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2008/01/31

ステファニー・バレンティン:顕微鏡下の美

 未だ冬真っ盛りで春は気分的にも遠く、寄る年波で春が待ち遠しいのだが、春の到来を待ち受けているのは小生のようなロートルばかりではない。
 そう、花粉のほうは春を待ちきれないとばかりに飛散し始めているようだ。

Misc_pollen

→ 「様々な花粉の電子顕微鏡像」 (画像は、「花粉 - Wikipedia」より)

環境省 報道発表資料-平成20年1月24日-平成20年春の花粉総飛散量等の予測(確定版)について(お知らせ)」(平成20年1月24日)によると:

 平成20年春の花粉総飛散量は、昨年春に比較すると、東日本で1.5倍から3倍と予測され、西日本はほぼ昨年並みになると予測されます。また、スギの飛散開始日は例年に比較して5~10日程度早くなるものと予測されます。

 ということで今日は花粉の話。
 といっても、小生ならでは(?)の変則的なものだけど。

Pollinate_01

← 「zinnia 2, 2002 from Pollinate」(etched pollen grain - magnification 5,000x) Gelatin silver print 18 x 21cm) (画像は、「Stills Gallery - Stephanie Valentin」より) エッチングされている(?)「endure」って言葉、花粉症の人には皮肉に映る?

 全般的な情報に付いては:
環境省花粉情報サイト

花粉症 - Wikipedia」:

花粉症(かふんしょう、hay fever / pollen allergy / pollen disease, 医 pollinosis または pollenosis )とはI型アレルギー(いちがた-)に分類される疾患の一つ。植物の花粉が、鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされ、発作性反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの一連の症状が特徴的な症候群のことである。枯草熱(こそうねつ)とも言われる。

Pollinate_03

→ 「globba winni, 2002 from Pollinate」(etched pollen grain - magnification 6,000x) Gelatin silver print 18 x 21cm) (画像は、「Stills Gallery - Stephanie Valentin」より) これもアートなだろうね。アッと驚くのは確かだけど。

 花粉症についてはアレルギー症状の出ている人には鬱陶しいばかりだが、さてその花粉症を引き起こす一因とされる(主犯?)杉花粉をチラッと見てみたい?
 見るだにおぞましい画像なのだが、覚悟の上で、そう、怖いもの見たさでどうぞ:
文ちゃんのタイニーカフェテラス走査電子顕微鏡、SEM スギ花粉の正体(その5)」(ホームページ:「テクネックス工房」)

花粉 - Wikipedia」によると:

花粉(かふん)とは、種子植物門の植物の花の雄蘂(おしべ)から出る粉状の細胞。花粉がめしべの先端(柱頭)につくことにより受粉が行われる。種子植物が有性生殖を行う際に必ず必要となる。大きさは数10μmほどである。種により大きさは異なるが、同一種ではほぼ同じ大きさになる。

Pollinate_04

← 「chicorium intybus, 2002 from Pollinate」 (etched pollen grain - magnification 5,000x) Gelatin silver print 18 x 21cm) (画像は、「Stills Gallery - Stephanie Valentin」より)

 花粉をチラッと見てみたいといっても、学術的にどうこうという難しいことに踏み入るつもりはない。
 小生は、微生物(特に原生動物)の顕微鏡写真を見るのが好きだが(生物の勉強は苦手だったが、教科書などにミジンコやらアメーバなどの顕微鏡写真を見つけると、意味もなく見惚れてしまうのだった)、時代は更に電子顕微鏡による拡大像をも存分に見せてくれるようになった。

 花粉症の蔓延は憂鬱だし、科学技術が時に思いもよらない副作用も齎すこともあるが、時にこうした形で科学技術の恩恵に浴することができる、その点は(小生にとっては)慶賀すべきことである。
(副作用ではないが、時代が齎した花粉症、芭蕉らのころにも命名はされずともあったのだろうが、俳句の季語の仲間入りするほどに殷賑(いんしん)を極めるとは想像も付かなかったろう。「春になると…spring has come!」やを覗いてみる?)

