ピエト・モンドリアン(承前)
「ピエト・モンドリアン(前篇)」の続きです。
引き続き、ピエト・モンドリアンの変貌ぶりを追っていきます。
← Piet Mondrian 『Night Landscape / Landschap bij nacht.』 (c.1907/08. Oil on canvas. 35 x 50.2 cm. Private collection.) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より) 空間そのものが妖気を孕んでいるような。ゴッホの「星月夜」を思わせるが、もっと怜悧か。
1917年にはテオ・ファン・ドースブルフとともに芸術雑誌『デ・ステイル』を創刊。ここで彼らの唱えた芸術理論が「新造形主義」と呼ばれるものである。モンドリアンは宇宙の調和を表現するためには完全に抽象的な芸術が必要であると主張し、水平・垂直の直線と三原色から成る絵画を制作した。
→ Piet Mondrian 『Trees by the Gein at Moonrise. / Bomen aan het Gein bij opkomende maan.』 (1907/08. Oil on canvas. 79 x 92.5 cm. Gemeentemuseum, the Hague, Netherlands..) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
そうした抽象画のモンドリアンを理解する人も多かったが、生活のために淡い色調で描かれた植物(特に花)の絵を描いては売っていたという。
← Piet Mondrian 『Chrysanthemum. / Chrysant.』 (c.1908. Watercolor. 33.9 x 23.9. Sidney Janis Collection, New York, NY, USA..) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
「そうした抽象画のモンドリアンを理解する人も多かったが、生活のために淡い色調で描かれた植物(特に花)の絵を描いては売っていたという」…。このような絵を売っていた?
1940年には戦禍を避けてニューヨークに移住、同地で1944年に没する。ニューヨークに移住してからの作品『ブロードウェイ・ブギ・ウギ』などは、上述の原則に従いつつも、より華やかな画面となり、完全な抽象絵画でありながら、画面からはニューヨークの街の喧騒やネオンの輝きさえ感じ取れるように思える。
→ Piet Mondrian 『The Red Tree.』 (c.1909. Oil on canvas. 27 3/8" x 39". Gemeentemuseum, the Hague, Netherlands.) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
ピエト・モンドリアンの理解には、「画家 ピエト・モンドリアン ~オランダ絵画の系譜」(ホームページ:「とおる美術館」)がいい。
それなりにネットで絵画(画家)情報を蒐集してきたつもりだが、上掲のサイトをヒットしたのは初めて。まあ、小生の検索の仕方が悪い…あるいは勉強が足りないということか。
← Piet Mondrian 『Dune IV. / Duin IV.』 (1909/10. Oil on card. 33 x 46 cm. Gemeentemuseum, the Hague, Netherlands.) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
この頁の冒頭に、「国土の半分が海抜を下回り、昔も今も、水をかきだし続けている国がある」という記述を見る。
この話題に付いては、数年前、扱ったことがあるが、そんなものより下記のサイトが読むに値する:
「朝永振一郎 著 「ゾイデル海の水防とローレンツ」」(ホームページ:「FNの高校物理」)
→ Piet Mondrian 『Amaryllis.』 (1910. Watercolor over pen. 49.2 x 31.5 cm. Private collection.) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
実は拙稿の中で上記の頁(記事)を紹介しているのだ。
どういう話かというと、「この国土の27%が海面下にある国オランダ」について:
(前略)朝永振一郎著の『科学者の自由な楽園』(岩波文庫刊)を読んでいたら、「ゾイデル海の水防とローレンツ」と題された一文があった。それは正にオランダが生んだ大物理学者H・A・ローレンツが一役を買うオランダのダム建設の話である。つまり、海より低い国であるオランダにゾイデル海という入り江がある。その入り口付近に大きなダムを建設しようというのだ。問題は必要にして十分な大きさのダムをどう見積もり建設すればいいかということで、そこには複雑で未知な潮の流れを計算する必要があるなど物理学的難題があり、ダム建設の専門家ではないはずの、ローレンツにそのお鉢が回ってきた由縁なのである。(後略)
← Piet Mondrian 『Dune Landscape./ Duinlandschap.』 (1910/11.Oil on canvas. 141 x 239. Gemeentemuseum, the Hague, Netherlands.) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
さらに、「画家 ピエト・モンドリアン ~オランダ絵画の系譜」から一部、転記する:
オランダは、ネーデルランドとも呼ばれる。 ネーデルランドとは、「低い土地」という意味だ。 もともと陸地にとぼしく、干拓によって土地を増やしてきたのだ。 それゆえ、その景観は、遥かな時と、ひとの手によりつくりかえられてきたので、もとからの自然は植生は少ないのが、特徴のひとつでもある。

→ Piet Mondrian 『Amaryllis.』 (1910. Watercolor over pen. 49.2 x 31.5 cm. Private collection.) (画像は、「Piet Mondrian - Olga's Gallery」より)
「オランダ - Wikipedia」にあるように、オランダは、「堤防により囲まれた低地。チーズ、チューリップ、風車で有名。有名な画家を多く輩出して」おり、「1600年4月に豊後国(大分県臼杵市)にオランダのデ・リーフデ号が漂着。徳川家康がこれを厚くもてなしたことから両国の関係ははじまった」と、日本との関係も長い。
蘭学という言葉を見聞きしただけで、あれこれ思い浮かぶことも少なからず誰しもあるだろう。
戦争での不幸な歴史的事実もあり、良好な関係を築いているとはいえ、日本とオランダとの関係の陰影は深いとも言えるようだ。
(「ピエト・モンドリアン(後篇)」へ続く。これまでのモンドリアンも興味深かったが、次回やいよいよモンドリアン世界の劇的な大変貌を見ることになる。)
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