ルーク・ハワード(前篇:雲と風景画と)
ルーク・ハワード(Luke Howard 1772-1864)とは一体、いかなる人物か。
一言で言うと、雲の分類を提唱し気象学を始めた人、ということになる。
→ リチャード・ハンブリン著『雲の「発明」 気象学を創ったアマチュア科学者』(小田川佳子訳、扶桑社) 本書に付いては、拙稿「水、海、と来ると、次は雲である!」において若干、紹介している。小生が風景画を数ヶ月に渡って特集するようになった、切っ掛けを作った本でもある。いい本に出会えた。
小生、リチャード・ハンブリン著『雲の「発明」 気象学を創ったアマチュア科学者』(小田川佳子訳、扶桑社)を図書館で手にした時、雲の分類がどうしてそんなに画期的なことか、まるで分かっていなかったので、本書にはほとんど(いや、全くかも)期待していなかった。
雲。誰だって目にすることができるもの。
が、雲の分類は各人が、あるいは各地域の人が勝手に行なっていて、世界に共通する用語も分類の方法もなかったのだ。
雲だけに、雲を摑むような状態だったわけだ。
雲の分類については、下記のサイトが詳しいし説明が分かりやすい:
「雲の名前(種類)」(ホームページ:「雲の学習」)
雲の分類の土台は、ルーク・ハワードLuke Howard (1772-1864)によって作られたが、「1894年、スウェーデンのウプサラで開かれた国際気象会議で、雲を大きく10種類に分けることが決められ」た(さらに最近では1956年に改訂されているが、基本は同じ)。
(参考) International Cloud Altas による雲の分類 クリック先はイメージ検索 ()内は俗称。
1. Cirrus (Ci) 巻雲(すじ雲)
2. Cirrocumulus (Cc) 巻積雲(うろこ雲/いわし雲)
3. Cirrostratus (Cs) 巻層雲(うす雲)
4. Altocumulus (Ac) 高積雲(ひつじ雲)
5. Altostratus (As) 高層雲(おぼろ雲)
6. Nimbostratus (Ns) 乱層雲(雨雲)
7. Stratocumulus (Sc) 層積雲(くもり雲)
8. Stratus (St) 層雲(霧雲)
9. Cumulus(Cu) 積雲(わた雲)
10. Cumulonimbus (Cb) 層積雲(雷雲/入道雲)
← 『Luke Howard - Sketches of Clouds: "Cirrus" Clouds』 (「巻雲(すじ雲)」 画像は、「Weather Brains Luke Howard (1772-1864) - Weather New Zealand - weatheronline.net.nz」より)
さらに詳しく知りたい方は、下記がいい:
「水の科学・科学館④気象学(雲について)」
気象学は19世紀になって出来た。
それ以前だって、天気の予報は漁師・農民・商人などの庶民にも国家(の統治者)にとっても、重要な課題だった。
時に神頼みだったこともある。日食で権威を失った祭政一致の時代の為政者もいただろう。
そもそも、明日の天気は、どうやって知るか。観天望気しかなかっただろう。経験と勘に頼るしか他に方法がありえたとも思えない。
まして、為政者ともなると、明日の天気だけじゃない、今年の天気、来年の天気の予測ができないといけない。
でも、できるはずがあるだろうか? 現代だって難しいのに。
天文学の重要性、気象学とは言えなくとも天気を読むことの重要性は誰しも骨身に沁みて感じていた。
→ 『Luke Howard - Sketches of Clouds: Anvil Cloud』 (画像は、「Weather Brains Luke Howard (1772-1864) - Weather New Zealand - weatheronline.net.nz」より)
「観天望気 - Wikipedia」によると、「観天望気(かんてんぼうき)は、自然現象や生物の行動の様子などから天気を予想すること。またその元となる条件と結論を述べた、天気のことわざのような伝承」という。
← Luke Howard (1772-1864) (画像は、「Weather Brains Luke Howard (1772-1864) - Weather New Zealand - weatheronline.net.nz」より)
「観天望気と天気の諺」によると、「観天望気は、簡単にいうと空を見て天気の移り変わりを推測すること。天気図のなかった時代、人々は色んな自然の変化をとらえてお天気を予測していました。その経験則を諺にしたのが天気諺(天気俚諺とも言う)です」というが、天気の諺の多いことに改めて驚かされる。
いや、驚くほうが能天気なのかもしれない!
天気を知る。それには空模様を観察するに勝る方法はない。特に風向きや雲。
経験で雲の流れ動きが天気と相関していることは古来より知られていた。
でも、その雲をどう観察する。空の雲を口をあんぐり開けて眺めるしかない。
実際、地上にあって雲を観察するといっても、限界がある。雲の形や動き、変化の早さなどで数時間後、翌日の大よその予測は出来ても、それ以上の何が可能だったか。
できれば、雲をできるだけ近くに寄って観察したい。そう願うのは人情だし、必要なことでもある。
→ 『Cumulus Clouds by Luke Howard』 (「積雲(わた雲)」 画像は、「Royal Meteorological Society - Luke Howard and Cloud Names」より)
でも、どうやって雲に近付く。イカルスのように天に向かって舞い上がる?
一番、現実的に可能なのは、高い山に登ること。遠目にも雲の種類によっては、山の頂に掛かっているように見えることがあるし、山に登って峠から遥かに展望した人は、時に雲が自分の周りを漂っているのを体験したりする。
あるいは、低い雲なら見下したことだってありえるだろう。
しかし、雲の実態は何なのかは、雲の中に入って観察するのが一番である。
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