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2004/11/28

池波正太郎著『銀座日記』

「池波正太郎の『銀座日記』を読了」


 作家とはいえ、これまで彼の小説を一冊も読んだことがないのに、彼の日記を全く退屈せずに読めたのは、不思議。
 美味いものを食べ、映画(大抵は試写)や芝居を見、買い物も自分で済まし、体の具合を常に気遣い、そして小説を書く。
 彼は、小説を依頼され、いざ、書くに当たっても、小説の成り行きを予め考えたりしない。とにかく、最初の場面を書き始めて見る。やがて、人物設定とかが形を為してくる。すると、その先も書けそうだ、という気分になるのだそうだ。
 凡そ、ストーリーを考え出す才能の欠片もない小生は、彼らのような面白い小説を書ける人が凄いと、ただ、感服する。
 この日記もそうだが、読む人を気持ちよくさせてくれるのだ。文庫本で5百頁の本で、楽しんで読めるので、もっと、ゆっくり読み進めるつもりでいたけど、最後は土曜日の夜半から夜明けにかけて、一気に読んでしまった。
 読了して惜しい気がしたり、寂しい気がしたり。
 でも、やっぱり小説を読まないと、ホントの池波正太郎さんは語れないんだろうね。
 小生が池波正太郎の時代小説を未読なのは、やはりテレビの影響だろうと感じている。といっても、時代劇を見て、小説を読む気が萎えたというのではなく、あまりに鬼平犯科帳や剣客商売、雲霧仁左衛門、梅安etc.を見て、池波正太郎の世界を堪能したという気になってしまったからである。
 それでいて、藤沢周平の小説は、テレビで見たが、実際に買っているのだから、辻褄は合っていない(『溟い海』なんて、最高!)。
 もしかしたら、テレビで池波正太郎原作の時代劇を見たとき、ドラマの中に必ず入る洒落た、小粋な食の世界に、未だ幾分の反発心めいた気持ちがあったのかもしれない。
 美味しいものを食べることは好きなくせに、何処か禁欲的な心の働きがあって、池波正太郎の世界に素直に浸ることができなかった…ような気がするのだ。
 ま、理由はともかく、小生の郷里である富山とも縁の深い(池波さんの先祖は富山の井波町の方だった)池波正太郎さんの時代小説の世界は、これからの楽しみに残してあるのだと考えておくことにする。

『池波正太郎の銀座日記〔全〕』 池波正太郎著 新潮文庫
 参考:いなみ正太郎グルメの会

                            (02/08/04)
[その後、今年の夏になって、相当程度、読むことが出来た。嬉しい限りである。その代わり、一昨年にはあった「いなみ正太郎グルメの会」の存廃がどうなったのか、不明なのが悲しい。]

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コメント

池波さんのものがお好きなようですね。

ココログで[盗人探索日録]を始めました。よかったら、お遊びにいらしてください。
ココログの検索で 鬼平 といれると、ざっとでてくるはずです。

『鬼平犯科帳』を深読みするHPは、Google の検索で 鬼平と入れてみてください。上から2番目、『鬼平犯科帳』と彩色『江戸名所図会』がぼくのサイトです。

[お気軽 書き込み帳]や[週刊掲示板]がご興味を引くのではないでしょうか。

また、よさせていただきます。

投稿: ちゅうすけ | 2005/01/02 13:28

 ちゅうすけさん、来訪、コメント、ありがとう。
 池波正太郎の本は、昨年、まとめて読む機会がありました。その前は藤沢周平。慕わしい世界ですね。
 江戸時代の情緒や風物に接するのが楽しい。

投稿: 弥一です | 2005/01/04 20:45

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