フォーティ『生命40億年全史』(3)
本稿は、リチャード・フォーティ著、渡辺政隆訳、草思社刊の『生命40億年全史』を扱う(3回目):
生命は宇宙から飛来したという説は古来よりある。この説では、結局、生命の起源についての説明を、下駄を宇宙に預けるという形で先延ばしというか、他人(宇宙)任せにしたことになる。
それでも、生命の起源(由来)説の一つとして有力であることは否めない。
すなわち、たとえば、某所で見つかった最古の堆積岩のなかに生物が存在したことを示す直接的な証拠を発見した、あるいは地球外生命が存在したことを示す証拠が見つかった、炭素質コンドライト中から見つかった球体構造物は、明らかに有機体のものと思われる、細菌は宇宙から地球に飛来した。
生命とは、地球だけに見られる特異な現象ではないし、太陽系の中の地球の位置関係などの好都合な諸条件の結果などではない。宇宙のほとんどどこにでも存在するありふれたものだ。生命の種子は偶然に左右されてあちこちに撒かれている。地球その他の惑星のそばを通過する彗星は、宇宙から地球へのおあつらえむきの捲種器だったという内容の講演は、それなりに説得力を持つように思われた。
生命の素材として欠くことのできない炭素化合物のうちの一部は、誕生後間もない宇宙の創造のるつぼで合成されたものかもしれない。「実際、星間空間にはたくさんの種類の有機分子が存在している」
さて、地球上で最初に成功した細菌は、エネルギーをつくりだすために光を利用する種類の細菌だった。その細菌は、クロロフィルすなわち葉緑素が光から受けとるエネルギーを利用して二酸化炭素と酸素に分けた。炭素は自らの成長に利用し、酸素は副産物として体外に放出した。この過程が光合成で、あらゆる緑色植物を駆動させる原動力を生み出すシステムなのである。(p.71-2)
ついで現れたのが光合成色素の色、緑色の世界で、その立役者はシアノバクテリア(藍藻)だった。彼らは細胞分裂を際限なく繰り返し、時に個体数の爆発的増加が起きることもあった。彼等の増殖が地球を緑色に変えたのである。
同時に、原始大気を光合成の作用によって変質させていった。二酸化炭素が減り、酸素が増えた。
さて、今、喫緊の課題の一つはエネルギー問題にある。化石燃料に頼らないような形でどうやってエネルギーを生じさせるかが課題なのである。可能なら太陽のエネルギーを直接利用できるのが一番いいわけだ。太陽エネルギーを必要に応じていつでも電気とか熱に変換できるなら、これが望ましいというわけである。
その究極の原理を高度な効率性をもって実現しているのが植物の光合成なのだ。
参照:
「産業技術総合研究所 - 地球を救う光合成!?-植物は地球最大の化学工場!?-2-」
「日本に降り注ぐ太陽のエネルギー」
以下のサイトは、「ドキュメントは、1996年1月(正月)に、NHKが放映した「生命40億年遥かな旅1~10」 の一部を、テキストに変換したもの」とのこと:
「生命40億年遥かな旅」
下記のサイトは概して読み物として読んで楽しい:
「社会生命科学の資料集」
(03/06/09)
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コメント
弥一さん、興味ある書物の紹介有難うございます。太古の細菌類については、何処かで聞いた覚えがあったのですが、火山との関連は初耳でした。火星や金星探索時にはこの点も配慮されたのでしょうね。今度は雷のエネルギーと話題が溢れています。こうして窺うと、数十年前には高等生物は地球に似た環境にしか存在しないという事だけが何度も繰り返されていたのが思い浮かびます。勿論昔の火星人のイメージなどはあまりにも雑な話だったわけですが、このような本を読むとSFだけでなく既に人類の地球外生物への認識が大分変わってきているのではないかと察します。科学的常識が研究過程の想像力と洞察力を持って覆されていくのでしょう。こうして私たちは、コペルニクスからガリレイ、ニュートンへのような展開を再び経験するのでしょうか。環境の中で必然があって存在、発展している人類文明のあり方を考えさせられます。植物や細菌類が実は、最後の繁栄の王国を待ち構えているなんていうこともありえますね。破傷風菌でさえもそこら辺にじっと隠れておりますから。
投稿: pfaelzerwein | 2005/01/18 00:21
pfaelzerwein さん、コメント、ありがとう。
「植物や細菌類が実は、最後の繁栄の王国を待ち構えているなんていうこともありえますね」タイトルは忘れたけど、そんなテーマのSFがありましたね。宇宙空間のガス雲それ自体が生命だというものも。
一個一個が分子ほどの超小型のコンピューターが出来て、霧状に空を、それとも宇宙を舞う、それら無数の分子コンピューターが相互に関わりあって、高性能のパソコンとなって宇宙を彷徨う。
そのPCがさらに小さくなって、ウイルスほどになったら。世界は全く違ってくるかもしれない。あるいは、ウイルスこそが我々より早く高度に発達した知性体の作り出した究極の人工頭脳で宇宙の生命体などに次々と取り付いて生き延びているのかもしれない。
投稿: 弥一=無精 | 2005/01/19 19:52