旧稿を温めます
2025/03/20
2025/02/02
2024/11/18
2024/09/04
昼行燈117「夏の終わりの雨」
「夏の終わりの雨」
俺は眠れないままに闇を見詰めていた。
じっと眺めていると、見えないはずの闇の中にいろんなものが見えてくる。
分厚いカーテンの向こうの何処か靄の掛かったような夏の終わりの夜の闇が、まるで船底の罅割れから水の洩れ入るように俺の部屋を満たしているようだった。
内と外とを厳格に分けるために、高いカネを払っておんぼろなアパートには不似合いな遮光カーテンを下げたのに、まるで役目を果たしていない。
2024/08/27
2024/08/20
2024/08/12
昼行燈112「サナギ」
「サナギ」
剥き出しなんだよ。裸じゃないか。皮膚さえ剥がれて。
まっさらのこころ。まっさらすぎて、この世では淡雪の如く、生まれた瞬間から手足の先が融けていく。
顔が蒸気のように大気に呑み込まれていく。
自分でも嗤っている。可笑し過ぎて涙もでない。
2024/08/09
昼行燈111「長崎幻想」
「長崎幻想」
浮腫する肉体。血肉の蒸発する風船玉。まるで癇癪玉だ。ああ、涙が出るほど滑稽な光景だ。ゴロゴロ転がっている。
衣服さえも天に召し上げられたのだ、髪など熱風と共に蒸発するのは当然じゃないか。髪は天へと揮発し、あるいは肉の底へと巻き込まれ縮こまっていった。天が地上世界をのし歩き睥睨して回る時、髪の毛など屁にもならぬ。
2024/08/07
昼行燈110「長崎の黒い雨」
「長崎の黒い雨」
長崎の地に降った黒い雨に俺は祟られている。あの、紫よりも周波数の 高い、怒る光のシャワー。肉が蒸発し、血が噴き、肺腑が踊り、羊水が煮え滾った。胎児は生煮えとなり、妊婦は遮光土器の模様と化した。鉄骨が蕩け、瓦が泡立ち、石が煤となり、コンクリートが灰燼に帰した。
2024/08/06
昼行燈109「日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル」
突如 空襲 一瞬ニシテ 全市街崩壊 便所ニ居テ頭上ニサクレツスル音アリテ 頭ヲ打ツ 次ノ瞬間暗黒騒音
その時を境に私は変わった。昨日の私は消滅し新しい私は居場所を天に変えた。
薄明リノ中ニ見レバ既ニ家ハ壊レ 品物ハ飛散ル 異臭鼻ヲツキ眼ノホトリヨリ出血 恭子ノ姿ヲ認ム マルハダカナレバ服ヲ探ス 上着ハアレドズボンナシ
私は全てを見ようと決心した。私とは非在の焔。それとも存在の無。
より以前の記事一覧
- 昼行燈108「無音の木霊」 2024.08.02
- 昼行燈105「月に吠える」 2024.07.24
- 昼行燈104「赤茶けた障子紙」 2024.07.24
- 昼行燈103「おしくらまんじゅう」 2024.07.23
- 昼行燈100「踏切の音」 2024.07.18
- 昼行燈99「迷子」 2024.07.16
- 昼行燈98「「ラヴェンダー・ミスト」断片」 2024.07.14
- 昼行燈97「私はゴムに 私はコンクリートに」 2024.07.10
- 昼行燈96「夜は白みゆくのみ」 2024.07.09
- 昼行燈95「海月」 2024.07.05
- 昼行燈93「ハートの風船」 2024.07.01
- 昼行燈85「虚ろな瞳」 2024.05.15
- 昼行燈82「猫、春の憂鬱を歩く」 2024.04.09
- 昼行灯77「影の女へ」 2024.03.06
- 昼行燈75「首を振って悪夢を振り切る」 2024.03.01
- 昼行燈74「負け犬の遠吠え」 2024.02.27
- 昼行燈73「化粧」 2024.02.25
- 昼行燈71「戻る場所はいつも…」 2024.02.19
- 昼行燈68「喧騒のあとで」 2024.02.12
- 昼行燈67「真冬の月と物質的恍惚と」 2024.02.11
- 昼行燈66「鬼哭啾愀」 2024.02.07
- 昼行燈64「架空凝視という病」 2024.01.24
- 昼行燈62「酔 漢 賦(花名篇)」 2024.01.22
- 昼行燈60「酔 漢 賦(河川名篇)」 2024.01.15
- 昼行燈58「日蔭ノナクナツタ広島ノ上空ヲトビガ舞ツテヰル」 2024.01.09
- 昼行燈57「ドキュメント 脱糞だ!」 2024.01.05
- 昼行燈56「蝋燭の焔に浮かぶもの」 2024.01.05
- 昼行燈55「酔 漢 賦(鳥名篇)」 2024.01.04
- 昼行燈53「わら、わら、わらーに落ちそう ♪」 2024.01.01
- 昼行燈52「酔 漢 賦(県名篇)」 2023.12.31
