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2008/05/15

ハンス・ベルメール…球体関節人形

 ハンス・ベルメール(Hans Bellmer, 1902年3月13日 - 1975年2月23日)の存在を知ったのはいつのことだったか、今ではもう定かではない。

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← ハンス・ベルメール『哀れなアン』(1968年、1948年制作のデカルコマニーのフォトグラビュール、ed.200、35.5x27.5cm) (画像は、「アート・遊 ハンス・ベルメール」より)

 何かの美術書(澁澤龍彦だったかな)の中でその名を目にしたような、それともジョルジュ・バタイユの『マダム・エドワルダ』の挿画(小生が初めて作家の全集を入手したのは古書店で見つけたバタイユ全集で、これは今も古い書棚に温存されている)で既に脳裏に彼の世界が焼き付けられていたような気もする。

 が、小生の肉髄に強く印象を刻まれたのは、何処かの古書店でハンス・ベルメールの画集…というより写真集を手に取ったときだったのは間違いない。

 学生だった小生にはちょっと値の張る作品集だったが、手に取りほんの数頁パラパラ捲っただけで、購入することに気持ちはハッキリ固まっていた。

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→ ハンス・ベルメール『重なる頭足類』(1965年、ビュラン、ed.100、40x43cm) (画像は、「アート・遊 ハンス・ベルメール」より)

 箱入りのその本は箱も本の装丁も真っ黒で、箱の表面にはご丁寧にもハトロン紙とでも言うのか、半透明の艶のある紙で覆われていた。ハトロン紙には若干の破れ目があったが、そんなことは問題じゃなかった。
ハンス・ベルメール - Wikipedia」によると、「ポーランドのカトヴィツェ(当時はドイツ帝国領)出身の画家、グラフィックデザイナー、写真家、人形作家」というが、何と言っても「少女の関節人形」の作家として知られる。
 というよりも、小生は少女の関節人形の白黒写真しか知らないし、それだけで十分だった。

 こんな世界を公に好きと言っていいのかどうか、幾分の躊躇いを覚えてしまう。

 その後、人形愛作家は何人となく知っていったし感銘も覚えたけれど、やはり初めてハンス・ベルメールの関節人形をしかも現物ではなく白黒写真に留まるのに、彼の示す世界から受けた痺れるような、後ろめたさの感もたっぷりの暗い衝撃の鮮烈さには及ぶべくもない。

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← ハンス・ベルメール『DIE PUPPE』 (画像は、「Yahoo!オークション - ハンス・ベルメール/DIE PUPPE」より)

 以前も何かの記事で紹介したような記憶があるが、ハンス・ベルメールというと、下記のサイトだろう:
ハンス・ベルメール:日本への紹介と影響
 あるいは:
artshore 芸術海岸 ベルメール 1 人形愛
artshore 芸術海岸 ベルメール 2 ウニカ

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→ ハンス・ベルメール「ザ・ドール」 (画像は、「editions treville - pan-exotica - エディシオン・トレヴィル - 「ザ・ドール」ハンス・ベルメール」より)

美術家の言葉ハンス・ベルメール」(ホームページ:「ピースフル・アートランド びそう」)からハンス・ベルメールの言葉を:

 実際いかにして―-その豊かさを損うことなく――小さな少女の内部組織を描写することができるだろうか。少女は座っている。左肩を持ち上げ、腕を伸ばして、もの倦く机に身を投げ、肩や胸の筋肉の間でその顎を本能的に愛撫するのを隠して。したがって頭の重量が肩と腕の重量に加わり、圧力は机の端ではね返されて筋肉にそって徐々に力を減じて流れて行き、肘のところで少し止まり、そしてさらに弱くなって持ち上げられた手首のところに伝わり、最後は手の裏側を滑って、人差し指の先の机の上の小さな角砂糖のところで終わる。

 ……顎の位置が直感的に陰部と腋の下との類似を示すや否やイメージは二重になり、内容は混ぜ合わされる。そしてそこに現実と想像されたものとの、容認されたものと禁じられたものとの二つの成分の特異な混合物ができあがる。


                           (08/05/12作)

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コメント

懐かしいですね、ベルメールは。
昔昔、たぶん高校生の頃に、本屋で「イマージュの解剖学」を見つけて衝撃を受け、すぐに購入しましたが、しばらく眺めているうちに気分が悪くなって、何箇月か後にその本を捨ててしまいました。
今思えば、惜しいことをしましたよ。。

投稿: ゲイリー | 2008/05/15 12:54

ゲイリーさん

ゲイリーならきっと若い頃に感銘をうけただろうと思いました。

「イマージュの解剖学」を捨ててしまったとか。
かく言う小生も、これだけ思い入れがありながら、引越し騒動の折に他の250冊ほどの画集と共に虹の彼方へ消え去りました。
手元に残ったのは、十冊ほど…。

「今思えば、惜しいことをしましたよ。」ってのは、同じです。

ある意味、ハードの画集がなくなったので、ネットで画家・絵画めぐりをやっているのかも。

投稿: やいっち | 2008/05/15 15:46

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