない。父が全く音楽を聴かないから、仕方がないのだろう)。

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← 香西かおりは、日本レコード大賞受賞曲の「無言坂」などを熱唱してくれた。民謡をやっていただけあって、声量も違う。

 そんな中、上掲の記事を書いた頃には諦めていたコンサートだが、もう切羽詰った心境になり、開催される一週間前になってチケットを購入したのである。電話では予約締め切りになっていて、チケットセンターで買うしかないのだが、慌しい最中、自転車を飛ばして買ってきたのだった。

 香西かおりのコンサートに行くのは、ある意味、自分へのご褒美でもある。
(それにしても彼女の何処にそんなに惹かれるのか。容貌? 雰囲気? 歌? 歌唱力? やはり声質なのかもしれない。)
 東京在住三十年で離京したこと。仙台での数年を加えると36年間、郷里の地を離れて一人暮らししてきた。サラリーマンとして十数年、タクシードライバーとして12年3ヶ月。
 一人きりの生活を続けてきた、曰く言い難いことも数々ある。
 誰とも体験を共有することのない孤独な日々ではあったけれど、それなりに頑張ってきたのである。
 タクシードライバーとしても楽しいこともあったが、辛酸を舐めたことも一度や二度じゃない。
 事故や違反やトラブルを怖れつつも、タクシードライバーとしては11年以上、無事故無違反を貫けた(全くの新人の頃、進路変更違反で切符を切られた)。

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→ ちょっとびっくりしたことに、ザ・ピーナッツのヒット曲をデュエットしてくれたこと。彼女らが好きで選んだのだろうか、話を聞き漏らした(後ろなどの小母さんのお喋りが煩かった)。小生が物心付いて間もない頃、我が家にテレビがやってきて、シャボン玉ホリデーという番組があり、ザ・ピーナッツらの歌を聞いた。小生の音楽の原点は、彼女らにあるといって過言じゃない。

 よくやった! せめて自分で自分を労(ねぎら)ってやりたいのである。
 そうでないと、自分が可哀想。

 家でも家事の真似事をやっているが、表現が適当かどうか分からないが、暖簾に腕押し、糠に釘、やってもやっても父母からは何の反応もない。
 雪の中を自転車を飛ばして買物に行き、ずぶ濡れになって帰ってきても、父も母も何も言わない。父母共に肉体的には衰えたり気力が萎えることは時にあっても、頭はしっかりしている。
 ご苦労さんの一言もない。
 庭木の整理をしてもトイレの掃除をしても時間を割いて用事を果たしても、父はただ新聞(の番組欄)やテレビを眺めているだけ。
 俺は小間使いか、家に置かせもらっているだけのお荷物なのか。住まわせてやっている代わり、ただ働きさせておけばいいってことなのか…。

 でも、もう、反応を期待することは諦めた。そういう人なのだ。
 …もしかして、自分も父のそんなシャイ(?)なところが似てしまっているのだろうか。

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← 伍代夏子は、夫の杉良太郎が作った曲も披露してくれた。年を思わせない妖艶さ、そして声量、歌唱力。

 もういいんだ。
 やるべきことをやる。それだけだ。
 自分が大人になり、手応えなど求めず、やることをやる。腹に据えかねることも我慢する。自分がガキの頃に当たり前のようにやってもらっていたことをお返しするのだ。
 別にお礼してもらうためにやっているわけじゃなし。

 そうはいっても、翻って自分については、将来展望がまるでない。父母の世話をするのはいい。
 では、自分はどうなのだろう。先のことを思うと暗澹たるものではないか。
 一人きり。今だって既に体にガタが来ているが、遅かれ早かれ全くの一人きりとなる。近親を含め親族はいるし、気づかってはくれるが(多分、小生が想像する以上に!)、他の家の人である。忙しさもあって、心境を分かち持つというわけにはいかない。
 
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→ 最後に再び、二人が揃い踏み。エンディングは美空ひばりが歌ってヒットした曲『人生一路』(作詞 石本美由紀 作曲 かとう哲也)。この唄を二人でデュエットする。「一度決めたら 二度とは変えぬ. これが自分の 生きる道. 泣くな迷うな 苦しみぬいて ... 意地をつらぬく 人になれ. 胸に根性の 炎を抱いて. 決めたこの道 まっしぐら. 明日にかけよう」…。これが彼女ら演歌歌手の意気込みであり覚悟なのだろうと感懐深く聞いていた。

 何か楽しみを見つけないといけない。このために頑張れるというものを持っておかないと自分が潰れてしまう。乾いた心が本当に干からびてしまう。
 ある意味、そんな焦りの思いが去来している。
 
 そんなこんなで思いが一杯でコンサートへ行ったのである。
 そして、嬉しかった。チケット代が借金の上乗せになったとしても、気持ちの上でそれ以上のものがあった。
 前夜は丑三つ時頃まで仕事で、就寝したのは午前四時を回っていて、睡魔の襲来を怖れていたが、何とか持った。
 というより、コンサートの間は眠気など感じなかった。
 コンサートが終わったのは四時十分前だったろうか、すぐに帰宅してロッキングチェアーに体を沈めた途端、眠気が。しかも、すぐに家事を済ませたあとには仕事。