- 昼行燈50「刀葉林の夢」 2023.12.27
- 昼行燈49「雪蛍の舞った頃」 2023.12.18
- 昼行燈48「真冬の明け初めの小さな旅」 2023.12.18
- 昼行燈(番外3「葬送のこと」) 2023.12.12
- 昼行燈46「土の精」 2023.12.08
- 昼行燈45「浮かび上がらせてやりたい」 2023.12.07
- 昼行燈43「お地蔵さんは黙っている」 2023.12.03
- 昼行燈(番外2「音という奇跡」) 2023.11.29
- 昼行燈41「 ダストシュート」 2023.11.27
- 昼行燈39「 廃墟」 2023.11.22
- 昼行燈37「ドリッピング」 2023.11.19
- 昼行燈35「バスキア!」 2023.11.16
- 昼行燈34「オワンクラゲ」 2023.11.14
- 昼行燈33「沈黙の宇宙に鳴る音楽」 2023.11.13
- 昼行燈31「誕生日に寄せて」 2023.11.09
- 昼行燈29「沈黙の宇宙に鳴る音」 2023.11.05
- 昼行燈27「黒い雨の降る夜」 2023.11.02
- 昼行燈26「森の雨音」 2023.11.01
- 昼行燈25「点々は 宇宙を攪拌しないのです」 2023.10.31
- 昼行燈24「古タイヤの列」 2023.10.27
- 昼行燈23「石ころ」 2023.10.26
- 昼行燈21「青い雫」 2023.10.24
- 昼行燈19「鳥の餌」 2023.10.23
- 昼行燈18 「海の響きも聞こえない」 2023.10.20
- 昼行燈(番外) 2023.10.19
- 昼行燈17「ピエロは嗤う」 2023.10.19
- 昼行燈15 2023.10.16
- 昼行燈14 2023.10.13
- 昼行燈13 2023.10.12
- 昼行燈9 2023.10.05
- 昼行燈8 2023.10.04
- 昼行燈7 2023.09.29
- 昼行燈5 2023.09.23
- あの日から始まっていた (39 独りきりの祝祭) 2022.03.11
- あの日から始まっていた (38 孤独な配達人の独り言) 2022.02.25
- あの日から始まっていた (37 南天の実に血の雫かと訊ねけり) 2022.02.21
- あの日から始まっていた (36 「祈り」を巡って) 2022.01.29
- あの日から始まっていた (35 葬送のこと) 2022.01.21
- あの日から始まっていた (34 海辺の戯れ) 2022.01.21
- あの日から始まっていた (30 美は醜の滾りより) 2021.11.26
- あの日から始まっていた (29 シラミの部屋) 2021.11.17
- あの日から始まっていた (28 ディープブルー) 2021.11.07
- あの日から始まっていた (26 古ぼけた障子紙) 2021.11.05
- あの日から始まっていた (25 伽藍堂) 2021.10.31
- あの日から始まっていた (24 音という奇跡) 2021.10.26
- あの日から始まっていた (21 孤独ではなく孤立) 2021.10.15
- あの日から始まっていた (20 バスキア!) 2021.10.14
- あの日から始まっていた (18 ベルメール!) 2021.10.11
- あの日から始まっていた (17 夢を憶する) 2021.10.09
- あの日から始まっていた (16 麻酔は未だ効いてない) 2021.10.06
- あの日から始まっていた (15 窒息した美) 2021.09.30
- あの日から始まっていた (14 土中の恩寵) 2021.09.29
- あの日から始まっていた (13 夢は嘘をつかない) 2021.09.27
- あの日から始まっていた (12 匂いを嗅ぐ) 2021.09.22
- あの日から始まっていた (11 赤いシーラカンス) 2021.09.16
- あの日から始まっていた (7 雪の朝の冒険) 2021.09.08
- コウモリの夏 2020.05.18
- ささやかなエピソード 2020.04.02
- 私は偏在する塵 2020.03.06
- スキー靴の思い出 2020.01.21
- ジェネシス 8 ゼンマという奈落 2019.01.29
- 美は醜の滾りより 2018.01.28
- 百鬼夜行:クラクションが発端でした事件 2017.10.13
- 作家名を語呂合わせする 2017.01.07
- 酉年の年初から酔ってます 2017.01.05
- 名句に駄洒落で絡んでみました! 2017.01.01
