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2005/07/17

レイチェル・カーソン『沈黙の春』…

 今日、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読了した。読んでいて、なんだか万感胸に迫るものがあった。それも、内容以外のところで。
 もしもレイチェルの人生や本書を書く背景事情を知らずに読んだなら、ああ、口うるさい、正義感ばかりが先走る女性の本だなという感想を持ったかもしれないと、妙な感想を抱いてしまった。
 彼女がガンとの戦い、時間との戦いの中で、自分の使命、まさに自分が遣り遂げなければならない仕事として、この著作を書き上げた。徹底して調べ上げ文献を確かめ根拠を確認し、情報を網羅し…。
 彼女が若い頃から著作家になりたいという願いを持っていたことは伝記(リンダ・リア著『レイチェル』)を読み終えた小生は知っている。けれど、若い頃は、科学者の観察眼に裏打ちされた、しかし、もっと詩情溢れる、物語性の加味された本を書きたかったはずだ。小説ということではないとしても。『センス・オブ・ワンダー』のような。
 が、或る日、この仕事は自分がやらなければならない課題だと自覚し、文字通り身命を賭して遣り遂げた。もしも、彼女がもう少し、科学者としての使命感や正義感よりも海を愛する、生き物を愛する気持ちに生きられるような人だったら、もっと楽な(?)人生が送れていたのだろうか。
 やはり、無理か。彼女は彼女の人生を生きたのだ。人生に、たら、れば、などありえない。このようにしか生きられなかったのだ。しかし、それでも、なんというか…。


[ 本稿は、季語随筆「石綿…火浣布」(July 11, 2005)から、書評エッセイ(感想文)に類する部分を抜粋したものです。リンダ・リア著『レイチェル』を読んだ小生、本書を読みながら、ただただ哀切・痛切な気分を覚えているばかりだった。感想文にさえ、ならない…。 (05/07/17 補記)]

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