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2005/01/17

フォーティ『生命40億年全史』(2)

 本稿は、リチャード・フォーティ著、渡辺政隆訳、草思社刊の『生命40億年全史』を扱う(2回目)。

 地球上には想像を絶する生命体が存在している。その中にはもしかしたら初めて出来た当時の細胞のあり方を保っているような古細菌がある。そうした原始的な生き物の属性はまさに特殊としか言い様がない。
 そうした古細菌の正式名称は「超好熱性化学合成無機独立栄養生物」である。
 多くは尋常ではない熱さを好む。「摂氏八〇度を切れば増殖できなくなるし、しかもその多くは沸点付近で活発に増殖する。それらが見つかる場所は、火山の火道、海底の熱水噴出孔周辺、地底の奥深くである」ある古細菌は、「その成長に最適な温度はなんと摂氏一〇五度である」生息する場所が場所だけに、目に入らないことが多いようだ。
 こうした古細菌(一般の真正細菌とは別のグループをなす)と呼ばれる超好熱菌のなかの硫黄代謝好熱古細菌とメタン生成細菌が、あらゆる生物の祖先と近い関係にあることが証明された」のだという。 (p.62)
「リボゾームRNAの相対的な類似性と、全生物共通のある種の酵素の合成を指令する遺伝子にもどづく系統樹によって明かされた」のである。
 その系統樹については、このサイトを見て欲しい。

 この「系統樹からはっきり言えるのは、すべての生物の共通祖先は極端に高温の生育環境でなければ生きられないものだったということである。
 そればかりか、そのほとんどは嫌気性細菌だった。つまり、無酸素条件下でなければ生化学反応が進行しないのだ。酸素は生物の育成にまさに必要不可欠なものの一つと考えられているが、じつは古細菌の多くにとっては致死的な毒物なのである」 (p.62)
 つまり、生命が誕生したのは、(略)酸性できつい硫黄の臭いを発散する地獄のような所だったと、現在は考えられている」という。
 最初の細胞はどこで誕生したのか。ある学者は、その場所は硫化物を含む熱水の噴き出し口付近ではないかと主張している。
 現在でも深海底で高温の熱水が噴き出している場所があり、それらは熱水噴出孔「ブラックスモーカー」と呼ばれている。
 ブラックスモーカーなどについては、このサイトを参照願いたい。
 このサイトから一節だけを引用する:

「硫化物の沈殿物で黒くなった高さ10m、幅40cmの煙突状の噴出孔からは、高温の熱すいが吹き上げられていた。このブラックスモーカーの噴出孔の温度は、350℃を示していた。そしてその周囲には、生物コロニーが幅30m、長さ100mくらいの地域の占めていた。この生物群集は、光合成や太陽エネルギーとは全く無縁であった。これらの生物は、噴出孔からの多量の栄養分によって養われていたのである」
 まさにドラマチックだ。

 こうした古細菌は酸素がわずかしか存在しない原始地球の還元型の環境に生まれ育った。それがやがて地球上に酸素が蓄積され、彼等だけの繁栄の日々は終わった。今日では当時の環境とよく似た条件の場所にのみ生息している。
 ただ、フォーティも語るように、彼らはタフな生き物であり、「今後いかなる大量絶滅や隕石衝突が起こったとしても、かれらだけは生き延びるだろう。地球の揺籃期にそれらすべてを、あるいはもっと過酷な条件さえくぐり抜けてきた」
のだから。
 
 だが、しかし、生命誕生のシナリオは、これだけではない。生命は宇宙から飛来したという説もあるのだ。

                                 (03/05/27)

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