- 私は歩く人 2015.01.12
- 赤い風船 2014.11.30
- ハイスイコウ 2013.02.24
- 真冬の満月と霄壤の差と 2013.01.18
- クラゲなす漂へる… 2012.01.24
- あの月影は夢か幻か 2012.01.04
- 天使の分け前 2011.11.21
- 祈りの果てにあるものは… 2011.10.10
- オレは蛇 2011.09.22
- 初秋の月影を追う 2011.09.17
- 月影に寄せて 2011.06.12
- 涙の夜 2011.06.11
- ピンク色の傘 2011.05.29
- 「安室奈美恵」さんに絡んでみました!(前篇) 2011.05.21
- 「安室奈美恵」さんに絡んでみました!(番外篇) 2011.05.21
- 蒼白の刃 2011.05.06
- 断言の世界 2011.04.18
- 祈りの果てにあるものは 2011.04.10
- 祈りについて 2011.04.08
- 私はゴムに 私はコンクリートに 2011.03.22
- 火車の頃 2011.03.10
- 蝋燭の焔に浮かぶもの 2011.02.13
- 藍色の闇の海の白き花びら 2011.02.06
- 叡智の芽吹き 2011.01.29
- 「月」というと秋 2011.01.02
- バタイユという名の祝祭 2010.12.28
- 沈黙の音に聞き入る 2010.12.20
- 音が奇跡だった頃 2010.12.16
- 月影や雲の波間に溺れしか 2010.12.14
- 里山…冬の蝶 2010.12.13
- 冬の蝶 2010.11.22
- 雨に負けた 2010.11.13
- 私が<それ>になる夜 2010.10.18
- 沈丁花 2010.10.15
- 雨音はショパンの 2010.10.01
- 青い空と白い雲 2010.09.14
- 夜の果ての天の光 2010.09.12
- 点々は 宇宙を攪拌しないのです 2010.05.27
- 古ぼけた障子紙 2010.05.23
- 合鴨の和みの時に和みけり 2010.05.19
- 花の宴 2010.04.14
- 窓の隙間から 2010.03.16
- 夢、それとも記…憶の世界 2010.01.31
- 真夏の夜の夢の旅 2010.01.05
- クリスマス小風景 2009.12.16
- 我がタクシードライバー時代の事件簿(番外編:夜間飛行) 2009.12.13
- 母と息子の「カラス なぜなくの」談義 2009.10.18
- カラスのことあれこれ 2009.10.13
- ディープブルー 2009.09.23
- 秋茄子と言えば 2009.09.09
- 帰京ドタバタツーリング 2009.09.08
- 頬杖 2009.07.30
- 梅雨空に寄せて 2009.07.18
- バタイユへ寄せるオマージュあるいは懺悔 2009.07.07
- 猫、春の憂鬱を歩く 2009.04.09
- 日記抄 2009.03.23
- 金色の庵 2009.03.12
- ドキュメント 脱糞だ! 2009.03.10
- 雪の朝(断片) 2009.03.09
- 影遊び…断片3 2009.03.07
- ボクの猫 2009.03.05
- 幽霊考…幽霊は素っ裸たるべし! 2009.03.02
- <私>の生まれた日 2009.02.15
- 沈黙の宇宙に響く音 2009.02.14
- 雨上がりの夢想 2009.02.13
- 足掻き… 2009.02.12
- 球体鏡の中の美 2009.01.06
- 初夢 2009.01.04
- 冬のスズメ 2008.12.30
- 粉塵の夢 2008.12.21
- デルヴォー……氷の中の恍惚 2008.12.14
- ムスカリの花 2008.11.27
- 青い雫 2008.11.21
- 水辺へ 2008.10.20
- 葉桜の散り残っての落ち零れ 2008.10.03
- 伊香保へいかほ 2008.10.01
- 木枯しも終わりよければ全てよし 2008.09.26
- 架空凝視という病 2008.08.11
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- マラソンの思い出…恋 2008.07.22
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- 雪蛍の舞った頃 2008.01.25
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