Pollinate_05

→ 「aster species 1, 2002 from Pollinate」(etched pollen grain - magnification 6,500x) Gelatin silver print 18 x 21cm) (画像は、「Stills Gallery - Stephanie Valentin」より)

 当然ながら、アーティストや写真家もそうした電子顕微鏡像が垣間見せる生命の神秘、微生物の美に魅せられる人も少なからずいるものと思う。
 その手の展覧会や催しも随分、行なわれるようになっている。

 こうしたアートで生物に関連するものは、バイオアート(の一種)なのだろう(「生命カとバイオアート」(pdf)参照。)
 顕微鏡下の場合は、ミクロのバイオアートと呼称すべきか。

 例えばStephanie Valentin(.ステファニー・バレンティン ← 日本語の表記に自信がない)もその一人のようだ。
 彼女は、「Pollinate(授粉)」や「Ether(エーテル)」、「fathom(尋(ひろ)?))、「Chiasma(キアズマ)」、「Materia Prima(第一質料)」シリーズなどを制作している。
 今日はそのうち「Pollinate(受粉)」シリーズの画像を楽しむ。
 そう、小生は、その自然の造形の美と妙を愛でるだけで十分だ。

 あるいは、「USBマイクロスコープ」で遊んでみるってのも楽しいだろうなー。
 
 小生にはオーストラリア生れのStephanie Valentin(1962)は未知の人物なのだが、「Stephanie Valentin on artnet」によると:

Pollinate_06

← 「polygala (subdue), 2002 from Pollinate」 (etched pollen grain - magnification 4,00x) Gelatin silver print 18 x 21cm) (画像は、「Stills Gallery - Stephanie Valentin」より)

Stephanie Valentin Biography
1984 BA Fine Arts, (Photography) South Australia School of Arts
1987 Bicentennial Grant For Exhibition, ‘Rephotographing South Australia'
1989 Australia Council - Overseas Studio, Paretaio, Italy
1998 MArt (Painting), College of Fine Arts, University of New South Wales, Paddington Sydney
2001 MFA (Photomedia), College of Fine Arts, University of New South Wales, Paddington Sydney
2002 PhD candidate, College of Fine Arts, University of New South Wales, Paddington Sydney
2002 Australian Postgraduate Award

 この頁で掲げた「Pollinate(受粉)」シリーズの画像は、下記からのもの:
Stills Gallery - Stephanie Valentin

Pollen

→ 『二酸化チタンの「花粉」』(Samuel Shian(ジョージア工科大学)) (画像は、「顕微鏡が捉えた美の世界――『芸術としての科学』コンテスト WIRED VISION」)

 同上頁には、「Pollinate(受粉)」シリーズについて下記のように説明されている:

In her previous series pollinate (2002) she employed an electron microscope technique to etch words and marks onto the surface of microscopic plant pollen. Valentin takes the viewer into the microscopic realm of the natural world and introduces us to a physical and psychological landscape open to the imprint of human desire, reason and imagination.


参考]:花粉に限らず大気中に飛散する微粒子・粉塵に関連する拙稿に、文中でも紹介した「春になると…spring has come!」のほか、下記がある:
山笑ふ・花粉症・塵
黄砂に吹かれて
黄砂…地球環境の主役?!

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コメント

このギザギザが鼻の粘膜にくっ付くんですか~。ひゃ~!
私は幸いまだ花粉症ではないのですが、花粉症の人がこの画像みたら、それだけでくしゃみが出そうですね。

投稿: サラス | 2008/02/05 00:13

サラスさん

極微の世界の生き物。高度な数学の幾何を現実の世界に創出したような奇跡的で神秘的な美を感じます。
まあ、奇怪なものもあるけれど。

投稿: やいっち | 2008/02/05 03:17

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