増山麗奈:そんなあなたに会いたくて(後篇)
例年通り、クリスマスはイブも当日も一人静かに過ごした。
今年は営業で都内を走り回ることもなく、自宅に篭っていたので、街の賑わいも一切、分からない。思えば、クリスマスソングを一回も(テレビやラジオを通じてさえも)聞かなかったのは、物心付いてから初めてだったような気がする。
世界の片隅でポツンといる感覚。
← クロード・モネ『かささぎ』 (画像は、「クロード・モネ-音楽・映画、言わせておけば」より) 昨日、ネットで見つけた一番のお気に入り。実は、この絵に遭遇したので、今日はクロード・モネを特集しようかと一時、思ったほど。郷里は今頃、こんな雪景色かしら…。
けれど、時間は確実に流れている。どんな過ごし方をしようと、25日が過ぎ26日となり、年末へとカレンダーの日付は捲られていく。
流されないためにはどうする?
一番いいのは、流れに身を任すことか!
というわけで(?)、「増山麗奈:そんなあなたに会いたくて(後篇)」を提供する。
→ 増山麗奈作 題名不詳。「ピンク」か。画像は、「増山麗奈の革命鍋! ピンク」より。「特に意味はないけどこんな気持」というこの絵、好きだ。何匹もの卵子の迷宮に数知れない精子たちが迷い込んで、気持ちよさそうに戯れ絡み溺れている ? ! いや、その逆かもしれない! 麗奈さんの格言によれば、「あさっての方向であっても、皆で全力疾走すればどこかへは通ずる!(多分)」だってさ。
森下泰輔氏による増山麗奈(ますやま れな、1976年12月25日-)氏の絵画論は以下である:
どちらかといえば行為の話題が先行して絵画論が語られることの少なかった増山だが、実は相当な描き手でもある。系譜を探るとすればおおまかに2つのルートが必要だ。ひとつは、ドメスティックな問題としての戦後日本「ガーリー・アヴァンギャルド」の系譜。ここにはネオダダイズム・オルガナイザーズの一員だった故・岸本清子との比較論なども含まれよう。いまひとつはアンディ・ウオーホル以降としてのPOPの系譜だ。バスキアやニューペインティングのなかに見られたプリミティビィズム(原初性)のアイコンが増山絵画の中にもある。60年代以後の世界美術史は、ポストモダン状況に突入し、近代合理主義が排除してきたアウトサイダーの要素が一気に噴出して主流を形成してきた。増山麗奈の絵画もそうしたアウトサイダーアートとして優れている。

← 増山麗奈著『桃色ゲリラ ― PEACE&ARTの革命』(社会批評社自殺願望に取り憑かれた女性も萎えて困っている男も必読!) 小生は、「桃色のゲリラ眠れる我起こす」にも書いたが、会場を後にするとき、特設ショップで本書を買った際、彼女にサインをおねだり。すると、気軽にサインに応じてくれただけじゃなく、小生の似顔絵もサラサラッと。ありがとね。今も、パソコンデスクの脇に置いてある。家宝だ。部屋の本をつい先日、粗方、処分したが、本書は残した。
小生自身はというと、絵画にも政治思想にも関わったことがないし、造詣の欠けらもない。
絵画については少しは関心を抱いてきたが、「アンディ・ウオーホル以降としてのPOPの系譜」には特に疎い。というよりも、自分の感覚が古びていて、完全に置き去りにされているという気さえする。
小生は戦後の抽象表現主義辺りで留まっていて、ポップなアートにはフットワークが重すぎる。
そう、何処か未だに重厚長大を良しとするとする気味が重石のように自分を押し留めている。
→ 増山麗奈作 画像は、「増山麗奈の革命鍋! バッキーの居ない夜」より。「岡本太郎現代芸術賞に作家澤田さん入選/Web東奥・ニュース20070227」参照。
旧弊な殻や柵に囚われている自分という意味で小生は、増山麗奈氏の油彩より岡本太郎現代美術賞入選である絵本「幼なじみのバッキー」(澤田サンダー /文 増山麗奈 /絵)に挿画として載る増山麗奈氏の淡彩の絵が好きである:
「アートとエロスと育児と革命!画家「増山麗奈」の公式WEBサイト Works - 過去の実績紹介 LAN TO FACE」(澤田サンダー氏のブログ:「緑のマルマル子」 尚、「幼なじみのバッキー」は08年1月に出版の予定)
← 増山麗奈作 題名は不詳。テーマ(?)は、「幼なじみのバッキー」自分が舐めて、いかせた女の山を登っていくバッキー(妄想)」か。画像は、「増山麗奈の革命鍋! エロ画」より
油彩が自己主張を堂々ストリートでパフォーマンスする表であり陽の増山麗奈氏であるなら、絵本の絵は陰の増山麗奈氏であり、植物人間風な小生は彼女のパワーに圧倒されがちなのだが、絵本の絵はふと見せた彼女の素顔という趣があり、親近感が湧いてくる。
というより、これらの絵のほうが案外と彼女の才能をストレートに表しているように思えるのだ。
これは褒め言葉になるのかどうか分からないが、絵に生活感がある。若い表現者だと理論や夢が先走るばかりで、いざ作品となるとギクシャクした表現になりがちで、鑑賞するほうは戸惑うばかりだったりするが、小生には窺い知れない体験の積み重ねがあって、感傷に堕すことのない情感がゆったりと漂っている。
→ 増山麗奈氏というと、何と言っても母乳アート。この絵を掲げないわけにいかない。(画像は「増山麗奈の革命鍋! 深夜ぶつぶつとプレスリリースをつくるのです」より) 小生も、「ART LAN@ASIA~アジアの新☆現代美術!!」展の会場で母乳飛ばしを実見した。その画像も(鮮明ではないが)、ブログに載せた。
悲しいかな、「幼なじみのバッキー」なる絵本で、というより「ART LAN@ASIA~アジアの新☆現代美術!!」展の会場で観た原画で幾つも気に入った絵があったのだが、残念ながらネットではあまり画像を見つけることができなかった(一部、画像のコピーが不可だった)。
これは、やはり、来年刊行される本「幼なじみのバッキー」を買うしかないってことか!
(07/12/10作)
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