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← 本当に伍代夏子と香西かおりのジョイントコンサートだったことを示すため、不鮮明だが拡大画像を。
 
 コンサートは、上記したように三階席。歌っている二人の姿がとっても小さい。
 幸か不幸か老眼だが、遠くだけは比較的ハッキリ見えるのだが、それでもステージの二人は小さい(会場内での音響については不満はなかった。近くの小母ちゃんが煩かったが)。

 その小ささは、ある意味、東京という町の遠ざかりにも思えた。

 東京を離れて三ヵ月半に過ぎないのだが、三十年暮らした東京が遠く、遠く離れてしまった。
 東京の中で真砂の砂より小さな存在だったけれど、それでも、在住していたら想像の中では自分が生きている。
 しかし、一旦、離れてしまうと、自分がホントに芥子粒だったことが歴然としてしまう。

 けれど今は富山にあって、富山の土と生きると決めている。

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コメント

大好きな香西かおりさんのコンサート、行かれて良かったですね!
伍代夏子さんも、と~ってもお綺麗で、歌のお上手なお二人ですもんね。

ご両親様は立場が逆転して、やいっちさんに甘えておられるんですよ、きっと。
ですから今回のように、何かの度に、ご自分へのご褒美、あげてくださいね。

引き篭もりの私にとっては、家とクルマの中だけが生きている場所です。

やいっちさんの「富山通信」を楽しみにしています。

投稿: 雫 | 2008/06/14 12:40

雫さん

ご両人の年齢、今回、日記を書いていてあれこれ調べて初めて知りました。
ええ、そんな年なの?! 若い!
気持ちに張りがあるからなのかな。

とにかく思い切って舞台へ足を運んでよかったです。
あわよくば接近して撮影したかった。

富山発の記事、なかなか書けないでいます。まあ、日記をつらつら書けばそれで富山通信なんだろうけど。

>引き篭もりの私にとっては、家とクルマの中だけが生きている場所です。

小生も似たようなもの。そこに自転車(での買物)が加わるくらいかな。
自転車散歩って記事を書きたいんだけど、家に張り付いているので、なかなか外出の時間が取れない。
なんとか、書きたいものです。

投稿: やいっち | 2008/06/14 15:39

将来に展望がないのは僕も同じ。
せめてなんでも打ち明けられる親友を一人作っておけばよかったなと。
秋葉原の犯行もネットの自分の書き込みに反応がないのがさびしかった、だれか止めてほしかったってー。
僕はナイフで人をさす勇気はないけど、あの犯人と案外近い所にいるかもー。
美術館巡りだって現実逃避ともいえる。
ああ、コンサートでしたね、僕は菊池麻衣子さんの「女の居場所」明治座に観にいきましたが、彼女も結婚して子どもを産んでー。
拙ブログで弥一さんのことリンクついでに紹介させていただきました。

投稿: oki | 2008/06/14 23:15

okiさん

>秋葉原の犯行もネットの自分の書き込みに反応がないのがさびしかった、だれか止めてほしかったってー。

犯行に弁解の余地はないのは大前提として、秋葉原の事件は悲惨なものでしたね。

社会のひずみってのはいつの時代もある。
特に今はテレビのワイドショーで何かの事件があると、これでもかって膨らませて報道する。しゃぶるように!

あの事件の犯人もワイドショーを独占するのが夢だって語っていた(掲示板に書き込んでいた)とか。

弱者と強者の二分化が小泉政権以降、国の方針として鮮明に打ち出されてきた。
気に食わない奴は抵抗勢力だと決め付けるイジメ政治が横行する。
そうしたひずみは人間社会の断層帯の何処かで噴出する。
やった奴に弁解の余地などないけど、社会(マスコミ)が誰かが暴発するし、犠牲者となるのを口を開けて待っているような気がしてならない。

>僕は菊池麻衣子さんの「女の居場所」明治座に観にいきましたが、彼女も結婚して子どもを産んでー。

菊池麻衣子さんもちゃんとした家庭を築かれてますね。
応援する人が幸せになるのは嬉しいけど、気がつくと応援していた自分はどうなの、これでいいの、取り残されちゃったんじゃないのって、感じてしまう。

幸か不幸か、香西かおりさんは未だ結婚されていない。ってことは未だ望みがある(何の望みだ?)ってことだ?!


>拙ブログで弥一さんのことリンクついでに紹介させていただきました。

ブログの記事がアップされた直後に読み、驚きました。
恐縮してコメントする言葉が見つかりませんでした。
地味なサイトなんです。時に誰かが覗いてくれたら嬉しい、それだけかな。
あ、でも、oki さんをはじめ、いろんな方にコメントが欲しいとは思っている。
反応がないってのが寂しいですからね。

投稿: やいっち | 2008/06/15 09:58

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