増山麗奈:そんなあなたに会いたくて(前篇)
[この春に彼女の企画展へ足を運んだ。凄い人だと思った。で、そのうち彼女の展覧会やパフォーマンスを改めてじっくり見てから特集を組もうと思っていたが、生憎、小生の怠慢と無精もあり、とうとう半年以上も先延ばし。今日25日は増山麗奈氏の誕生日だとか。中途半端ながら、今日と明日の前後2回に分けて、同氏のミニ特集をアップする。…ここで遠くからだけど、増山麗奈さん、誕生日、おめでとう!!]
→ 増山麗奈作 題名は不詳。画像は、「増山麗奈の革命鍋! ついに麗奈タン個展☆「ネオ春画」6月18日からだよ!」から
某サイトで知った増山麗奈氏の活動ぶりや、彼女の仕事(作品)の一端をでも知りたい、触れたいと思い、今年の春、「ART LAN@ASIA~アジアの新☆現代美術!!」なる展覧会へ行ってきた。
その際のレポートは既に、「桃色のゲリラ眠れる我起こす」の中で大よそのことを書いている(関連して、「桃色の夢見るごとく花盛り」なんて呟き風な雑文も続いて書いた)。
その増山麗奈氏の活躍が一層、目立ってきて、今やメジャーになりつつある。メジャーという表現を彼女は嫌うかもしれない(が、そんなことでどうでもいいと、頓着しないかもしれない)。
テレビのヴァラエティ番組にも月刊・週刊を問わず雑誌にもしばしば登場している。また、活躍は年末年始を含め来年も予定が目白押しのようだ(今日25日も渋谷・TAKE OFF 7(テイクオフセブン)で夕方、誕生日ライブを行なうとか)。
← 増山麗奈作 題名は不明。画像については、「増山麗奈news 6月18日(月)〜6月30日(土)増山麗奈個展『ネオ春画』」参照。
同氏の活躍は多岐に渡るので、全貌を知る由もない。
ただ、小生の好みに従って、同氏の作品を幾つか見てみたい。
同氏のアーティストとしての系譜や突っこんだ理解というと、下記が参考になるかもしれない:
「増山麗奈news 6月18日(月)〜6月30日(土)増山麗奈個展『ネオ春画』」
→ 増山麗奈画「とかいのあなたに会いたくて」(個人像 15センチ×15センチ キャンバスに油彩) (画像は、「増山麗奈の革命鍋! とかいのあなたに会いたくて」より) 小生、増山麗奈氏の作品の中では、この作品が一番、好き! やっぱり、小生の感覚は古い?
directorの森下泰輔氏の紹介の冒頭については、デジタル化しバーチャル化する社会においての肉体的存在感の稀薄化に危機感を覚える小生、僭越ながら問題意識として幾分かは共有するところがある:
現代の人間は身体がますます細り退化しているように見受けられる。極端に肥大し、専門化しおたく化して情報だけが無意味にぎっしりつまった脳と、棒のように萎縮した身体は、まさに皮膚感覚の消失した残骸のような内臓の記憶のみによって無惨に存在を続けている。触手のようなチューブ状の器官を様々なネットワークにつなげては、そこからかろうじて養分を吸い出し、吸い尽くすと再び他のネットワークに触手を伸ばす。そんなある種昆虫化した人間像が思い浮かぶ。
← 増山麗奈作 題名不詳。「現代の絶望にどう対抗すれば良いのだろうかとか、母乳には一体何が入っているのだろうかとかいろいろ悩んだ結果、単純に愛すべき我が子らのドローイングなどを描いてしまったりして」 (画像は、「増山麗奈の革命鍋! 個展きてね〜転送歓迎」より)
そんな中、増山麗奈氏の活動は先鋭的であり、ストレートである:
現在、もっとも行動的で過激なアーティストの一人、増山麗奈の闘いもそんな状態への憂慮から始まったように思える。21世紀の始まりを暗くいろどったあの「9・11」にショックを受け、イラクにいき、女の子だけのパフォーマンス集団「桃色ゲリラ」を結成し、街頭で集会で全身全霊を傾け「NO WAR」を叫んできた。そう、増山麗奈はつねにストリートにいた。狭義には非人間的な権力や男権的武力に対する増山の本能的な闘争をそこに見る。だが、増山は「おんな」であること「はは」であることを隠そうともしない。現在各地で展開している母乳噴射パフォーマンスにもそれはあらわれている。「おんな」として「はは」としていささかの気負いもなく平然と立っているのだ。その意味で20世紀的な左翼的運動ではすでにあり得なかった。
→ 増山麗奈作 「足を怪我したバッキー」 画像は、「増山麗奈の革命鍋! 血と暴力」より
森下泰輔氏は、「エロスが人間性の回復に大きな作用を及ぼすことは、ジョルジュ・バタイユの論を引くまでもないだろう。増山は広義には、萎縮した人の身体性全体のメンテナンスと回復をエロスによって図りたいのだ。「かならず勃起させます」という意気込みのなかにも、その気合が漲っている」として、増山麗奈氏の談を載せてくれている(バタイユについては、拙稿に「バタイユ著『宗教の理論』」がある):
セックスレスに悩む夫婦や、現実の女性と向き合わず、アニメやゲームなどバーチャルな女性に憧れる男性も多い。日本人のセックス回数は年々減少しています。それが生命力の低下や社会の閉塞感に繋がっていると思います。もっと人と人とが仲良く性生活を楽しんで欲しい。そしてみんな笑顔になってほしい。そんな願いが今回の個展には込められています。
← 「ART LAN@ASIA~アジアの新☆現代美術!!」のポスター(チラシ) (画像は、「増山麗奈の革命鍋! チラシが出来た」より) こういう企画をし実行し成功させてしまうパワーに脱帽。そのエネルギーを社会が放っておくはずがない。
増山麗奈氏の言葉というと、彼女はいつも本気モードな人のようで、「増山麗奈の革命鍋! 命をぜんぶつかいたい」の一文は、メッセージという意味でも鮮烈である:
どうせ一回しか無い人生。私の体のすべてを使い切ってみたいと思うのです。例えば、大根を葉っぱまで全部お味噌汁に使うと、
「もったいなくないな。」
と思うでしょ。
そのように、与えられた自分の人生のすべてを使って燃え尽きてしまいたいのである。膝の裏っかわが性感帯だってことを最近知ったのだ。
裏っかわの細胞まで使ったよ、お母さん、産んでくれてありがとう。お母さんに産んでもらったからだ、全部おいしくいただきます。
という事は、たかが162センチな私の体には無数の未だ開発されていない性感帯が眠っているはずで。そう思うだけでアメージング。だから、知った振りをして絶望してる諸君も見ると腹が立つのだ。
人生には未だ知らぬ性感帯がねむっているのだ!見た事も無いきらきらした世界が待っているのだ。自殺とかしちゃいけんのだ。
「増山麗奈:そんなあなたに会いたくて(後篇)」に続く。
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コメント
すばらしい特集ありがとう!人生感じまくってなんぼ!
絵を描いて、たくさんエッチしてまだ見ぬ性感帯を探しまくる所存でありますので、今後もよろしくお願いいたします。
投稿: 増山麗奈 | 2007/12/26 16:16
増山麗奈さん
すごいなって思うばかり。
これからもっともっと輝いてね。
投稿: やいっち | 2007/12/26 19:15