アフリカの詩に育まれて:ヴィフレド・ラム
ひょんなことから(ネットで小山正太郎情報を収集しようとしていた!)、「ヴィフレド・ラム」(1902~1982)というシュルレアリズムの作家を知った。
→ ヴィフレド・ラム『黒い巡洋艦より、plate.1』(1972年作 銅版画 [ Size : 23 x 18 cm, Ed.125 ]) (画像は、「ウィフレド・ラム:黒い巡洋艦より、plate.1 - Salon de J」より)
でも肝心の絵画(画像)がネットではなかなか見つからない。
人気がない? 忘れられてしまった?
ま、小生が世の流れに鈍感なだけか。
「ウィフレド・ラム:黒い巡洋艦より、plate.1 - Salon de J」によると、『黒い巡洋艦より、plate.1』という、「マンディアルグ著の同名作品のための挿絵(全6点)」がある画家のようだ。
(奇しくも昨日(25日)からマンディアルグ著の『オートバイ』を再読し始めた!)
「2002.10.26 - 2003.1.13」という会期で、横浜美術館にて「ヴィフレド・ラム展 - 変化するイメージ -」が催されたことも。「ラムの生誕100年を記念して日本で初めて開催された展覧会」なのだとか。
← 「ヴィフレド・ラム展 - 変化するイメージ -」展図録 (画像は、「ヴィフレド・ラム展図録 - Salon de J」より)
「横浜美術館 YOKOHAMA MUSEUM OF ART」はユニークな企画を立ててくれるところで好きな美術館の1つ。
例えば、これは別に横浜美術館の企画ではなさそうだが、ここで見た「セルフ 1961-1991 ルーカス・サマラス展」は今も印象に残っている。独特なピンクの世界。
(ルーカス・サマラスについては、「arteria Lucas Samaras(ルーカス・サマラス)Objects and Subjects」など参照。)
→ ヴィフレド・ラム『Composition 1』(リトグラフ45.5×56.0cm ed.60 1963年) (画像は、「<作家紹介> 版画作品」より)
「ヴィフレド・ラム展―変化するイメージ」(「横浜美術館より)での図録の説明によると:
スペイン系の母親と中国人の父親を持ちキューバで生まれ育った作家。その後パリに渡りシュルレアリズムの作家として有名。端的な情報が多い作家でしたが、日本初の全貌を紹 介する大回顧展です。素描のユーモアあふれる作品や深い鮮やかな色使いの油絵などの中にプリミティブな感性が窺えて、あたたかい画集です。

← ヴィフレド・ラム『オリジナル・リトグラフ集 "Le Regard vertical" (垂直の視線)より』(60.0×50.0cm ed.180 1973年) (画像は、「<作家紹介> 版画作品」より)
「ピカソもアール・ブリュットも・・・京都の画廊/ギャルリー宮脇」の中の「<作家紹介> gallery artist “精霊との対話の痕跡を描く” 熱帯キューバの幻想画家ヴィフレド・ラム イントロダクション」が詳しくて参考になる。
さすがに「ラムのオリジナル版画を常設してい」る画廊だけに違う:
1936年スペイン内乱勃発、翌年パリに渡る。1938年パリで初個展、キュビスムの秩序を追いつつ原始的な力を発散させた作品を発表し、ピカソの賞賛を得る。ブルトンなどシュルレアリストたちと親交を結ぶが、パリのアヴァン・ギャルド(前衛芸術)は、ヨーロッパの外からやってきたこの芸術家の創意を驚嘆をもって迎えた。ピカソの造型思考とシユルレアリスムの方法は、深く埋もれた第三世界の芸術家の正当な文化の根源を引き出す可能性を与えた。

→ ヴィフレド・ラム『オリジナル・リトグラフ集 "Pleni Luna" (満月)より 』(65.0×49.8cm ed.312 1974年) (画像は、「<作家紹介> 版画作品」より)
特に、下記の記述が光る:
1946年ハイチに滞在、ヴゥードウー教を発見、旧いアフリカの伝統が生き残るこの祭儀の象徴的小道具を、黒ずんだ褐色、オークル系の画面の中に浸透させる。繁茂する植物群、巨大な乳房をもつ角を生やしたトーテム風の生命体、馬や鳥の頭部をもつ偽装した神々…、沸騰するラムの幻影は、様々な古い文化と源泉でつながりながら、秘教的な語法のフォルムをえて、濃密な詩的宇宙のなか、妖げな光空を放っている。
「スペイン系の母親と中国人の父親を持ちキューバで生まれ育った作家」で、その後パリに渡」って活動したというから、自らのアイデンティティを見出すのは至難の業(わざ)だったろう。
彼にはアフリカにその大きなヒントがあったということか。
(08/05/11作)
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