内田百閒『百鬼園随筆』
本書は昭和8年10月に三笠書房より刊行され、平成6年5月に福武文庫としても収録されたものらしい。小生が読んだのは、平成14年5月に新潮文庫に収録されたものである。昨年末、近くの駅ビル内の書店で見つけたものだ。
誰だったか忘れたが、百閒の随筆を褒めていたことも、頭の片隅にあったに違いない。車中で暇の徒然に読むに最適だろう。それに、見様見真似で小生も雑文を書くので、少しは参考になればという欲目もあったような気がする。
内田百閒については、知る人ぞ知るという存在になってしまったかもしれない。参考に年譜を見てもらえたらと思う。
1889年5月29日、岡山市に、老舗の造り酒屋の一人息子として生まれる。本名は栄造。(途中、略)1971年4月、82歳で死去。
うーん、小生が高校最後の年度には御存命だったのだ。
上掲のサイト運営者による内田百閒の読書感想がいろいろ読める。
ちなみに、小生は、下記のサイトで、故黒澤明監督の「まあだだよ」という映
画中の「先生」のモデルが、内田百鬼園先生だと初めて知った次第である。
さて、百閒の随筆は独特の味があって面白い。妙に依怙地で頑固で、でも好奇心たっぷり(好奇心旺盛というのは、エッセイストの必須条件ではなかろうか)で「阿房列車」シリーズという旅に絡む人気作を書いている。
本書『百鬼園随筆』の圧巻は、「百鬼園先生言行録」だった。抱腹絶倒という決り文句を使いたくなってしまう。こればっかりは中身を要約しても始まらない。
あと、昔の作家の常だが、借金に苦しむ日々を描く随筆も格別だ。
そういえば、過日、読了した島崎藤村の『春』の中でも主人公(つまり藤村自身)が借金に苦しめられ、方々金策に回る姿が描かれていて印象的だった。
とにかく、随筆というのは、味わいが全てだ。そして、恐らくは人柄なのだろう。上記したように、映画のモデルになるほどの人柄の持ち主だったのである。
楽しい読書を望むなら、本書(内田百閒もの)は、間違いない。
[旧題:「内田百閒『百鬼園随筆」』 (03/01/11)]
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