ヤコブ・ラズ著『ヤクザの文化人類学』
「ヤコブ・ラズ著『ヤクザの文化人類学』雑感」
今、読んでいるヤコブ・ラズ著の『ヤクザの文化人類学』(高井宏子訳、岩波現代文庫)は、ひどくつまらない。
こんな言い方をすると偏見に満ちていると言われそうだが、いかにも岩波書店が出しそうな(出せそうな)ヤクザ(やテキヤなど)についての当り障りのない文献だ。
車中で先週、読みつづけていたが、もう、退屈さに我慢がならず、今日、残りの部分を読み飛ばすことにする。
何がつまらないかというと文化人類学的御託があまりに大仰で、その割にヤクザ社会への切り込みが甘い。これは全く、転倒している。
十年程前、D.E.カプランとA.デュプロの共著による『ヤクザ』(松井道男訳、第三書館刊)を読んだが、こちらはヤクザと右翼暴力団の実態や日本の企業社会との絡みを抉っていて、読み応えがあった。時代にビビッドに感応しているタイムリーな書だった。
世界七カ国語翻訳の国際的ベストセラーであるにも関わらず、さすがに日本では翻訳出版するところがなく、ようやく第三書館が出すことになったというイワクつきのものだ。
こういう本は岩波では決して手が出せないだろう(出すつもりもない?)。現代に関しては、人畜無害な空論を振り回す理論書でないと怖くてダメってこと。後は古典で頑張ればいいのだろう。
後者の本が出された当時、佐川急便事件とか、野村證券による右翼総会屋への不正利益供与事件、リクルート事件、金丸信ゼネコン汚職事件など、自民党政権の終焉を意味する事件が頻発していた。
その後は住専(住宅金融専門会社)問題で、公的資金を投入し、住専の大口債権者だった農林系金融機関を助けました。住専問題で焦げ付いた融資の大半は不動産投資であり、その多くに暴力団が絡んでいたことは周知の事実。つまりは、暴力団との絡みが露見されたくなくて、政官界がこぞって公的資金の投入に奔走したわけだ。
[住専処理問題については、ここを参照のこと]
しかし、こうした数々の不透明な事件の数々にも関わらず、結局、自民党は生き残り、政界・官界・企業界の闇と混迷は、行き着くところまで行ってしまった。
今度は日銀が、不良債権問題に絡み、銀行や民間の企業を救済するため株を購入するという。
政権の交代がないと、ここまで汚職と腐敗が進むという、悲しい忌むべき現実が今、進行中なのだ。
しかし、これも日本国民の選んだ政権の行う事だ。悲しいけれど、日本丸に乗る日本国民は、みんなで沈めば怖くないという諦めの心境なのかもしれない。
尤も、金持ちは海外へと資産の移動を始めているらしい。沈みゆく船に、いつまでも乗船はできないってこと。さすがに目ざとい。
(02/09/29)
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